神戸大学新聞

神戸大学混声合唱団アポロン

ジョイントコンサート開催

2024年7月11日

    7 月 7 日に、フェニーチェ堺の大ホールで、 「Joint Concert 2024」が淀川混声合唱団、神戸大学混声合唱団アポロン、大阪大学混声合唱団の 3 団体によって開催された。多くの観客がこのコンサートに足を運んだ。 

    「1st Stage」 は、 われらが神戸大のアポロンによる単独ステージだ。 まず、『Five flower songs』より「1、To Daffodils」と「 2、The Succession of the Four Sweet Months」が歌われた。 1 曲目は、英語の歌詞を力強く歌い上げ、その後、 教会音楽のような荘厳さをもった音色を響かせる。 2 曲目は、 4 つのパートが「それぞれ全く違う歌詞、違うメロディ、違うリズムで歌い続ける」 (パンフレットより)という構成になっている。アポロンの団員たちによって、4 つのパートの絶妙なバラ ンスが保たれながら、とりわけソプラノのメロディが美しく際立つ。団員たちが曲に真摯に向き合い、美しいハーモニーを聴衆に届けようと練習に励んできた姿が目に浮かぶようであった。 

    3 曲目は、哲学者・西田幾多郎の短歌が歌詞になった『七里浜』という曲だ。夕日と山の風景を描いた歌詞が合唱によってより美しく表現され、歌い終わると寂 寥感を感じさせる余韻が残る。4 曲目に歌われたのが、無伴奏混声合唱のための 『二つの「理由」』より「生きる理由」だ。女性のソロパートで始まり、優しく包み込むような歌声だ。続いて、全体で合唱し、生きる意志を強くするようにだん だん歌声が大きくなる。 

    続く「2nd Stage」は、大阪大学混声合唱団の合唱で、ピアノの演奏が加わる。歌われた3曲のうち2 曲は、海を題材にしたものだ。『海のはじまり』では、何かが生まれるような予感のするピアノ伴奏からはじまり、左右に分かれた女性と男性が力強い歌声を響かせる。女声と男声の混じりあう交点にピアノの音が流れ込 み、悲しみや喜びといった人間の感情の起伏を海にたとえた歌詞がダイナミックに表現されていく。 

    「3rd Stage」では、10 代から 70 代までの幅広い団員が所属する淀川混声合唱団による合唱だ。5 曲目に歌われた『Tantum ergo』は、神への祈りを捧げる曲である。60 名ほどの団員によって、荘厳な歌が紡がれ、締めくくりの「アーメン」 という言葉がハーモニーによって増幅され、まるでパイプオルガンのような音圧を響かせた。圧倒的な合唱だった。 

    そして最後の「4th Stage」は、3団体合同ステージで、3群の混声合唱体とピ アノのための『ぼく』が披露された。総勢100人以上が3つの「群」にわかれて歌い、これにピアニストの萩原吉樹先生とパーカッションの樽井美咲先生の演奏 が加わる。「ぼくはうまれた」から始まる「ぼく」の一生を描いた歌詞が早口で詩を朗読するかのような歌声によって紡がれるとともに、これに不思議な音色をだすピアノとさらには木魚を素早く連打するような音をだすパーカッションが加わ る。「ぼく」が他者や自然とかかわる様を描いた歌詞が壮大な規模で紡がれ、私たち聴衆を人生や命とは何かを考える哲学の世界へといざなう曲だ。 

    曲が終わると万雷の拍手がわきおこる。マイクをとった指揮者の伊藤恵司先生は、「コロナ下があけて、ステージに立てる人数が増え、幻の名曲『ぼく』を歌うことができた。多世代で歌うことの喜びと意義を感じる」と語った。そして、観客の拍手に応えて、七夕の日に開催されるこのコンサートのために編曲された『七夕の一番星』が合唱された。『七夕様』と『一番星見つけた』をアレンジした曲だという。聴き馴染みのある曲が純粋さと美しさを最大限引き出した歌声によって表現され、聴衆を感動させた。 

    どの合唱団もそれぞれ違った個性があり、それらを活かす素晴らしいパフォーマンスを届けてくれ、聴衆を楽しませた。しかも、すばらしい歌声はもちろんのこと、詩にこめられたメッセージをしっかりと届けることを意識した合唱であった。記者は、団員たちがコロナウィルスの蔓延などなんらかの困難に直面しもがきながらも、歌うことによって自らの気持ちに向きあい、生きることの意味を問うかのように歌っていると感じた。生きていくことの大変さやその喜びをかみしめ、合唱の奥深さを気づかせてくれるコンサートだった。アポロンや関西の合唱団の今後の活躍に注目し、期待したい。 

神戸大混声合唱2団体

チャリティーコンサート開催

2024年7月7日

    能登半島を震源とする大地震の発生からちょうど半年の 7 月 1 日と翌日の 2 日 に、 六甲道南公園において、 「神戸大学混声合唱団チャリティーコンサート ~能 登半島地震被災地にエールを~」が開催された(主催・出演は、アポロン、エル デの 2 団体) 。 冒頭のあいさつにたったアポロンの部長・志賀さん (法・ 4 年) は、 「被災を経験した地にある大学の合唱団として何かできることはないのかと考え、 チャリティーコンサートを開催した」 と、 被災地への思いを語った。 学生や市民、 子供たちが次々に集まるなか、コンサートが幕を開けた。 

   まず、アポロンの部員たちによる合唱だ。1 曲目に歌われた『鷗』では、 「つい に自由は彼らのものだ」という歌詞がまるで祈りを捧げるような歌声によって紡 がれる。能登半島の被災者たちが苦悩や悲しみを感じながらも懸命に生き抜こう とする姿が目に浮かんでくるような合唱だった。3 曲目は、明るくリズミカルな 曲だ。英語の歌詞がパワフルに歌われ、ソロパートを歌う団員は、気持ちよさそ うに美声を響かせる。 

    続いて、エルデが 2 曲の合唱を披露した。 『夢みたものは…』を一体感のある歌 声で厳かに歌いあげた。そうかと思うと、 2 曲目は、手拍子にのって、のりのある 曲を歌いあげる。 「一緒に来るかい」 などの前向きなセリフを発するような歌声に、 被災者を元気づけようというエルデの団員の思いがひしひしと伝わってくる。 

    そして最後に、 アポロンとエルデの合同で、 2 曲が歌われ、 コンサートを締めく くった。そのうちの 1 曲である『しあわせ運べるように』は、阪神淡路大震災を 機につくられた曲だという。被災の悲しみと復興への思いをストレートに表現し た歌詞が厚みのあるハーモニーによって歌われる。神戸の地から能登半島に思い をはせるという特別な意味をかみしめるような合唱だ。 

    コンサートが終わると、大きな拍手がおこり、聴衆は次々に寄付をしていた。 コンサート後に、アポロンの志賀さんは、 「地域の方々から温かい気持ち、寄付を いただいた。ありがたいことです」と、観客への感謝の気持ちを語った。エルデ の正指揮者・伊藤さん(文・4 年)は、 「団員の中にも被災した人がいた。痛まし い気持ちになった。みなさんもぜひ思いをはせて欲しい」と、チャリティーコン サートの意義を語った。集まった寄付は全額被災地に送られる。 

    混声合唱 2 団体によるすばらしい合唱によって、聴衆はみな被災地に思いをは せた。彼らの歌声は、必ずや能登半島の被災者に届いていることだろう。 

神戸大学演劇研究会「はちの巣座」2023年度冬公演

サスペンスな展開のなかでくりひろげられる人間ドラマが観客を魅了 

                                           2024年1月25日

    1月21日(日)、神戸大学鶴甲第一キャンパスのシアターD300にて、はちの巣座による冬公演「ナオミとカナコ」が上演された。「はちの巣座がしばらくやってこなかったサスペンスな作風の舞台」(はちの巣座「X」のポストより)という言葉どおり、冒頭から波瀾の展開を予感させるヒリヒリとした空気に会場は包まれた。

    今回の作品「ナオミとカナコ」は、作家の奥田英朗による小説が原作。はちの巣座の公演では、小説で描かれた登場人物たちの複雑な心理描写や場面ごとに異なる独特な緊張感が舞台上で豊かに表現された。

    物語は、主人公の一人である小田直美が、もう一人の主人公である服部加奈子のマンションを訪問するシーンから始まった。二人は大学時代からの親友で、半年ぶりの再会を互いに喜びあう。加奈子はエリート銀行マンである服部達郎と結婚し、傍からみれば何不自由なく幸せな家庭を築いているようにしか見えない。「素敵なマンションに住んで、やさしい旦那さんで、良かったね」と加奈子を祝福する直美。「ありがとう」と返す加奈子。だが、その表情はなぜか冴えない。不自然な点はこれだけではなかった。ある拍子に直美が加奈子の肩に触れた瞬間、加奈子は激痛が走ったように顔を歪める。直美が驚いて、肩を痛めた原因を尋ねるが、加奈子は「ちょっと転んで怪我しただけ」と顔を引きつらせながら微笑むのみで、多くを語ろうとしない。親友の言葉を信じつつも、心配せずにはいられない直美。そして別の日、再び加奈子のマンションを訪れた直美は、出迎えた加奈子の姿を見て、彼女の身にただならぬことが起こっていると直観する。それでもなお「大丈夫、なんでもないから」と誤魔化そうとする加奈子だったが、親友を心から心配し、必死に食い下がる直美に心を揺さぶられ、ついに秘密を打ち明ける。加奈子の口から語られる真実に衝撃をうける直美。逃れられない苦しみと恐怖に襲われ、追いつめられていく加奈子を目の当たりにした直美は、親友を深く抱きしめながら、こう口にする。「いっそ二人で殺そうか、あんたの旦那」……。親友を救うため、自分の人生をきりひらくため、共謀して殺人を企てるという展開に、犯人側と犯人を追いつめる側との攻防を楽しむ一般的なサスペンスとは一味違って、知らずしらずのうちに直美と加奈子に感情移入してしまう不思議な感覚にとらわれた。
    「完全犯罪」を計画し・実行したはずの二人だったが、次第にほころびがあらわとなり、窮地に追いつめられる。彼女たちは逃げきれるのか……「共犯者」となった直美と加奈子が最後どうなったのか、劇中のラストシーンで明示はされなかった。それがまた観客の想像力をかきたて、強烈なインパクトを残した。なにより、ラストにいたるプロセスにおいて展開された、主人公の二人と彼女らをとりまく登場人物たちがくりひろげる複雑な人間ドラマが、私たち観客を釘付けにした。私がとりわけ印象に残った登場人物は、中国人の社長・李朱美だ。彼女の歯に衣着せぬ物言いと主人公の二人に見せる人情味あふれる態度は、場の空気を一瞬で変えてしまう力をもっており、そのパワフルさにおもわず笑みがこぼれてしまうほどだった。最初から最後まで、とてもおもしろい公演だった。
    これだけの大作を約100分の演劇で表現するために、相当な工夫と努力がなされたに違いない。上演(12:00開演の部)終了直後に、はちの巣座のみなさんに少しだけお話をうかがったが、主人公の加奈子役を演じ、さらに衣装メイク・小道具・舞台美術も手がけたゆかいのきさんは、登場人物の感情表現もさることながら、場面展開と小道具を使っての表現にも苦労したと語ってくれた。また、加奈子の夫・服部達郎役と、彼と瓜二つの顔を持つ中国人・林竜輝役の一人二役を担った内輝さんは、クセの強い役柄を演じ分けるのが大変だったと語ってくれた。さらに当日配布されたチラシには、小道具、舞台美術、照明、音響、演出等々に携わったスタッフの方々の、公演に向けて力を入れた点や意気込みなどが紹介されていた。あらためて、役者のみなさんの迫真の演技と、それを最大限に活かすために尽力されたスタッフのみなさんの力が一つに合わさることで、今回のすばらしい公演が実現されたのだと感じた。

    一つの舞台の上でさまざまな場面を展開し、私たち観客を楽しませてくれるはちの巣座の公演。次回作ではどんな展開がくりひろげられるのか、今から楽しみである。

第44回六甲祭 

完全復活した姿で

盛大に開催 

                                            2023年12月5日

    1月11、12日の2日間にわたって、第44回六甲祭が開催された。今年の六甲祭は、昨年まで新型コロナ感染症対策として設けられていた制約が撤廃され、来場者、飲食ともに制限なしの完全復活した姿で開催された。会場となった六甲台キャンパスは、近隣住民だけでなく関西一円および全国各地から訪れた多くの人々でにぎわい、2日間で1万5530人が来場した。

 

    今年の六甲祭のテーマは「ABEKOBEKOBE〜あべこべこうべ〜」。六甲祭実行委員会の岸委員長によると、このテーマには、「コロナ禍によって設けられた制限というものをマイナス(-)としてとらえ、そのすべての制限を撤廃し、六甲祭を完全復活させ、2019年以前の六甲祭を取り戻すということをプラス(+)として捉え、このマイナス(-)がプラス(+)にひっくり返るという思いが込められている」という(六甲祭パンフレットより)。この言葉どおり、今年は様々な企画が用意され、出展団体も来場者も一体となって〝制限なし〞の完全復活した六甲祭を存分に楽しんでいた。

    六甲台講堂において開催された講演会(11日)では、「〜神戸から羽ばたいた女優の歩み〜」というタイトルのもと、神戸生まれで女優・タレントとして幅広く活躍している平祐奈さんが講演をおこなった。講演会当日の講堂前には、平さんの講演を聞くために多くの人が整理券を求めて列をつくっていた。

    同じく六甲台講堂において開催されたのが、神大初のボディビル披露会「ウリボディ」(12日)だ。神戸大学の約10組の学生が、日頃鍛えた自慢の筋肉を披露。通常のボディビル大会とは異なり、審査及び順位付けはなく、参加者とのトークコーナーを設けるなど楽しい大会にすることを目的にして開催された。

    グラウンドのメインステージでは、新企画として「神大グランプリ」が開催された。各部活やサークル対抗でトーナメントを戦い、神大No.1の団体を決める大会で、参加15団体で予選を行い、勝ち残ったチームが決勝トーナメントに進出。大会には体育会系、文化系、学術系を問わず様々な団体が参加し、優勝賞金3万円をかけて「体内時計チャレンジ」や「イントロクイズ」など白熱した戦いをくりひろげた。

    グラウンドメインステージ企画の締めくくりとして開催されたのが、毎年好評のよしもと芸人を呼んでのお笑いライブだ。今年は「からし蓮根」「黒帯」「フースーヤ」の3組とR―1グランプリ2023王者の田津原理音さん、そしてスペシャルMCとして「麒麟」の田村さんが来校し、会場は観客たちの笑い声に包まれた。

    園遊会ステージでは、コピーダンスサークル「Etoile」や書道研究会によるパフォーマンス、音楽系サークルによる生演奏、さらに応援団総部のゲーム企画などが開催され、来場者の拍手と歓声が湧き起こった。

    学舎内でも、「人間輪投げ」や「気配切り」などが楽しめる「人間縁日」や、全くそっくりな2つの部屋から色や形が異なっている物を探し出す「リアル間違い探し」など、来場者を楽しませるユニークな企画が開催された。

    この他、4年ぶりにフリーマーケットも開催され、アクセサリー、文具、古着などを買い求める来場者でにぎわった。

    完全復活した六甲祭を特に象徴していたのが、多くの部活・サークルによる模擬店の出店だ。キャンパスのいたるところで「○○いかがですかー」という呼び込みの声が響きわたり、模擬店で買った食べ物をおいしそうにほおばる来場者の姿があちこちで見られた。模擬店にはいくつもの行列が見られたが、とりわけ目を引いたのが、バングラディシュからの留学生たちが出店していたタンドリーケバブの店だ。店の前には絶えることなく長い行列ができていた。キャンパスにはときおり冷たい風が吹きつけ、寒かったこともあり、熱々でスパイスの効いた食べ物を多くの人が買い求めたのかもしれない。かく言う記者も、カレー風味の匂いにつられて、一つ注文した。袋状の生地のなかに詰め込まれた千切りキャベツとタンドリーチキンをほおばると、チキンのうま辛い味とキャベツのシャキシャキとした食感が口の中で絶妙なバランスで交じり合い、とてもおいしかった。

4年ごしの思い結実

    関西最大規模の学園祭である六甲祭が完全な姿で復活し、成功をおさめたことは、とても喜ばしいかぎりだ。だがここまでの道のりは、平坦ではなかった。

    六甲祭は、ここ数年間に渡り新型コロナウイルス感染拡大による影響を受け、2020年は開催不可、2021年はオンライン開催を余儀なくされた。昨2022年は対面開催こそできたものの、神戸大の学生・教職員とその関係者および近隣の中高生のみに来場が制限され、飲食も不可という非常に制限のあるなかでの開催となってしまった。当時六甲祭実行委員会の委員長を担った方々は、かつて当会の取材にたいして、思うように六甲祭を実現できなかった無念や悔しさを語っていた。そして、〝後輩たちには、ぜひ完全対面開催での六甲祭を体験してほしい〞という願いをうちあけてくれた。

    そのようななかで迎えた本2023年。先輩たちの思いも背負いながら、六甲祭実行委員会のスタッフが、「財政難」という問題をも克服しながら完全復活した六甲祭の実現のために奮闘してくれたことには、感謝と敬意を表したい。

 

関西6大学の混声合唱団が結集した大演奏会 

関西学生混声合唱連盟第54回定期演奏会 

                                           2023年6月7日

     5月28日に、ロームシアター京都のメインホールにて、神戸大学混声合唱団アポロンが参加する『関西学生混声合唱連盟 第54回定期演奏会』が開催された。アポロンによると、出演者総数は150人以上、来場者は375名。 

    演奏会の第一部は、アポロンのほかに、関西大学、大阪大学、立命館大学、同志社大学、関西学院大学の計6大学の混声合唱団がそれぞれ歌声を披露した。6団体が次々とステージに立つこの演奏会は、豪華だというほかなかった。そしてそれぞれの曲が、新型コロナウイルス感染拡大の下で制限された活動を続けてきた合唱サークルの人たちの今の思いが込められていたと感じた。 

    最初にステージに立ったのは「関西大学混声合唱団ひびき」で、演奏されたのは三好達治作詞、木下牧子作曲の「鷗(かもめ)」。かもめの雄大で何ものにもとらわれない生き方をうたい、「つひに自由は彼らのものだ」という詞がリフレインされ、かもめが空に舞い上がるように、歌声も飛翔していった。 

    2番目に演奏を披露したのはわが神戸大学の混声合唱団アポロンだ。作詞:室生犀星、作曲:北川昇「無伴奏混声合唱曲『よき友とともに』」より3曲が披露された。心を磨き高めることを自らに課し、それに誇らしく歌う詞を堂々と歌いあげた1曲目の「心」。孤独のなか、「かならず笛のねいろを聞くものあらんと」笛を鳴らすも、「わが笛はそらにきえ ちぢまりゆくのみ」という歌詞に隠し切れない寂しさを感じる2曲目の「笛」。「君」に対してあふれてくる感動を清らかで艶やかな言葉で表した3曲目の「夜の霜」。室生犀星の格調高く美しい詞に、アポロンの歌声によって命が吹き込まれていた。それぞれの曲に感じた「誇り」「寂しさ」「感動」は、コロナ下で演奏会など行えないなか、必ず歌声が誰かに届くと信じながら練習を続けてきた団員たちの思いだったのかもしれない。 

    3番目に「大阪大学混声合唱団」が、「混声合唱組曲『沈黙のありか』(作詞:牟礼慶子 作曲:森山至貴)」より、2曲が演奏された。「日々のくらさを 土の中のくらさに 似せてはいけないでしょうか」「くらい土の中では やがて来る華麗な祝祭のために 数かぎりないものたちが 生きているのです」といった、自然への意表を突くまなざしから紡がれたストレートなことばを、団員たちが情感たっぷりに歌い、心が揺さぶられた。 

    続いて「立命館大学混声合唱団メディックス」が、「混声合唱のための『おらしょ』カクレキリシタン3つの歌」より「第2楽章」(千原英喜作曲)と、「Bridge over troubled water」(Paul Simon作詞作曲 Kilby Shaw編曲)の二曲を演奏。キリストへの祈りを仏教の経典を読誦するように唱える不思議な調べから、突如力強くイエスの受難と復活が歌われた1曲目の『おらしょ』からは、苛烈な弾圧の下でもキリストの教えをつないできた「カクレキリシタン」のたくましい生きざまが伝わってきた。「カクレキリシタン」の姿と、コロナ下の規制で苦しみながらも、この日の演奏会を実現した関西6大学の合唱団員たちとを重ね合わせずにはいられなかった。 

    5番目に演奏を披露したのは「同志社学生混声合唱団C.C.D.」。曲目は「『Missa』混声合唱とピアノのために」(周藤諭作曲)より「Kyrie」と「Gloria」だ。曲名の通り、荘厳なミサ曲が澄み切った歌声で奏でられ、純粋な祈りの曲に観客も耳を傾けた。 

    演奏会第一部の最後は「関西学院大学混声合唱団エゴラド」による「混声合唱とピアノのための『良寛相聞』(作詞:良寛/貞心尼 作曲:千原英喜)より「相聞Ⅰ/パストラーレ」と「手まり」の2曲。寒さがゆるみ、春が訪れ、冬ごもりをしていた庵を出て、子どもたちと遊ぶという詞を、生命力あふれる歌声で歌い、春の訪れの喜びを全力で表現していた。 

    演奏会の第二部は、6大学の混声合唱団による合同ステージだ。客演指揮に上西一郎先生を、客演ピアノに織田祥代先生を迎えて、Brucknerの「Os justi」とBrahmsの「Nänie(哀悼の歌)」が演奏された。150人以上もの団員たちの迫力ある歌声に圧倒された。指揮者の上西先生は、パンフレットで、「哀悼の歌」の中で「美しいものや完全なるものが死なねばならない運命の嘆きを歌っていますが、曲調はまるで賛歌のような明るさを持っています。これはブラームスが、生きることへの不安や疲れに対し甘美な癒しを聴くものに与えようとしたのだと言われています」と解説されている。揺るがしがたい運命をじっと見つめ返すような、堂々とした演奏だった。 

    会場の満場の拍手に応えて、演奏会の最後に信長貴富作曲「くちびるに歌を」が6団体の団員全員によって贈られた。ドイツ語と日本語の歌詞が交互にうたわれ、「くちびるに歌をもて 心に太陽を持て そして言葉をもて」と希望溢れる歌声が会場全体に響き渡った。関西の混声合唱団が一堂に集まるステージの最高に心震えるひと時だった。 

おとぎ話の世界へひきこまれるステージ

ESSドラマセクション 春公演開催 

                                                                                              2023年6月3日

     5 月 19 日と 20 日、ESSドラマセクションによる春公演が神戸大学鶴甲第一キャンパスD300シアタ ーで開催された。人数制限も緩和され、多くの観客がつめかけた今回の公演は、役者たちの熱演と、ダイナ ミックなダンスによって、大いに盛り上がる舞台だった。
    公演のタイトルは「DESCENDANTS」。大ヒットした同名のディズニー映画を原作にして、アレンジさ れた公演だ。この公演の登場人物は、「美女と野獣」、「眠れる森の美女」、「アラジン」などなど、だれもが 聞いたことがあるだろうディズニー映画のキャラクターたちと、その子どもたちである。
    マレフィセント(『眠れる森の美女』の悪役)の娘マルら、4 人のヴィランズ(悪役)の子どもたちは、ヴ ィランズが幽閉された島、ロスト島で悪役らしく気ままに生きてきた。そんな彼女らが、オラドン王国の高 校に転校する機会を与えられたことから、物語は始まる。オラドン王国は『美女と野獣』の主役、ビースト が王として、王妃のベルとともに治める王国で、ロスト島とは対極にある“正義の象徴”である。マルたち は親たちからオラドン王国を乗っ取る使命を与えられ、そのために必要な“魔法の杖”を奪い取る計画を進 めていく。しかし 4 人の転校生たちは、ベン王子たちクラスメートと交流するなかで、恋をし、友情をはぐ くみ、大切なものを見つけていく…。転校生たちの繊細な心の動きが、迫真の演技と感情のこもった英語の セリフ、そしてダンスによって表現され、見ている私も登場するキャラクターたちがどんどん好きになって いった。
    ストーリーの中心となるのが、本作のヒロインであるマルとベンの恋である。ベン王子の戴冠式が“魔法 の杖”を奪う絶好のチャンスだと知ったマルは、ベンの恋人として戴冠式に出席する作戦を立てる。マルは ベンに惚れ薬入りクッキーを食べさせて虜にしてしまうのだが、ベンと付き合い、デートをするうちに、マ ルはベンに惹かれてしまう。マルをエスコートするベンの紳士的な振る舞いや、通り雨にうたれたマルのも とにいち早く駆けつけて、マルを雨から守るベンの姿はマルが好きになってしまうのも納得のカッコよさ で、ベン役の「ほんちゃん」の熱演が輝いていた。「好き」という初めての感情に戸惑い、オラドン王国を 奪い取るという使命との間で苦しむマル。彼女は惚れ薬の効果を打ち消すクッキーをつくる。「オラドン王 国がめちゃくちゃにされても私を好きなままなんて、残酷だわ」と語りながらクッキーをつくるマルは、悪 役らしく振舞おうとしながらも、非情になり切れないのである。戴冠式の当日、マルは惚れ薬の効果を打ち 消すクッキーをベンに渡す。だがベンはそこで、マルの知らなかった事実を打ち明ける。実は惚れ薬の効果 はデートの日、雨に打たれたときにきれいさっぱり消えてしまっていたのだった。惚れ薬の効果が切れた後 も、ベンはマルを大切な人として思っていたのだ。ベンの本物の気持ちを知ったマルは、最後は悪役として 生きる運命を拒み、オラドン王国を守るために親であるヴィランズ達と対決する道を選ぶのである。
    悩み苦しみながら、自分の生き方を選択するマルの支えになったのは、恋心だけではなかった。マルとと もにロスト島から転校してきた、イーヴィルクイーン(『白雪姫』の悪役)の娘、イヴィとの友情がマルの 背中を強く押したに違いない。歌にのせて「どんな道を選んでも、私はあなたの味方よ」と正面から気持ち をぶつけるイヴィに、マルはどれほどの勇気をもらっただろう。筆者の心打たれたシーンである。
    このように、ヒロインのマルを中心にストーリーは展開するが、彼女とともに転校してきた、クルエラ (『101 匹わんちゃん』の悪役、この舞台では男性)の息子カルロスと、ジャファー(『アラジン』の悪役) の息子ジェイも魅力たっぷりである。恋愛には少し不器用なカルロスと、好きな人に注目してもらうために、 シンデレラのようにきれいに変身する魔法を求めるジェーン(シンデレラを素敵なプリンセスに変身させ た魔法使い、フェアリーゴッドマザーの娘)との恋の行方や、自慢の身体能力を生かしたジェイのラグビー での活躍など、見所あるシーンは挙げきることができない。
    劇中で披露される歌とダンスは、キレのある振り付けや、息のあった一体感のある動きで、ロスト島の悪 意に満ちた雰囲気や、オラドン王国のランチパーティーの楽しげな様子などが伝わってきて、舞台の上で繰 り広げられる世界に溶け込めた。最後の最後まで楽しめる、すばらしい公演だった。
    マルを演じた「あんこ」こと辻野さんは、新型コロナウイルスの感染拡大を理由とした規制が大きく緩和 されたことに伴い、以前より多くの観客に公演を見てもらえたことについて、「去年の公演では、来場希望 者が定員を超えて、予約キャンセル待ちをお願いしなければならず、心苦しかった。今回はみなさんに公演 を見てもらえてうれしいです」と笑顔で語ってくれた。記者からすばらしい公演を実現できた秘訣について 質問すると、辻野さんは「ESSドラマセクションは、友達同士で教え合うフレンドリーな空気の中で練習 してきました。部員同士が切磋琢磨して、より良い演技を求めることができたからだと思います」と語って くれた。辻野さんもドラマセクションの最高学年として全体をまとめ、後輩へのアドバイスも行ってきたと いう。今回の公演への手ごたえも感じているようだった。
    イヴィを演じた「かほ」こと本多さんは、ESSドラマセクションのチーフとして部員をまとめてきた。 チーフとして苦労したことについて聞くと、「ドラマセクションではよりよい公演をつくるために、役者は もちろん照明、音響、字幕を担当する人も含めてみんなが意見を出し合います。ときに意見が合わないとき もある。そうしたみんなの意見をまとめるのが大変でした。ディレクターの原さんもまとめ役をしてくれて とても感謝しています」と話してくれた。そして、「個性的な仲間たちがみんなでわいわい意見を出し合い ながら公演をつくってきた過程はとても楽しかったです。こうした雰囲気もESSドラマセクションの魅 力ですね」と嬉しそうに話してくれた。
    すばらしい公演を作り上げたESSドラマセクションは、次回行われる冬公演でも、すばらしいドラマを 見せてくれることだろう。 

宝生流能楽部

関西宝連自演会で見事な舞を披露

                                                                                              2023年6月3日

    5月28日(日)、大阪・寝屋川市の香里能楽堂で、第15回関西宝生流学生能楽連盟自演会・春季大会がおこなわれた(主催は京都宝生流学生能楽連盟・阪神宝生流学生能楽連盟・島根大学宝生会)。神戸大学からは宝生流能楽部が参加し、日頃の練習の成果を存分に披露した。 

    12時30分、大会運営者のあいさつで自演会が始まった。「舞」を披露する木製の本格的な檜舞台を囲む観客席は多くの人でにぎわっている。 

    神戸大学宝生流能楽部は全体の2番手の披露で、4人がそれぞれ「仕舞」をおこなった。「仕舞」とは、能の一部をお面・装束をつけずに紋服・袴姿で舞うことだ。神大で最初に「仕舞」を披露したのは、アルゼンチンからの留学生・ブルケマキシモさん(2回生)。演目は「巻絹」(まきぎぬ)。舞台の後ろで正座姿の他の部員3人が、「謡」(うたい)と呼ばれる能の台詞を厳かに謡うのに合わせながら、紋服・袴姿のブルケマキシモさんがゆっくりと立ち上がり、舞台上をすり足で観客席の方に近づいてくる。途中で立ち止まり、右手に持っていた扇を広げると、鮮やかな金色の扇が姿を見せる。その扇をゆっくりと上下左右にふりながらその場で大きく足踏みする。力強い足音が会場に響き渡る。ブルケマキシモさんは、舞台上をゆっくりと移動しながら真剣な表情で優雅な舞を披露した。記者はその荘厳な雰囲気に一気に能の世界へとひきこまれた。 

    続いて、福田優也さん(2回生)が、源氏物語を題材にした能「玉葛」(たまかずら)を披露した。他の部員3人が後ろで横一列に正座して構えると、福田さんがよく通る声で「げに妄執の雲霧の~」と「玉葛」のハイライトの一節を謡い始め、その場の雰囲気が一気に変わる。他の3人が続きを謳う中、福田さんが舞台前方に進んでくる。赤と金色を背景に華やかな何種類もの花が描かれている扇を広げ、大きく振りながら厳かな舞を披露する。観る者をして源氏物語の世界に引き込んでいく迫真の演技だ。左に右にと移動しながら両手を広げてダイナミックに舞う姿がとても印象的だった。 

    3番手の「仕舞」は平田航大さん(3回生)の「雲雀山」(ひばりやま)だ。奈良時代の右大臣が、自分の娘の悪いうわさを信じこみ、従者に娘を殺すよう命じるが、哀れに思った従者が娘とその乳母を雲雀山に隠すという話だ。「仕舞」では、右大臣が雲雀山に鷹狩りに来たときに乳母が娘のことを語るクライマックスを平田さんが演じた。すり足で、ときにゆっくりときに素早く舞台上を移動しつつ、金色を背景に青い花が一面に描かれた扇を巧みにふる。終始厳粛な雰囲気を漂わせた舞だった。乳母が右大臣に必死に訴えかける様子が伝わってくるようだった。 

    4番手は、小林莉久さん(4回生)の「箙」(えびら)の舞だ。源平合戦で源氏方として戦った武将・梶原源太景李(かじわらのげんだかげすえ)の奮戦の様子を躍動感あふれる舞で表現した。会場全体に鳴り響く力強い小林さんの「謡」から始まり、武将がのりうつったかのような迫力ある演舞。扇を二つ使い、一つは広げて盾代わりに、一つは閉じたまま刀に見立て、平氏と戦う様を素早いすり足と飛び跳ねる動作をくりだしながら演じきった。小林さんが扇を力強く動かすと、風が記者の座っている席にまで届いてきて、ものすごい迫力だった。 

    5番手に、羽衣国際大の藪下扇玖さん(2回生)が神大宝生流能楽部陣の「謡」に合わせて仕舞「西王母」(せいおうぼ)を演じた。3000年に一度咲くと言われる桃の花を中国の周の王に渡す西王母の化身の様を、華麗な舞で表現した。すり足で舞台上を移動しながら広げた扇を自在に動かし所々でポーズを決める。とてもきらびやかな舞だった。 

    この日の大会では、他にも甲南女子大学、同志社大学、島根大学、京都大学、大阪・今宮高校も「仕舞」や「素謡」(すうたい)、「連吟」(れんぎん)を披露し、会場を大いに沸かせた。トップバッターだった同志社大学宝生会は、十数人が正座して並び演目「鶴亀」を謡う「素謡」が圧巻で、その荘厳な響きを聴いているとまるで数百年前の世界に自分がいるかのような感覚を覚えた。また、京都大学宝生会は「仕舞」を披露するメンバーのほとんどが1回生だったが、みな堂々とした舞で、大学に入ってからの短期間で練習を積み重ねてきたことが伝わってきた。 

    大会の最後に、「番外仕舞」として能楽師の先生たちが舞台に登場し、非常に迫力のある舞をそれぞれ披露した。「謡」も「舞」も威厳と風格を感じさせ、能のダイナミックさと奥深さが伝わってくる圧巻の「仕舞」だった。 

    自演後に宝生流能楽部のみなさんに感想を聞くと、「前回に比べるとスムーズに舞の型を決められたと思います」(ブルケマキシモさん)、「長い期間練習してきて、いい舞ができてよかったです」(福田さん)、「自分の中の迷いを絶って舞うことができました」(平田さん)と、とても充実した様子だった。また、「自分は武将を演じましたが、舞があらあらしいため姿勢が崩れたところが改善点です」(小林さん)と、より高い舞をめざす姿勢が印象的だった。 

    小林さんによると、この間、部員のスケジュールが合わず、全体で練習する時間がなかなかとれなかったという。しかし、それぞれが自主練習を地道に積み重ねることで、皆がそろったときには集中して練習することができたという。記者は、そうした部員たちの努力の結晶が今回のすばらしい「舞」として結実したのだと感じた。「6月には名古屋で全国発表会があるのでがんばりたいです。」小林さんたちは、次の目標に向けてさらに舞にみがきをかけていく意気込みを語ってくれた。 

    今回、記者は「仕舞」を初めて見たが、その優雅さ、ダイナミックさ、奥深さに感動した。能という新たな世界に触れてとても新鮮だった。今回の自演会の様子はYouTube上で誰でも見ることができる(youtu.be/nnPhCupBsw0、youtu.be/u36pB09M0Z8、youtu.be/lcJQ5rYxQEs)。みなさんもぜひ一度、ご覧になってはいかがだろうか。ちなみに宝生流能楽部は、新入部員も募集中だという。少しでも興味を持った方は、ぜひ彼らに連絡してほしい。 

神戸大学お笑い研究会 ライブ「Kite」開催

満員の会場が爆笑の渦に包まれる

                                                                                              2023年5月29日

    5月26日の午後6時半すぎ、阪急六甲駅からほど近い音楽ホール&ギャラリー「里夢」に学生たちが次々に入っていく。この日、神戸大学お笑い研究会によるライブ「Kite」がおこなわれた。飛び入りの観客も含めて40人が集まり、会場は満席となった。「ブーム」に沸く大学サークルによるお笑いライブの様子を取材した。 
    まず1組目のテーラードがファミレスでの客と店員のやりとりを題材にした漫才を披露した。店員が来店した客の髪型をみて、「茶パーマ入りまーす」とすまし顔でいうと、会場から笑い声がどっと沸いた。店員の奇想天外なボケと客の鋭いツッコミが次々にくりだされ、観客の“笑いのツボ”を刺激した。観客は一気にライブに没入し、会場は熱気を帯びた。 
    5組目のバリトン団は、3人組による漫才を披露した。先輩2人が男女のカップルを演じる漫才を後輩にみせるという設定だ。先輩2人がカップルの掛け合いをおかしく描くのだが、それをみている後輩がときおりつぶやくボケた一言が特別面白く、会場は爆笑に包まれた。 
    気づけば前半5組が終わり、ライブの演者たちによる大喜利が始まった。「かなりテニスみたいだけど、テニスではない架空の競技『テニッポ』について」など3つのお題が用意され、演者たちがホワイトボートに回答を示す。観客は、意表を突く回答に笑ったり、滑ったことに焦る演者の姿を楽しんだりしていた。 
    大喜利の興奮も冷めやまないうちに、6組目の佐藤によるピンコントが始まった。男女のカップル二人ともが詐欺師という設定で、彼女から500万円の超高額ネックレスを買わされそうになる彼氏を演じた。彼女が詐欺師であることに気づき、動揺を隠せずあたふたする姿が会場の笑いを誘った。 
    最後の9組目は、メロンソーダ本日だ。電話をかけると「もしもしマン」という謎の人物がでて、2人の電話のやりとりが続く。かなり奇抜なかけあいだ。安定感のある2人の演者の漫才で、このライブは締めくくられた。満員の観客を大いに楽しませる最高のライブだった。 
    ライブの終了後に、会長の竹内さんにお話を伺った。竹内さんは、「お客さんに集まってもらってありがたかった。今回のライブはこれまでと比べて、コントが少なく漫才が多くなった。楽しんでもらえたのでは」と、達成感に満ちた表情で語った。爆笑をまきおこしたライブを成功させるまでの道のりは平坦ではなかった。竹内さんによると「新しいネタを考えるのは大変」とのことで、「普段からメモをとったり、ネタを書きだしたりしている」という。生みの苦しみをのりこえて、ライブを成功させた部員たちの喜びはひとしおだろう。今後のお笑い研究会の活動に目が離せない。

ブルーグラス    春ライブ 

個性豊かなバンドが観客を魅了


                                                                    2023年5月23日

     

    5月14日、西宮のライブハウス「Flapper House」で、ブルーグラスサークルの新歓春ライブが盛大におこなわれた。会場には新入生が数多く来場し、先輩たちの躍動感あふれる演奏に聴き入った。 

    13時45分、部長の音頭でライブの開始が告げられる。アメリカのウェスタンスタイルの会場はすでに満員だ。 

    最初に演奏したバンドは、3回生3人と4回生・院生合わせて5人の「ink it」。フィドル(バイオリン)、ギター、マンドリン、ウッドベース、バンジョーの構成で、ブルーグラスの魅力を存分に味わえるテンポのよい曲を披露した。特に1曲目の「lonesome pine」はとても明るく流れるような曲で、筆者も自然と体がリズムをとっていた。また、フィドルの「和音」がネイティブ・スピーカーを彷彿とさせる発音でよく通った力強い歌声を響かせ、会場を沸かせた。2曲目の「summer sun」では難しいコード進行を5人が見事に演奏し、マンドリンのソロパートでは「松坂」が華麗な指さばきを披露した。 

    2つ目のバンド「King fisher」は、2回生の女子3人(フィドル、マンドリン、ウッドベース)と院生の「ムロさん」(ギター)で構成されたバンドだ。バンジョーを弾くメンバーがいないため、選曲はどうしてもゆっくりな曲になってしまうという。いまブルーグラスではバンジョーを弾けるメンバーが少ないため、新入生にバンジョーの重要性を知ってもらうためのバンドでもあると紹介された。もちろん、ゆっくりな曲はそれでとても味わい深く、普段のブルーグラスの曲とは趣の違う幻想的な世界に私たちをいざなってくれた。1曲目の「you’ll never be the sun」は、ウッドベースの「あめく」が美しい歌声を披露し、女子3人のハーモニーもきれいで、記者はしばし時を忘れた。フィドルのソロパートでは「るな」がこれまで練習してきた成果を披露し、会場から大きな拍手が送られた。2曲目の「Travelling Soldier」は、ゆっくりながらも流れるような「あめく」の歌声と演奏がマッチし、とても心地よかった。 

    3つ目のバンド「iris」は、2回生が中心で5人全員が女子という神大ブルーグラス唯一のガールズバンドだ。7色に光るペンライトが用意されていて、院生の「ムロさん」が曲に合わせて果敢にペンライトを振り、会場は大いに盛り上がった。とりわけ2曲目の「nine pound hammer」は、テンポのよい曲で、ウッドベースの「みほ」とバンジョーの「のぞみ」が息の合った歌声を披露するとともに、ブルーグラスの曲では珍しいウッドベースの力強いソロがおこなわれ、「みほ」の体全体を使った躍動感溢れる演奏に観客は盛大な拍手で応えた。3曲目の「風になる」は、つじあやのさんの歌をブルーグラス風にアレンジしたもので、5人の息の合った演奏にボーカル「みほ」の歌声がのり、楽しくリズミカルな世界観に会場全体が引きこまれた。 

    4バンド目は2回生4人組(フィドル、ギター、マンドリン、ウッドベース)の「Pink Stripe Dogs」。その名の通り、ピンクのお揃いのストライプシャツを着込み、4人の一体感が見た目にも伝わってくる。2曲目の「Bury me beneath the willow」は、明るくとてもテンポのよい曲で、4人の演奏がぴたりと合い、フィドルの「まお」のよく通る歌声に他のメンバーの歌声が重なってきれいなハーモニーを会場に響かせた。3曲目の「Round & round」は、ギターの「あっきー」が大好きなニール・ヤングの曲をブルーグラス風にアレンジしたオリジナル曲で、幻想的な雰囲気漂う曲を4人が見事に奏でた。 

    5バンド目は、3回生・4回生・院生5人組の「Ancient Grass」。これぞ“ザ・ブルーグラス”と呼べるようなテンポの速い曲を次々と披露した。このバンドは、ギターの「ムロさん」の提案で、マイクを一つだけにしてソロを弾く演奏者が入れ替わり立ちかわりマイクの前に移動して演奏するスタイルで、5人の一体感と合奏の楽しさが伝わってきた。2曲目の「Daybreak in Dexie」は歌詞はなく演奏のみで、マンドリンの「松坂」の圧巻の指さばきのソロから始まり、バンジョーの「ちょび」、フィドルの「スンファン」、ギターの「ムロさん」と次々と繰り広げられる疾風のようなソロに会場はおしみない拍手を送った。3曲目の「Country Road」はウッドベースの「ばたちゃん」のきれいな歌声に皆の合奏が調和し、懐かしさを感じさせる曲に皆聴き入った。 

    6つ目のバンドは、2回生2人と院生3人の5人組バンド「まほろば」。皆の前で演奏を披露するのは初めてとのことで、2回生の「まお」はとても緊張すると心境を語っていたが、演奏は堂々としたもので、観客を大いに魅了した。1曲目の「Keep on the sunny side」は、リズミカルで明るい曲で、フィドルの「まお」の透きとおった声がギターの「しゅりー」とウッドベースの「ばたちゃん」とのハーモニーでより引き立てられ、心地よかった。またマンドリンの「あっきー」とバンジョーの「ムロさん」の速弾きのソロも女性陣の歌声にアクセントを加えて、とても心が和む曲だった。4曲目の「Fire ball mail」は途中から曲調が一気に速くなるリズミカルな曲だが、5人の息がぴったり合っていてすばらしかった。 

    最後を飾るバンドは、4回生以上の5人で構成されたベテランバンド「✝Paradise Lost~不死鳥の鎮魂歌~✝」。ギターの「よってぃ」の力強い歌声と5人が織りなす速弾きの合奏に、思わず息をのんだ。2曲目の「Down the Line」は流れるような曲で聴いていてとても気持ちよく、フィドルの「わかちゃん」、マンドリンの「タニコ」と次々と続く圧巻の指さばきのソロに記者は圧倒された。フィナーレを飾る5曲目の「Steel Driving Man」は、今日のライブの中で最も速い曲で、ギターの「よってぃ」の圧倒的な歌唱力とフィドル、マンドリン、バンジョーと繰り広げられる目にもとまらぬ速弾きのソロに心奪われた。 

    今回の春ライブは、“ザ・ブルーグラス”と呼べる曲あり、スローテンポの曲あり、アレンジ曲ありと、ブルーグラスの醍醐味を存分に楽しめるライブだった。記者も時間が経つのを忘れ、しばしカントリーミュージックの世界に酔いしれた。ライブを聴きに来た新入生に感想を聞くと、「とてもよかったです。速い曲調の曲が印象に残り好きになりました」(農学部生)と先輩たちの演奏に感動した様子だった。 

    新入生を迎え、春ライブを大成功させたブルーグラス。彼らのさらなる活躍に期待したい。  

はちの巣座2023年度新歓公演 

息を呑む展開と迫真の演技で

観客の心を揺さぶる 

                                                                    2023年5月3日

    神戸大学演劇研究会はちの巣座の新歓公演「フクシュウの時!」が、4月29日(土)と30日(日)の2日間にわたってシアターD300(神大鶴甲第一キャンパス内)にて上演された。会場には神大生を中心に多くの観客がつめかけ、記者が観劇した30日13:30~の公演は満席に。舞台上でくりひろげられるコミカルな展開と緊迫の「フクシュウ」劇に、会場は笑いと張り詰めた空気、そして静かな余韻に包まれた。 

    今回上演された「フクシュウの時!」の登場人物は、「死を望む青年・タダシ」(北條康弘さん)と「女優を夢見る女性・セイコ」(居軒由佳さん)の2人のみ。この2人の会話を通して、互いの思いが交錯するかたちで話は展開していく。私は上演の出だしから、演劇の世界に引き込まれていった。真っ暗な会場から流れてくる祭の囃子を思わせる鳴り物の音、それに合わせて楽しそうに音頭をとる女性の声。次の瞬間、会場の空気を引き裂くような女性の大きな悲鳴が響きわたる。そして女性が何かに怯えるかのように地面にはいつくばり、震えた声で助けを求める姿が暗闇から浮かびあがる。一体何が起きているのか、明示はされない……様々な想像力をかきたてられ、一瞬で舞台に釘付けになるほどのインパクトだった。そこからラストにいたる展開は、さらに衝撃的であった。 

    みずからの人生に絶望し、自暴自棄となっているタダシ。彼は突如勃発した戦争を“好機”とばかりに、兵士となって、ずっと恨みつづけてきた相手への復讐を果たして死ぬことを望む。だがそんな彼のもとに、「セイコ」と名乗る狐の面を被った謎めいた女性が突如あらわれる。「戦争が終わったら女優になる」ことを夢見るセイコを冷めた眼で見つめるタダシ。彼は、セイコから演劇の“練習台”を頼まれ、彼女が作成した脚本にもとづいて無理やり役をやらされる羽目に。渋々演劇に付き合っていたタダシだったが、次第にセイコに心を許しはじめている自分を自覚し、激しく動揺する。そんなタダシを見てセイコは……。クライマックスに急転直下おとずれる怒涛の「フクシュウ」劇と、それを演じる役者2人の迫真の演技に、思わず息を呑んだ。そして、上演の冒頭で張られた伏線がなんだったのか、このクライマックスのシーンで明らかにされ、まさに「フクシュウの時!」という題名がぴったりくる展開に「なるほど」と思わされた。 

    今回の演劇のおもしろさは、ストーリー展開の妙もさることながら、それに尽きるわけではない。劇は一切の解説無しに役者2人の会話だけで淡々と進んでいくのだが、決して観客を置き去りにするわけではなく、かといって“ここはこういう風に観てほしい”と明示するわけでもなく、絶妙な塩梅で観客一人一人が自由に想像を膨らませながら観ることができるように工夫されていると感じた。セイコの脚本にもとづいて演劇をおこなっているタダシが、ふと押し黙って何か考えこんでいる仕草を見せた時、彼の脳裏にはいったい何がよぎっていたのか。そんな彼を無理矢理演劇に付き合わせているセイコもまた、タダシと言葉を交わすなかで、一瞬動揺したような仕草を見せる。彼女の心の内にはなにが渦巻いていたのか。そして、一見見事に完遂されたかに見える「フクシュウ」だが、あれで本当に良かったのか……劇を見終わった後も観客が余韻に浸りながら、様々な想像力を働かせて楽しむことができるのも、今回の演劇の魅力だと感じた。 

    今回の劇の脚本を担当し、自身も「タダシ」役で出演した北條康弘さんは、「今回の作品の中に、『ただの紙切れに書いたお話が想像を超えた姿で舞台上に立ち現れるって面白い!』という趣旨の台詞があるのですが、それは僕自身が、脚本担当として感じている演劇の魅力でもあります」と語っているが、その言葉どおり、演劇の魅力を存分に味わうことができた。役者はもちろんのこと、照明・音響・衣装メイク・小道具などのスタッフ全員の力を一つに結集して創造されるとともに、これに観客の反応が加わることで毎回違った表情を見せる演劇の舞台。この魅力は、実際に劇場に足を運び、役者の息遣いや会場を包み込む空気などを感じることによって、十二分に味わうことができるものだと思う。演劇の魅力を私たちに伝えてくれたはちの巣座の今後の公演にも大いに期待したい。 

軽音JAZZ 定期演奏会開催

3年生 最後のイベントで有終の美

                                                                    2023年1月26日

 
    1月22日、神戸大学軽音楽部JAZZによる第58回定期演奏会が開催された。軽音JAZZの部員たちは、見事な演奏で、この公演を大成功させた。今回の演奏会を区切りに引退する3年生は、有終の美を飾った。この素晴らしい演奏会の様子をお届けする。 
    3組のバンドが登場した。1組目は、「Frere」だ。このバンドの特徴は、舞台の前面にトランペットとサックスだけでなくバイオリンが配置されていることだ。バイオリンがメインとして演奏されるのは珍しいそうだ。そんな特徴を活かした「You And the Night And the Music」という曲が演奏された。曲の冒頭は、穏やかに歌うようなバイオリンの独奏ではじまる。そして、勢いよく全体で演奏され、高音のトランペットと低音のサックスとがバランスよくからみ合う。メンバー全員が2年生というこのバンドのみずみずしい演奏が私たち聴衆を楽しませてくれる。 
    2組目は、「blunc tulle」だ。演奏される曲目は、落ち着いたものが多く、大人びた雰囲気を感じさせるバンドだ。1曲目は、「bolivia」が演奏され、さわやかなハーモニーがラテンの薫りを感じさせる。リズミカルで正確なピアニストの指さばきが筆者の目に焼きついた。5曲目は、バンド結成のきっかけになったという「feel like makin’ love」だ。フルートやサックスなどが奏でる優しい音色と、この音と調和していたベースとドラムの心地よい響きが私たち聴衆を包みこんだ。しっとりした音を奏で、かっこいい大人を体現したようなバンドだった。 
    3組目のバンドは、「Clafoutis」だ。このバンドのピアニストで、軽音JAZZの部長でもある吉村さんが演奏の前に観客に対して挨拶をおこなった。吉村さんは、「私が1回生のときにコロナが流行し、部活ができなくなった」「(活動が再開された後も)部活の運営は経験がなく、不安だった」と、これまでの悩みを打ち明けた。そのうえで、「先輩や後輩、同期に支えてもらったから、今年度はイベントを開催することができた」と、部員たちへの感謝の気持ちを語った。会場からは温かい拍手が送られた。 
    そして、この演奏会の最後に登場したバンドによる演奏が始まった。まるでロック音楽を彷彿とさせる圧巻のドラム独奏で始まる「Recorda me」で、聴衆の心をとらえた。3曲目の「I remember Clifford」は、格別だ。一音一音を大切にして感情豊かに奏でるトランペットとサックスによって、哀愁を漂わせる音色が表現された。「Clifford」とは、名前だろうか地名だろうか。夕日が沈みゆく中、「Clifford」を懐かしむ作曲者の姿が目に浮かぶようだった。最後に演奏されたのは、「Nascimento」というボサノバだ。ピアニストが観客に手拍子を促し、私たち観客もこれに呼応した。観客も手拍子で参加することで会場のボルテージが上がる。曲の終盤では、舞台の前面にいたトランペットとサックスの奏者だけが演奏を止め舞台裏にひく。その直後に、ピアノ・ウッドベース・ドラムがお互い競い合うように激しい演奏をおこない、クライマックスに達する。迫力満点の演奏が終わると、会場に大きな拍手が響きわたった。 
    観客どうしで「演奏上手だったね」と言い合いながら、帰宅の途についていた。筆者も演奏会後しばらく高揚感に浸っていた。バンドによって特徴や雰囲気、楽器構成がそれぞれ違うが、こうした違いがジャズ音楽の多様さを見事に引きだしているように感じた。また、バンドメンバーの調和のとれた音色やそれぞれの楽器で技巧を披露する見せ場は、素晴らしかった。聴衆の心を揺さぶる最高の演奏会だった。軽音JAZZの今後の活躍にも目が離せない。 


 希望と勇気のあふれる音楽の世界

混声合唱団エルデ第59回定期演奏会

                                                                 2022年12月26日

    12月17日に、神戸大学混声合唱団エルデの第59回定期演奏会が「神戸文化ホール  大ホール」で開催された。会場はたくさんの来場者でにぎわいを見せていて、コロナ下においても、徐々に日常を取り戻しつつあることを感じられた。
    来場者が期待を膨らませる中、演奏会は開催された。1st stageは、杉山平一さん作詞、名田綾子さん作曲の「混声合唱とピアノのための『希望』」。神戸大出身の音楽家、前田裕佳先生のピアノとともに演奏された。『希望』は今年7月10日に開催された「Joint Concert 2022  ~いのちの鼓動~」でもエルデが披露した曲集だ。さらに練習を積んで、磨き上げられた演奏を送ってもらえた。不幸や悲しみの底に沈んでも、きっと希望は見えてくるよ、負けるな、がんばれ、と背中を押されているような気持ちになる1曲目の「希望」や、夢に向かって挑戦する勇気を与えてくれるような5曲目の「いま」など、コロナ感染拡大から長い時間がたつ中で、徐々に活気を取り戻そうと苦労しながら学生生活を送る私たちを鼓舞してくれるような曲集だ。エルデの団員のエネルギーのこもった歌声と、前田先生の軽やかなピアノで、曲のメッセージが胸に迫ってきた。コロナ下でも少しずつ日常を取り戻そうとしてきた2022年の最後にこの曲を再び聞けたことは、とても励まされる思いになった。
    2nd stageは、エルデの団員たちが作った脚本と音楽で贈られたオリジナルステージ「夢見る機械」だ。お笑いに打ち込みながらも、芸人になる道を踏み出せず、進路に悩む高校生が主人公の青春コメディードラマである。「装着した者の望む世界を見せてくれる」夢見る機械をきっかけにして、悩んでいた主人公が自分の本当の夢に気付き、お笑いの相方や友達、家族、先生に励まされ、支えられながら夢に向かって進んでいくさわやかな物語だった。ステージを彩るオリジナルの音楽が、すがすがしさを感じさせてくれた。1st stageの曲のメッセージともシンクロして、前向きになれるステージだった。
    3rd stageは、「Spiritual&Gospelアラカルト」と題して、黒人霊歌とゴスペル6曲が披露された。繰り返されるフレーズが心地よさを感じさせる曲や、クールな曲、荘厳さを感じさせる曲やドラマチックで情感豊かな曲など、面白い曲ばかりだった。黒で統一した衣装の団員たちが、体の動きでリズムをとりながら歌う姿はとてもかっこよかった。会場で配られたパンフレットによると、黒人霊歌やゴスペルは、アメリカの黒人奴隷を起源とするキリスト教の宗教音楽で、言葉や行動を制限された彼らは、歌によって自分たちの思いを発散したのだという。パンフレットには「これらの音楽に込められた思いは、コロナを生きる私たちにも重なる部分があります」とあり、エルデの団員たちがこのステージにかける思いが伝わってきた。この思いにふさわしい、熱情と解放感溢れる歌声に観客たちは魅了された。
    鳴りやまない拍手に応え、アンコールとして「この世界の全部」という曲が披露された。「この世界を全部君にあげようと思ったけど、この世界は僕のものじゃなかった」というユーモラスな詩から、情熱的な雰囲気へと変化し、最後は新しい世界への旅立ちを感じさせる、勇気のあふれる歌へと変わっていった。最後まで音楽のエネルギーを感じさせる演奏会だった。

 3団体の思いがこめられたステージ 

 「Joint Concert 2022」開催 

                                                                 2022年7月24日

    神戸大学混声合唱団エルデが、大阪教育大学混声合唱団、和歌山大学混声合唱団とともに、「大東市総合文化センター サーティーホール」で開催された「Joint Concert 2022 ~いのちの鼓動~」に出演した。このコンサートでは、2つの単独ステージと、3団体の合同ステージの、3つのステージが披露された。 

    1st stageは、大阪教育大学混声合唱団による、編曲・作詞:佐藤賢太郎の、混声合唱とピアノのための組曲『夜空の記憶の彼方に』だ。4つの曲から成るこの組曲は、編曲者の佐藤賢太郎さんが、文部省唱歌にアレンジを加え、新しい作品として作り上げたものだ。私たちの多くが小学校までに聴き、覚えた歌詞やメロディーが次々と出てきて、とても面白かった。唱歌がもとになっているため、歌詞がわかりやすい言葉で紡がれていて、頭に情景が鮮明に浮かんできた。とくに3曲目の「花火と月と」は、花火と月のきれいな夜空の光景が頭の中にパーっと広がった。ノリのいい歌詞と元気のいい歌声で、気分の上がる1曲だった。4曲目の「朧月夜の涙」も、日本の故郷を思わせる原曲「朧月夜」の美しい歌詞に、悩みや苦しみを思わせる歌詞がアレンジでくわえられていて、心にしみわたった。美しい自然に包まれて、痛みはいやされ、涙も消えていくという、美しい曲だった。 

    2nd stageは、神戸大出身の音楽家、前田裕佳先生を客演ピアノに迎えて、神戸大混声合唱団エルデが、混声合唱とピアノのための『希望』を披露した。この曲集は、杉山平一さんの作詞と、名田綾子さんによる作曲で、真っ直ぐで心を打つような詩と、流れるような美しい旋律が魅力だと紹介されていた。「希望」というタイトルから、私は明るいイメージをいだいていたが、ステージが始まると、暗いメロディーや不安定なリズム、明るく力強いメロディーや軽快なリズムがところどころに現れて、何度も入れ替わり、驚かされた。変化に富んでいるため、聴いていてとても面白いステージだった。暗く落ち込んだ気持ちにそっと寄り添ってくれる、そして前に進む力をくれる、そんな歌の力も感じさせるような曲だった。この曲集の2曲目「真相」は、真実を知りたいという気持ちと、知ってしまうことによって訪れる変化への恐れの間で揺れ動く心が、独特のリズムで表現されていた。ピアノと合唱の掛け合いも印象的で、記憶に残る一曲だった。最後の5曲目「今」は、力強い言葉をストレートにぶつけてくるような曲だった。「人生にあるのはいつも今である 今だ」という歌詞が、響き渡るきれいな歌声で歌われて、この曲に込められたメッセージが力強く伝わってきた。 

    ラストの合同ステージは、客演ピアノにふたたび前田先生、客演指揮に神戸大学名誉教授でもある、指揮者の斉田好男先生を迎えて、大阪教育大学混声合唱団、和歌山大学混声合唱団、神戸大学混声合唱団エルデの3団体による大合唱団で行われた。「いのちの鼓動」をテーマに、3つの曲集から1曲ずつ取り上げた、こだわりが感じられるステージだった。1曲目は合唱のための6つのソング『ワクワク』より、谷川俊太郎作詞、信長貴富作曲「ワクワク」。谷川俊太郎さんが率直な言葉で、特別でもない日常が描かれていて、そんな日常にワクワクするという面白い詩が、歌詞となっている。信長貴富さんは、コロナの自粛ムードからあっけらかんと脱出できるようになればという気持ちでこの曲を作曲したこともプログラムで紹介されていた。軽快で明るい曲に、はずむような気持がしてきた。プログラムにかかれていた、「何をしても『ワクワク!』したいですね」という団員たちの思いが込められていたように思えた。2曲目は混声合唱とピアノのための『いのちの朝に』より、栗原寛作詞、相澤直人作曲「であるように」。「くだもの」や「そら」がきれいで、生命あふれるものであるように、「ことば」が、ほんとうのもの、「うた」はしあわせなものになるように、という美しい歌詞の曲だ。優しくゆったりとした曲に、ことばを大切にした歌の良さを感じた。3曲目は混声合唱組曲『いのちのうた』より、ごとうやすゆき作詞、横山智昭作曲「いのちのうた」だ。この曲のオリジナルは、女声合唱版で、横山智昭さんが東日本大震災をきっかけに作られたそうだ。世界にあふれるすばらしいものを、想像力をかきたててくれるような言葉で表現された歌詞で、合唱団の澄み切った歌声によって、この曲の世界観の中に引き込まれた。 

    すべてのプログラムが終了して、満場の拍手に応えて、アンコール合唱が行われた。これまでのステージで、整然と並んでいた団員たちが、舞台上いっぱいに広がった。披露されたのは伊東恵司作詞、松下耕作曲「ほらね、」。川や風、鳥といった森羅万象が歌われて、にぎやかな印象だ。舞台上のあらゆるところから歌声が聞こえてきて、このにぎやかな情景のイメージを豊かにしてくれた。孤独をいやしてくれるような歌だ。それでも寂しく、涙の流れる時は、「ゆっくりそっと歌を歌おう」という歌詞に、涙がこぼれそうなくらい心を揺さぶられた。コロナが蔓延して、何かと制限が付きまとい、孤独を感じやすい今この時、「いのちの鼓動」をテーマにしたコンサートの最後にふさわしい、団員たちの思いのこもった1曲だった。 

ジョイントコンサート2022 @豊中市立文化芸術センター

アポロンをはじめ合唱団の素晴らしい歌声が観客を魅了

                                                                 2022年7月14日

    7月10日(日)、神戸大学混声合唱団アポロン、クール シェンヌ、大阪大学混声合唱団の3団体による「ジョイントコンサート2022」が豊中市立文化芸術センター大ホールにて開催された。コンサートの実行委員長を務めた松田衣里加さん(アポロン部長)によれば、本公演はもともと2020年度に企画されたものだったが、新型コロナウイルスの影響で中止を余儀なくされてきたという。パンフレットの挨拶文において松田さんは、実に3年ぶりにジョイントコンサートを開催できたことについて、「2年の時を経てようやく3団が集い、同じ空間で歌える機会を実現できたことを大変嬉しく思います」「合唱に携わる人間にとってはまだまだ厳しい状況が続きますが、合唱の楽しさ、素晴らしさを改めて多くの方にお届けできれば幸いです」と万感の思いを語った。その言葉どおり、本公演は私たちに合唱の楽しさ、素晴らしさを改めて感じさせてくれる感動的なものであった。

    14時30分に開演が宣言され、はじめに各合唱団による単独ステージがおこなわれた。最初に登壇したアポロンは、5月のKKR(関西学生混声合唱連盟)主催の定期演奏会以降に加わった新たなメンバーとともに、KKRでも披露した3曲(「翼」、「○と△の歌」、「死んだ男の残したものは」)を歌いあげた。5月のときと比べて、男性パートの人数が増えて低音の力強さが増し、女性パートの高音の美しさとあいまって、より素晴らしい合唱になっていると感じた。また、今回は5月のときと違い、アポロンの団員は全員マスクを外して合唱を披露したのだが、私は素人ながら、マスクを着けないことによって合唱の響き方が明らかに違うのを感じずにはいられなかった。今回は、アポロンの団員たちの会場全体に響き渡る伸びやかな歌声を、団員の声によって生じる空気の振動とともに、身体全体で存分に味わうことができた。1曲目の「翼」では、大きな会場一杯に響き渡る美しいハーモニーを聴きながら、爽やかな風が吹き抜ける青空を自由に飛び回っているかのような心地よい感覚に浸ることができた。さらに、マスク越しではよく見えなかった団員たちの豊かな表情も見ることができ、視覚的にも合唱を楽しむことができた。

    つづいて登壇した大阪大学混声合唱団は、KKRの際の2曲(「知った」、「OH MY SOLDIER」)に加えて、新たに「花をさがす少女」、「IN TERRA PAX 地に平和を」を披露した。「花をさがす少女」は、荒れ果てた戦場の様子と、その戦場できれいな花をさがす少女の様子との対比を、緩急をつけたメロディーで表現した歌。少女は、戦争がはじまる前の「やさしかった時」に見たきれいな花を探して、泥にまみれ、かなしみをこらえながら、戦場をさまよい歩く。だが、そんな少女にたいして、同情する者など誰もいない。歌の後半で「一瞬 飛び散る 少女は いない」と歌われる場面では、冷たく張りつめた空気が会場全体を包み込んだ。少女をとおして鮮明にうかびあがる戦争の残酷さ。歌を聴きながら、私は、あらためてウクライナの地に思いを馳せずにはいられなかった。

    単独ステージの最後に、クール シェンヌが登壇した(紹介文によれば、フランス語でクールは「合唱」、シェンヌは「橿(かし)の木」を意味するという)。この合唱団は、「当初は奈良県立橿原高校合唱部卒業生で結成されたOB合唱団として発足」したが、現在は「結成当初の団員から、近年に入団の大学生まで幅広い年代のメンバーが在団」しているとのこと。披露された3曲のうち、「とむらいのあとは」という曲では、「たおれたひとの たましいが うたえなかったもの ゆめみよう」「銃よりひとを しびれさす ひきがね ひけなくなる 歌のこと」というフレーズが、会場を大いに揺るがす圧倒的な歌唱力によって高らかに歌い上げられた。団員の方々が、「銃よりひとをしびれさす」歌の力を信じて渾身の思いをこめて歌っているのを感じ、私は本当にしびれる感覚に浸りながら合唱の素晴らしさをかみしめた。

    単独ステージの後には、3つの合唱団による合同ステージがおこなわれた。披露されたのは、「Abedlied(夕べの歌)」と「Gesang der Parzen(運命の女神の歌)」の2曲。紹介文によれば、前者は作曲家のラインベルガーが新約聖書の一節に曲をつけ、合唱曲として発表したもの。後者は、ゲーテの戯曲『タウリス島のイフィゲーニエ』中に出てくる詩を元にブラームスが作曲したものだという。いずれもドイツ語の詞で、かなり高度な合唱曲だと思われるが、3団体は見事な合唱で歌いあげた。

    とりわけ「運命の女神の歌」では、「神々を畏れよ、人間たちよ!」で始まるゲーテの詩の世界が、荘厳な曲調とドイツ語による合唱によってダイナミックに展開された。この詩は、「イフィゲーニエが幼いころ聞かされていた歌(先祖タンタルスが神々によって奈落へ落とされた時、運命の女神[Parzen]によって歌われた歌)」としてゲーテの作品中に登場するという。私はドイツ語の詞を理解しながら歌を聴くという高度なことはできなかったが、神々への畏怖をつづったゲーテの詩が、合唱団によって時に激しく、時に静かに重々しく歌いあげられるのを聴きながら、壮大な世界に引き込こまれていくのを感じた。

    アンコールでは、「こころよ うたえ」という合唱曲が披露された。こころの内にある「複雑」「空虚」「震え」を思いっきり「歌え」と呼びかける歌。このストレートな歌詞がやさしいメロディーに乗って、3つの合唱団によって美しいハーモニーを奏でながら歌いあげられていった。とても心温まる曲であった。

    今回のジョイントコンサートも、合唱の楽しさ、素晴らしさを存分に感じさせてくれる感動的なステージであった。惜しむべくは、合同ステージなど人数の多いステージでは団員の皆さんがマスクを着用して歌わなければならなかったことである。コロナ感染を気にすることなく、すべてのステージで団員の皆さんの素晴らしい歌声がマスクを介さずに大ホールに響き渡る日が来ることを願わずにはいられなかった。

    アポロンは、12月3日(土)に第60回記念定期演奏会を開催する。今春、今夏の演奏会の成功にふまえ、さらに磨きのかかった合唱を披露してくれることだろう。冬の演奏会にも大いに期待したい。

 

はちの巣座    3年ぶりの公演に拍手喝采

                                                                 2022年7月3日

    5月24日と28日、神戸大学演劇研究会はちの巣座の短編公演「pot luck」が鶴甲第一キャンパスのシアターD300で盛大におこなわれた。3年ぶりの公演に観客は大いに魅せられ、24日の公演を鑑賞した筆者も迫真の演技に感動した。 

    最初の公演「三つ葉」は、愛媛県の田舎が舞台だ。地元出身の大学生・悟朗と幼馴染の阪大生・隆志が納屋を掃除しているところに、家出して自分探しの旅をしている東京出身の高校生・マサルが訪ねてくるシーンから始まる。 

    実は悟朗の祖父はガンを患い、余命いくばくもない。悟朗は、“生きているうちに地元の祭りをもう一度見たい”という祖父の願いを叶えるために、祭りの会場となる納屋を隆志と一緒に掃除していたのだ。本当は苦しい思いを抱えている悟朗。しかし、表情には一切出さず、明るくふるまおうとする。そんな悟朗に隆志はもどかしさを感じ、本音を引き出そうとマサルに協力を求め、悟朗の祖父の思い出話を始める。だんだんと暗くなる悟朗‥‥。ついに、祖父が亡くなってしまうことを受け入れたくない悲痛な胸の内を吐露する。悟朗の心の叫びを受けとめる隆志。だが、本音を言えずにいたのは悟朗だけではなかった。隆志自身も悟朗に言えない悩みを抱えていたのだ。マサルと悟朗に促され、悩みをうちあける隆志。実は、勉強する意欲を失い、大学には行っていなかったのだ。うなだれる隆志に、悟朗は“遠回りしてもいいんじゃないか。なんとでもなるさ”と優しく声をかける。悟朗の言葉に励まされ、明るさを取り戻す隆志。二人のやりとりを聞いていたマサルも、家出した自分と向き合うことを決意する‥‥。 

    短編公演だが、とても中身の濃い、充実した20分だった。なにより、3人の役者それぞれが内に抱えた悩みや葛藤、揺れ動く心情をあふれでるように演じる姿は圧巻で、筆者も自然と涙を誘われた。 

    二つ目の公演「後藤を待ちながら」は、とあるマンションの一室が舞台だ。飲み会のため久しぶりに集まった友人4人が、成績優秀で何でもでき、今はイギリスに留学している「後藤」の話で盛り上がる。そこに後藤から近況を知らせるLINEが‥‥。しかし、その内容は首をかしげることばかり。夏は地下鉄の冷房で涼むというが、イギリスの地下鉄に冷房はない。ホームズ博物館で一日過ごしたとあるが、一日時間をつぶせるほど博物館は大きくない、等々。後藤への疑惑が増す中、後藤を尊敬している浦上は一人、「何かの間違いだ」と彼をかばう。そうこうしているうちに、マンションのチャイムが鳴り、後藤が彼女だとLINEで送ってきた写真の人物が現れる。それは、後藤の妹だった。浦上はあまりのショックに倒れこみ、他の3人の後藤への不審感が頂点に達する中、妹から意外な言葉が‥‥。「イギリスで兄はうまくいっていないようなんです」。そこで4人は初めて、後藤がイギリスの留学生活になじめず一人悩んでいることを知る。自分たちが“後藤は希望の星だ”とプレッシャーを与え過ぎたのかと考え込む4人。4人は、後藤を励ますために電話をかけることにする。電話に出て気丈にふるまう後藤に対して、4人は「つらいことがあったらなんでも言えよ」と後藤を気遣い、エールを送る‥‥。 

    筆者がこの公演を観てすごいと思ったところは、後藤はキャストして一度も登場していないのに後藤の存在感が際立っていることだ。それだけ友人4人のやりとりと妹の登場が、筆者に後藤への興味をかりたてた。 

    「三つ葉」の演出を担当した松岡侑吾さん(隆志役)にお話をうかがうと、公演の内容は、ほぼ実話に基づく内容だという。愛媛県出身の北條さん(悟朗役)が自分で脚本を一から書き上げたという(松岡さんも愛媛県出身)。また、練習を重ねているうちに皆だんだんと感情が入ってきて、本番で一番の演技ができたことがよかったと教えてくれた。 

    「後藤を待ちながら」の演出担当兼舞台監督の阿間見匡玄さんに取材すると、演出を担当するのが初めてで苦労したとのことだが、「キャストの皆がいい演技をしてくれたのでとてもいいものができました」と充実感あふれる笑顔で応えた。4月の中旬から稽古を始めたため、時間が足りなかったと阿間見さん。コロナのもとで大学による厳しい活動規制が続くもと、苦労しながらも奮闘している姿が浮かんでくるようだった。 

    部長の村田瞳子さんにお話を聞くと、公演は実に3年ぶりだったため、稽古にしても設営にしても皆初めてで、自分たちの力で一から工夫して実現したものだと実感を込めて話してくれた。今回は短編公演だったが、やる気のある部員が多いので、今後長編ものにも挑戦していきたいと意気込みを熱く語った。 

    3年ぶりの公演を見事実現させたはちの巣座。今回の短編公演を皮切りに、彼らが学生演劇の新たな地平を切り開いていくことを願ってやまない。 

 

文化総部加盟団体のために奮闘する新常任委員①

新委員長インタビュー

                                                                         2022年6月28日

    今年の4月から文化総部は、これまで自由劇場の部員が毎年委員長を担っていた慣行をあらため、新たに発足した常任委員会のもとで再出発した。新常任委員会を担うメンバーは、委員長の髙嶋さん(ESS)を先頭に、文総加盟団体が抱える課題を解決するために奮闘している。今回は、委員長の髙嶋さんに現在の心境や問題意識をもっていること等々について伺った。

    髙嶋さんは、現在の心境について「(文総委員長として)慣れない仕事ももちろんあるし、私の力不足でもし連絡が行き届かなかったらと不安もある」と語りながらも、「たくさんの人とコミュニケーションがとれて、意外と楽しいと感じている」と充実感をにじませた。

    問題意識をもっていることとしては、「各団体の関係の希薄さは少し感じている。対面で(文総の)会議を行っていた時はもっと色んな団体が交流出来ていたのかなと思う気持ちもある」と語った。たしかに、今年の3月までZoomを使ったオンライン上で文総総会は毎月開催されてはいたものの、参加者同士の交流はなかった。その文総オンライン総会も、新常任委員会が発足した4月以降は毎月定期的に開催するという方式ではなくなった。これについて髙嶋さんは「文総総会で全員画面オフミュートで委員長だけがただ話すこと自体にも違和感を感じる。画面オフミュートで反応も感じないまま話すことは相当負担」と、オンライン総会の大変さを率直に吐露した。画面を全員オンにするという案もあったらしいが、そこまでして話し合うほどの議題を毎月用意できるかどうかを検討した結果、「会議も必要な時にすればいいのではないか」という考えにいたったのだという。髙嶋さんの言葉からは、前例にとらわれることなく、なにが最良か考えながら文総の運営にとりくんでいることが伝わってきた。

    課外活動全体の現状については、どの団体も対面での活動を本格的に再開するなか「場所不足から外部の施設への出費がかさんだり、他大学生の活動が制限されているところを課題として感じている団体さんも多いので、私自身頑張っていかないと」と、多くの課外活動団体が抱える課題解決のために奮闘する決意を語った。たしかに、有料の学外施設を借りざるを得ない状況が続いていることも、他大学生の活動の参加がいまだに制限されていることも、活動を継続できるかどうかに関わる重大な問題である。課題を解決するために、髙嶋さんたちは、コロナ前に認められていた課外活動での教室利用を復活させるべく大学側と交渉をおこなうなど、日々奮闘している。多くの団体が抱える課題の解決のために尽力する髙嶋さんたち文総新常任委員を、これからも文総加盟団体全体で支えていきたい。

創部90周年を迎えた能楽部

新入生勧誘に奮闘中 

                                                                      2022年6月8日

    今年は3年ぶりに対面新歓祭がおこなわれ、新入生の入部につながったサークルは多い。しかし、いまだに厳しい活動規制が続くために勧誘が思うようにできず、存続が危ぶまれるサークルも出ている。今回、能楽部にお話を伺った。 

    取材に応じた田中泉弥さん(医4)によると、現在能楽部に所属している部員は田中さんのみで非常に厳しい状況だという。勧誘はオンライン中心にならざるをえないが、オンラインだと新入生が自分の興味のあるサークル・部しか探さないため「自分たちのようなマイナーなところには来ない」という。「対面だと能を知らない人にも話しかけられて入部のきっかけがつくれるのですが…」田中さんは、活動規制があるがゆえに学内で対面での勧誘が思うようにできないくやしさをにじませた。「創部90周年の今年、部員が入らなければ停部せざるを得ません。何とか新入生に入ってもらいたいです」田中さんの話からは、伝統ある能楽部を何としても存続させたいという強い思いが伝わってきた。 

    続けて田中さんは、新入生に向けた能楽部の様々な魅力を記者に話してくれた。 

    まず第一に、能の魅力とは、「何百年も前に生きた人と同じことを演じることで、昔の人とつながることができるところ」だと田中さん。「一つの劇」であり「物語」である能を自分が演じることで、歴史上の人物をとても身近に感じられるという。「歴史好きや文学が好きな人は一度体験してもらえば能をきっと好きになると思います」そう語る田中さん自身も、実は歴史が好きなのだという。好きな演目を伺うと、「坂上田村麻呂」だと教えてくれた。あるお坊さんが清水寺を訪れたときに出会った子どもが、夜になると「坂上田村麻呂」という武将に化け、その武将がどれほどすごいのかをいさましい舞踊によってお坊さんに伝える、という物語なのだそうだ。「刀を持ってダイナミックに激しく舞う姿がとてもかっこいいです」田中さんはその魅力を楽しそうに教えてくれた。「坂上田村麻呂」という人物も好きだという。話を聞いて、記者も武将が刀を巧みに操る姿を想像し、自分が好きな歴史上の人物になりきって踊るのはとても気持ちいいにちがいないと感じた。 

    さらに田中さんは、能の魅力として、「今まで絶対誰も経験したことのないことができるところ」だと教えてくれた。田中さん自身、高校まではなかった能という世界に飛び込むことで、様々な人と出会い新しい発見がいくつもあったという。とりわけ、能をおこなう人は若い人から年上の人だと80代の人もいるが、「年配の方と一緒に練習すると様々な刺激を受けておもしろい」という。例えば、能は「舞(まい)」だけでなく「謡(うたい)」もおこなうが、50代・60代の人の方が若者よりもよく声が出て歌の響き方が「圧倒的に違う」。とても迫力があり、元気をもらえるという。また舞の中で最も基本的な動作である「すり足(運足)」でも、学生と年配者とでは大きな違いが出るという。舞台をどれぐらいの速さで移動するのかはその場で調整する必要があるのだが、年配者は「すり足」で移動する姿が自然体で全く違和感を感じさせない。他方、学生はどうしてもぎこちなさが残ってしまうという。「年配者と練習すると様々な発見があり、自分の成長につながります。普通に生活していると能をやってみようと思わないので、人と違うレアな体験ができるところは能楽部の大きな魅力です」田中さんは、自身の経験を話しながらその醍醐味を熱く語ってくれた。 

    現在、能楽部では週一回、神大の近くの先生のところに伺い練習をおこなっているという。現在は大学側が部室の使用を禁止しているので使えないが、規制が緩和されれば本格的な能の舞台が備え付けられている部室でも練習できるそうだ。田中さんは最後に新入生に向けて次のようにアピールした。「高校の部活の延長でサークルを選ぶのもいいですが、今までやったことのないことに挑戦するのもきっと面白いと思います。興味の湧いた人はぜひ連絡ください!」。取材を通じて、能の魅力と田中さんの能楽部存続にかけた熱い思いが伝わってきた。 

    一生に一度の大学生活。新しいことに挑戦してみるのもおもしろいのではないだろうか。興味の湧いた方はぜひ能楽部に連絡してほしい(ツイッターは@kobefuinnew、
メールは[email protected]まで)。

関西学生混声合唱連盟による定期演奏会 3年ぶりに開催 

神戸大学混声合唱団アポロンの渾身の歌声が観客の心揺さぶる 

                                                                      2022年6月5日

    5月15日(日)、関西学生混声合唱連盟(関混連、以下KKRと表記)主催による第53回定期演奏会が、「あましんアルカイックホール」にて開催された。同演奏会は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により昨年、一昨年と中止を余儀なくされ、今年は実に3年ぶりの開催となった。コロナ下で合唱団は今なお困難な運営を強いられる状況だが、そのような逆境をはねのけ、神戸大学混声合唱団アポロンをはじめ関西6つの大学の混声合唱団がすばらしい合唱を披露した。私は観客の一人として、6大学のそれぞれの合唱団による単独ステージ、そして総勢約130名による6大学合同ステージと、会場全体に響き渡る美しいハーモニーに酔いしれた。(KKR加盟の6つの合唱団は、アポロン、関西大学混声合唱団ひびき、関西学院大学混声合唱団エゴラド、同志社学生混声合唱団C.C.D.、大阪大学混声合唱団、立命館大学混声合唱団メディックス) 

    会場のホールに多くの観客がつめかけるなか、15:30に演奏会の開演が宣言された。はじめに、各大学の合唱団がそれぞれ2、3曲の合唱を披露する単独ステージがおこなわれた。すべて素晴らしかったのはいうまでもないが、そのなかでも私が特に印象に残った歌について書き記したい。 

    アポロンによる「○と△の歌」(作詞作曲:武満 徹)は、軽快なメロディーと「地球ハマルイゼ」「ピラミッドハ三角ダゼ」といったシンプルなフレーズのくりかえしが不思議と心に残る歌だった。今回の演奏会で披露された歌は美しさ・壮大さ・重厚さを感じさせるものが多かったが、そのなかでこの歌はポップなメロディーとシンプルなフレーズがひたすら楽しさを感じさせるものであり、異彩を放っていた。 

    つづけて披露されたアポロンによる「死んだ男の残したものは」(作詞:谷川 俊太郎、作曲:武満 徹)は、前の軽快な歌とはうって変わって、葬送曲を想わせるような重いメロディーと「死んだ男の残したものは ひとりの妻とひとりの子ども 他には何も残さなかった」で始まる詞とが、私の心に深く刻み込まれた。歌の前半は、戦争の悲しさを表すかのように、静かな・悲哀を漂わせるような歌声が会場を包み込んだ。しかし歌の後半からは、アポロンの団員たちの歌声に一層力がこめられ、戦争にたいする悲しさと同時にこみ上げてくる怒りを感じさせるかのような歌声が会場に響き渡った。あふれる激情を歌いあげるアポロンの団員たちの歌声が、私たち観客の心を大いに揺さぶった。この歌はベトナム戦争のさなかの1965年に作られたらしいが、私はこの歌を聴きながら、現在ロシアが強行しているウクライナ侵略戦争を想起せずにはいられなかった。冒頭の詞をはじめ、「死んだ女の残したものは しおれた花とひとりの子ども」「死んだ子どもの残したものは ねじれた脚と乾いた涙」と続いていく詞は、いままさにウクライナにおいて日々現出している惨劇そのものだ。ベトナム反戦の想いを込めて作られたこの歌は、今の私にとって、ウクライナ反戦の想いをかき立てるような歌として響いてきた。この歌が終わった直後、私の周囲から鼻をすする音があちこちから聞こえてきた。おそらく多くの観客が、歌を聴きながらウクライナの地に想いをはせ、心を揺さぶられ涙したのではないだろうか。 

    大阪大学混声合唱団による「知った」(作詩:鶴見 正夫、作曲:荻久保 和明)もベトナム戦争がもたらした惨劇とそれにたいする怒り・憎しみを歌いあげるものであった。戦争を知らない少年・太郎が、ベトナム戦争の惨状を写した一枚の写真を見て戦争のなんたるかを自覚していく。激しく動揺する太郎の心の中を、徐々に速くなる曲のテンポや不協和音によって見事に表現していた。「太郎は気づいた ベトナムの空は日本の空に つづいているんだ」という歌詞でこの歌は終わるのだが、私は歌の余韻に浸るというよりは、歌がまだ続いていくかのような緊張感に包まれた。 

    それぞれの大学による単独ステージの後には、6大学合同ステージがおこなわれた。6大学の団員総勢約130名によって披露されたのは、「混声合唱のための『永訣の朝』」(作詩:宮澤 賢治、作曲:千原 英喜)。宮澤賢治の詩「永訣の朝」に千原英喜氏が曲をつけ、約20分に及ぶ大曲として作られたこの歌を、約130名の団員たちは素晴らしい合唱で歌いあげた。 

    「けふのうちに とほくへいつてしまふ わたくしのいもうとよ」の歌い出しで始まる歌は、賢治の慟哭が聞こえてくるかのように、重く、低く、静かに、時に激しく、歌われていった。詩の中で何度も出てくる妹・とし子の言葉「あめゆじゆとてちてけんじや(=あめゆきとってきてください)」が、女声と男声が折り重なるようなかたちで歌いあげられ、とても印象に残った。賢治は健気な妹のこの言葉を何度も反芻しながら、どんな気持ちだったのだろうかと、想像力をかきたてられた。歌のクライマックスでは、「おまへがたべるこのふたわんのゆきに わたくしはいまこころからいのる」「どうかこれが兜率(とそつ)の天の食に変わつて やがてはおまえへとみんなとに 聖い資糧をもたらすことを」という賢治の祈りをこめた詩が、大合唱となって会場にこだました。あたかも雲の隙間から光が射しこんでくるかのような、悲しみのなかに希望を感じさせる美しい歌声に、私はただただ圧倒され、感動した。歌が終わり、しばしの静寂がおとずれた後、会場からは割れんばかりの拍手が団員たちに送られた。 

    アンコールでは、「永訣の朝」を作曲した千原英喜氏がステージに登場し、約130名の団員の前で自ら指揮を執り、「greetings」という明るく爽やかなメロディーの合唱曲が披露された。会場が温かい空気に包まれるなか、3年ぶりに実現されたKKRの定期演奏会は幕を閉じた。 

    アポロンをはじめ、素晴らしい合唱を披露してくれた6大学の合唱団の方々に、心から感謝したい。この日の演奏会では、団員の方々は皆マスクを着用して合唱に臨んでいたが、コロナ感染を気にすることなく、マスクを外して歌い手も観客も合唱を思いっきり楽しむことができる日が一刻も早くおとずれることを願う。 

    アポロンは、7月10日(日)にJoint Concert 2022を大阪大学混声合唱団、クール シェンヌの3団体合同でおこなう。こちらも大いに期待したい。 

交響楽団 サマーコンサート 

3年ぶりに開演

                                                                      2022年6月2日

   5月14日、尼崎市総合文化センターにおいて、神戸大の交響楽団による「Summer Concert2022」が開催された。課外活動規制の影響で、サマーコンサートが開催されるのは、実に3年ぶりのことだ。このコンサートの様子は、5月29日~6月4日までの期間でアーカイブ配信されている。筆者もアーカイブ配信で視聴した。楽しい演奏会の様子をお伝えする。 
    1曲目に演奏されたのは、ロッシーニ作曲の歌劇「どろぼうかささぎ」の序曲だ。指揮者は、学生の西山大志さんだ。指揮者が軽快にタクトを振ると、左右に1台ずつ配置されたスネアドラムが打ち鳴らされ、バイオリンなどによって小気味よいリズムが演奏された。体を動かしたくなるリズムだ。オーボエの少しコミカルな演奏が聴衆を和ませ、フィナーレでは華やかなサウンドによって痛快な気分にさせてくれる。交響楽団の団員たちは、強弱のアクセントを明確に演奏することによって、リズム感を際立たせていた。コンサートのプログラム全体が楽しいものになることを予感させる演奏だった。 
    2曲目は、ボロディン作曲の歌劇「イーゴリ公」よりポロヴェツ人の踊りだ。指揮者が学生の西山さんからプロ指揮者の藏野雅彦氏にバトンタッチした。曲の冒頭は、タンバリンの音に支えられながら、クラリネットがスピーディーにメロディーを奏でていく。軽快なリズムの演奏が聴衆の心をわしづかみにする。そうかと思えば、クラリネットやイングリッシュホルン(オーボエの一種)の哀愁をおびた音が奏でられたり、船が風を切って颯爽とすすむ姿を想起させるダイナミックさを感じさせたりと次々と曲の雰囲気が変わっていく。藏野氏の細やかな指揮に応える楽団員たちが曲の魅力をひきだしていた。 
    3曲目は、サマーコンサートのメインであるブラームス作曲の交響曲第4番だ。第一楽章は、バイオリンが主旋律の悲しげなメロディーを効果的に奏で、これを弦楽器が支えるのが印象的だ。そして、一気に重厚な音が奏でられる。この曲がどのように展開していくのだろうかと期待を膨らませてくれる演奏だ。 
    続く第二楽章は、穏やかな演奏だ。フルートやクラリネットが主旋律を担い、すべての弦楽器奏者が楽器の弦を弓ではなく指先ではじくピッチカートと呼ばれる奏法で奏でる姿は、視覚的にも面白い。そして、この楽章のハイライトは、バイオリンの高音をフルートが引き継ぎ、空高く飛んでいくようなのびやかな演奏だ。筆者は、鳥肌が立った。 
    第三楽章の冒頭、緩やかな第二楽章とはうって変わって全合奏でパワフルな演奏がなされ、筆者は、迫力のあるオーケストラサウンドに驚かされた。すると今度は、バイオリン奏者がだんだんと音を弱くしていき、ピッチカートでさらに弱く演奏し、直後にトライアングルがチンとならされた。良い意味で翻弄され、聴衆を飽きさせない。 
    第四楽章は、感情豊かなフルート奏者の演奏、引き続いて奏でられるクラリネットとオーボエの心落ち着く音色が印象に残った。この曲のクライマックスでは、ティンパニが連打された後に、バイオリンの心を揺さぶる音色が波状をなして押しよせてくる。同時に、フルートをはじめとした管楽器の音もしっかりと聞こえ、弦楽器と管楽器のバランスも絶妙だ。そして、まるでエネルギーがだんだんと増幅するかのように演奏され、観客の心と体を揺さぶった。圧巻の最後だった。 
    3曲目が終わると、会場全体から拍手がまきおこり、鳴りやまなかった。筆者もすばらしい演奏に感動し、画面に映る団員たちにたいして自然と拍手していた。指揮者の藏野氏が「やっとこの交響楽団にも日常が戻ってきました。(団員たちは)一生懸命に練習してきました。感無量です」と団員たちを褒めたたえ、観客にたいする「お礼の気持ち」としてブラームスのハンガリー舞曲第6番を演奏することを語った。緩急・強弱を自在に操る藏野氏のタクトに合わせて、オーケストラが異国情緒にあふれるサウンドを奏でる。迫力満点の演奏が終わると、再び万雷の拍手がまきおこった。団員たちが観客にたいして深々と頭を下げてお辞儀した。顔をあげる団員たちの顔は、充実感に満ちあふれていた。こうして、神戸大の交響楽団は、サマーコンサートを大成功させたのだ。筆者は、団員たちが観客の心を動かす演奏をしたいとの思いで、一生懸命に練習してきた姿が目に浮かんだ。今後の活躍にも目が離せない。

コロナ下で奮闘する文総加盟団体の新歓活動①

 クラシックギター部 オンラインと

体験演奏会で新入部員の入部につなげる

                                                                                                             2022年5月30日

   神戸大学の部活・サークルは新入生を迎えるために、新歓活動に熱心に取り組んできた。3月29,30日に開催された新歓祭でも、その熱気は伝わってきた。新歓祭が3年ぶりに対面で開催されたように、サークル活動に対する規制が緩和された部分もあるが、いまだに残された規制も多く、新歓に苦労した団体もあるのではないか。文化総部加盟団体の、コロナ下での新歓の現状を、取材を通じて明らかにしたい。今回はクラシックギター部に取材を行った。 

   クラシックギター部の新歓担当の佐藤さんが取材に応じてくれた。クラシックギター部は5人の新入生が入部し、入部を検討している新入生が3人いる。クラシックギター部の現2回生部員が2人なので、今年度の新歓はうまくいったといえるだろう。 

   佐藤さんに具体的な新歓活動について聞くと、ツイッターによる広報と、体験演奏会が主な活動だったという。ツイッターには、普段の練習の様子がわかる動画と、週2回行う体験会の日程を投稿した。サークルを探している新入生のツイッターアカウントを約600フォローするなど、宣伝に力を入れた結果、15人の体験演奏会参加につながった。体験演奏会では、クラシックギター部の2回生、3回生の先輩たちが、新入生たちに、クラシックギターの演奏を、手取り足取り、やさしく教えることで、クラシックギターの良さを新入生に感じてもらった。 

   新歓で苦労したことについて尋ねると、先輩部員たちが授業などで忙しい中、新入生たちにギターを教える人を確保するのが大変だったのだという。今のクラシックギター部には、3回生が4人、2回生が2人所属している。コロナ下での規制の影響で、部員が減少してきたことで、新歓での1人当たりの負担も大きくなった。入部を検討中の人を含めて、新入部員が8人いる現状について、「5人いれば合奏もいいのができるので、よかったです」とほっとした様子で話していた。 

   佐藤さんにこれまでの新歓活動を振り返ってのうけとめを聞くと、「クラシックギターを知ってもらうまでのカベと、クラシックギターを弾いてもらうまでのカベをのりこえてきたのが良かったです」と話してくれた。 

神大にたくさんの音楽系サークルがある中で、新入生にクラシックギター部の存在を知ってもらい、実際に弾いて魅力を知ってもらわなければ、ほかのサークルの中に埋没しかねない。そのため、佐藤さんは「対面での新歓はあってほしい」と話していた。サークルを知ってもらうきっかけは、ツイッターなどのオンラインでも作ることができるが、実際に弾いてもらうためには対面での活動が不可欠だ。「新歓期間中に緊急事態宣言とかなく て、本当に良かったです」と、安どした表情で佐藤さんは振り返っていた。 

   佐藤さんは、入部してくれた新入生のこれからの活動についても教えてくれた。新入部員は、「ジュニア」と言われるコースで、ギターの基礎練習をしながら、初心者向けの課題曲のマスターを目指していく。課題曲の定番はジブリの「風の通り道」だという。「ジュニア」の間には、「ジュニア指揮」という役割を2回生の先輩が担い、新入生たちを丁寧に教えてくれる。課題曲は、7~8月にある部内の発表会で披露することを目標にして練習する。課題曲は大体1~2ヵ月でうまく弾けるようになるという。上達が実感できて楽しいに違いない。 

   クラシックギター部は、学館の部屋を借りている週3日のうち、これる日に参加すればよい。部員はそれぞれのペースで練習をする。クラシックギター部の新歓期間は終了したが、途中入部はいつでも歓迎している。クラシックギター部はこれからも活発に活動していくことだろう。 

 

笑顔はじける英語劇で観客を魅了 

ESSドラマセクションが3年ぶりに春公演を実現 

                                                                                                             2022年5月27日

    5月12日と14日の2日間、ESSドラマセクションによる春公演が神戸大学鶴甲第一キャンパスD300シアターにて上演された。去年、おととしと新型コロナウイルスの感染拡大の影響で中止を余儀なくされてきた春公演。私は14日の公演を観に行ったが、実に3年ぶりに実現された今年の春公演は、歌とダンスで観客を大いに魅了するすばらしいものであった。
    今回上演されたのは『A week away』(邦題『サマーキャンプ』)。舞台はアメリカ。両親を事故で亡くしてしまった主人公の少年・ウィルは、周りに頼れる大人もいないなか孤独な日々を送り、自暴自棄となって幾度となく非行を繰り返しては警察に逮捕されていた。そんな彼にある日、警官から最後通牒が突きつけられる。“このまま少年院へ行くか、それともサマーキャンプに参加して自分を変えるために努力するか”。ウィルは「俺にはキャンプなんて向いてない」とまったく乗り気ではなかったが、少年院へ行くのだけはゴメンだという一心で、しぶしぶサマーキャンプへの参加を決意する(自分の非行歴は隠して)。最初は周囲に馴染めず心を閉ざしていた彼だったが、同じキャンプに参加した同年代の仲間たちから歓迎され、彼らと触れあうなかで、次第に心を開いていく。思いがけず芽生えた友情、そして恋。自分の過去にたいする負い目、そして将来にたいする不安にもがき苦しみながらも、ウィルは遂に自分の居場所を見つけていく……。サマーキャンプでの仲間たちとの出会いを通じて気持ちが大きく揺れ動くウィルと、彼を支える仲間たちとのストレートな気持ちのやりとりが、爽やかなミュージカル形式で展開され、物語に自然と引き込まれた。上演時間1時間45分という大作であったが、時間を忘れるくらい楽しませてもらった。

    印象的なシーンは多岐にわたるが、そのなかでも、主人公・ウィル(本田洋翔さん)とヒロイン・エイブリー(髙嶋紗愛さん)が綺麗な花々に囲まれながら2人で会話をするシーンは、とてもロマンチックであった。普段は明るく、負けず嫌いなエイブリーが、実は悩みを抱え弱気になってしまうときもあることを素直にウィルに打ち明ける。そんな彼女を本気で愛し、励ますウィル。だが一方で彼は、自分も嘘偽りのない気持ちで彼女に接したいと願いつつも、自分が実は数々の非行を重ねてきた不良少年であることを打ち明けることができずに葛藤する。2人の恋は着実に進展していくが、進展すればするほど、ウィルの葛藤は大きくなっていく……。ずっと心を閉ざして生きてきた少年が、自分の殻を突き破って新しい一歩を踏みだそうともがく姿は、観ていてとても共感した。ウィルとエイブリーとの気持ちのやりとりが、歌とダンスも交えて身体全体を使ってダイナミックに表現され、大いに魅了された。

    主役の2人の脇を固める登場人物たちも個性的で面白かった。ウィルの一番の味方で常に彼を支える友人・ジョージ(鈴木太智さん)は、心を閉ざすウィルに対しても気さくな態度で積極的に話しかけるが、恋にはとても臆病で、ウィルから逆に“積極的に行けよ”と発破をかけられてしまう。このギャップがとても面白く、ウィルのようについつい応援したくなった。

    サマーキャンプでウィルに何かと突っかかり、彼の正体を暴こうと策をめぐらせるショーン(辻野杏奈さん)は、最初から最後までとてもエネルギッシュでインパクトがあった。ウィルの正体を暴くために悪知恵を働かせるショーンの存在は、他の登場人物がウィルの素性など気にせず接する姿と好対照であり、存在感が光っていた。そんなショーンだが、サマーキャンプ最終日にウィルと交わしたやりとりからは、彼ら2人の間に確実に友情が芽生えたことを感じさせ、感動的だった。

    劇中に要所で披露される歌とダンスのシーンでは、役者のみなさんの躍動感あふれる歌とダンスに観客が手拍子で応え、会場全体が一体となって笑顔と熱気に包まれた。かなり動きが激しくテンポが速い歌とダンスに照明・音楽・字幕を合わせるのは大変だったと思うが、最後まで乱れることなく連携がとれていたのも素晴らしかった。演劇終了後のカーテンコールでは、出演者全員が登場して華麗なダンスとアクロバティックなパフォーマンスを披露し、客席から歓声があがった。最初から最後までとても楽しい公演だった。

    3年ぶりの春公演を無事に実現することができた現在の心境について、部長の髙嶋さんは「まずは誰も体調を崩さず、大きな怪我なく終えられたことにほっとしている気持ちが1番」と語った。12日の公演では「今までにないハプニング」もあったらしいが、そのような逆境をものりこえて春公演をやり遂げたことによって「参加した部員や、見に来てくださった人が少しでも明るく、時間を忘れるくらい楽しめたと信じて満足の気持ちでいっぱい」と、部員や観客への感謝の気持ちをにじませながら語ってくれた。髙嶋さんの言うとおり、私は観客として、ESSのみなさんの演劇を時間を忘れるくらい楽しませてもらった。激しいダンスと歌がふんだんに盛り込まれた1時間45分もの英語劇を、最後のカーテンコールにいたるまで全力で演じてくださったみなさんには感謝の気持ちでいっぱいである。12月におこなわれる冬季公演も、今回とまた一味違った素敵な演劇を披露してくれることだろう。今から楽しみである。 

ブルーグラス    春ライブ大盛況

                                                                                                             2022年5月6日

    4月24日、西宮のライブハウス「フラッパーハウス」で、ブルーグラスサークルによる春ライブがおこなわれた。カントリーミュージックの軽快な音楽に観客は心和ませ、演奏者とともにライブを楽しんだ。 

    午後1時半、開場とともに新入生やOB・OG、サークル員の友人・知人が続々と会場にやってくる。約35席の客席が埋まり、会場がなごやかな雰囲気に包まれる中、いよいよライブがスタートした。 

    最初のバンドは「Van Theater」。フィドル(ヴァイオリン)、ギター、マンドリン、バンジョー、ウッドベース、ドブロのフルバンドで、6人の演奏が調和して聴衆をカントリーミュージックの世界に一気にいざなう。1曲目の「Boil Them Cabbage Down」は陽気な曲で、筆者は思わずリズムをとりたくなった。ドブロの「ひきやん」、ギターの「ちくわちゃん」、フィドルの「和音」が流れるようなソロパートを披露し、会場も大きな拍手で応えた。また、2曲目の「Blue Ridge Cabin Home」も“The カントリーミュージック”と呼べる楽しいメロディーの曲だった。フィドルの「和音」が力強く魅力ある歌声を披露してくれ、皆のハーモニーも息がぴったり合ってとてもきれいだった。 

    2組目の「禁中並公家諸Grass」は3回生中心のバンドで、陽気な曲から少し哀しげな曲までカントリーミュージックの奥深い世界を堪能させてくれた。特に「Alive But Not Amused」という曲は、テンポは速いが哀愁漂う曲で味わい深かった。バンドメンバーの歌声と演奏がとてもよく合っていて耳に心地よく、しばし時間を忘れさせてくれた。他方で、「Big Spike Hummer」という曲は、うってかわってとても陽気なメロディーで、元気をもらえるような曲だった。途中、フィドルのソロパートで「しばちゃん」がとても速い指さばきを披露してくれ、会場を沸かせた。 

    3組目のバンドは「August Rush」。映画好きの「まーちゃん」が自分のお気に入りの映画の題名からとったバンド名ということで、6人がおそろいのリストバンドをつけて一体感のある音楽を披露した。1曲目の「Falling For You」は、少し落ち着いた曲調で、ウッドベースの「トムトム」がとても聴きやくすく力のこもった歌声を披露してくれ、普段は低音で演奏全体を支える“縁の下の力持ち”であるベース奏者によるボーカルに会場も盛り上がった。さらにマンドリンの「まーちゃん」がソロパートで非常に速く巧みな指さばきを見せ、会場からは大きな拍手が送られた。5曲目の「Your love is like a flower」は、バンジョーの「しんきち」がりりしく惹きつけられる歌声を披露し、他の5人の演奏と調和してとても心地よかった。 

    4組目のバンドは「アルマゲドン」。なんと一日9時間近く練習する日もあるというほど練習熱心なバンドで、演奏してくれた曲はどれも完成度が高いと筆者は感じた。1曲目「Jerusalem Ridge」は、疾走感あふれる曲で圧巻だった。途中から次々と繰り広げられるソロパートの波。まずはフィドルの「和音」がトップをきって長いソロを一気に演奏していく。続いてバンジョーの「しんきち」も「和音」の勢いそのままに流れるようなリズムを会場全体に刻んでいく。さらに、マンドリンの「松坂」が目にもとまらぬ指さばきで曲の疾走感をさらに倍加させていく。筆者は思わず息をのんだ。哀愁漂う曲を見事に演奏しきった彼らに、会場からおしみない拍手が送られた。4曲目「Rain and Snow」は、これまたテンポが速くとても陽気な曲だ。マンドリンの「松坂」が裏声も使いながら高低さのある曲を歌いあげていく。そこに他の演奏が交わり、会場全体が演奏に聴き入る。筆者も自然と体がリズムをとっていてとても“のれる”曲だった。 

    最後のバンドはブルーグラスのベテラン中心に結成された「ネコパンチブラザーズ」。バンドを組んで間もないとのことだったが、この間のサークル活動の中で培われた技術や風格を感じさせる、最後の“とり”にふさわしい演奏だった。特に「lonesome moonlight waltz」は、テンポの速いカントリーミュージックとはうってかわってゆったりとした哀愁漂う曲で、全員でリズムをとりながら演奏している様子は息がぴったり。フィドル、マンドリンとソロパートが続き、曲の哀愁感をさらに際立たせた。アンコール曲「little girl of mine in Tennessee」は、マンドリンの「タニコ」がボーカルをつとめ、明るく楽しくテンポの速い曲を力強い歌声で見事に歌いきった。さらに、フィドルの「わかちゃん」が今日一番とも言える非常に速いテンポのソロパートを圧倒的なスピードで演奏し、聴衆を魅了した。 

    まさにこの日のライブは、魅了される歌声あり華麗な指さばきあり笑いありの、ブルーグラスサークルの魅力が存分に詰まった素晴らしい演奏会だった。春ライブを見にきていた新入生の天久(あめく)さん[文学部]に感想をうかがうと、「普段聞けない曲ばかりでとても楽しかったです。ひとつの場所でみんなで盛り上がるのは久しぶりなので、とても楽しめました」と生き生きとした表情で語ってくれた。渉外担当の中北さん(法学部2回生)によると、コロナ禍で演奏会場を探すのに苦労しているという。また、課外活動規制があるため、十分な練習時間を確保することが難しかったことも教えてくれた。そのような様々な困難がある中でこの日のライブが大成功したのは、ブルーグラスのサークル員たちの結束と創意性の賜物ではないかと筆者は感じた。今年の新歓についてうかがうと、中北さんは、「今年は対面新歓祭が実現できたことがとても大きかったです」と力を込めて話してくれた。サークルの魅力を直接新入生に語ることで、すでに去年より多くの新入生が入部してくれたという。これを聞いて筆者は、新歓祭実行委員会の尽力のもとに実現された対面新歓祭はとても重要だったと思った。 

    春ライブを成功させ、さらなる新歓活動にのぞもうとしているブルーグラス。彼らの今後の活躍を願ってやまない。なお、今回の春ライブの様子は、ブルーグラスのHPから気軽に見ることができる。興味のある方はぜひ一度ご覧になってはいかがだろうか。 

軽音団体合同新歓「イッキ見!」 3年ぶりに開催

                                                                                                             2022年5月2日

    4月23日、軽音Ⅱ部(正式名称、軽音楽部Ⅲ)と軽音ROCKが共催する神戸大合同新歓イベント「イッキ見!」が3年ぶりに開催された。神戸大に存在する7つの軽音団体の全ての団体に、クラシックギター部とマンドリンクラブを加えた全9団体が参加した。各団体が3、4曲を演奏するとともに、自らの団体の特徴などをアピールした。軽音団体に入部したいと考えている新入生にとっては、最適のイベントだ。筆者もこのライブに参加し、楽しい雰囲気を味わった。
    午前11時、「イッキ見!」司会の軽音Ⅱ部の徳田さんが「どの団体に入ろうか悩んでいる人も、もう決めてしまった人も各団体の色を全身で感じてもらって、今後の学生生活の参考にしていただければ」と呼びかけ、開演した。ほぼ満席となった会場の期待が一気に高まる。まずは、クラシックギター部だ。「ギターアンサンブルの定番曲」として紹介された「スパニッシュコーヒー」という曲が演奏された。スーツを着こなした部員たちがアメリカンな香りと哀愁を感じさせるこの曲を見事に演奏する姿は、大人びていて魅力的だ。続いて、マンドリンクラブが演奏した。ピックを小刻みに上下させてマンドリンの弦をはじくという奏法から繰りだされる柔らかい音色が聴衆を包み込んだ。
    3団体目は、軽音団体のトップバッター、楽音だ。ボーカルが「ぶちあげていきたい」と叫び、会場のボルテージは、一気に盛り上がる。マカロニえんぴつなどのポップスの有名バンドの曲が披露され、乗りのよい曲に高揚感が湧いてくる。4団体目のMMCは、ギターの速弾きのテクニックが目を引く。
    軽音JAZZが登場すると、場内の雰囲気が一変する。「オータムリーブス」という曲が演奏され、落ち着きがあり洗練された音色が心に染み入る。聴衆は、軽音JAZZの部員がトロンボーンやピアノなどの楽器を繊細に奏でる音色に聞き入った。つづいて軽音ROCKだ。女性3人のシンプルな構成のバンドで、春の風を思わせるような明るいポップスが演奏された。先ほどのしっとりとしたJAZZの演奏とは対照だ。バンドを楽しむメンバーの気持ちも伝わってきて、気分も高揚する。
    「イッキ見!」ライブの最後を締めくくったのは、軽音Ⅱ部だ。バンドメンバー全員がサングラスをかけて演奏するという派手なパフォーマンスが目を引く。前半に演奏された曲は、場所や時間といったものにとらわれないように感じさせる不思議な雰囲気だ。ミステリアスな曲が演奏されたと思えば、ボーカルが美声を響かせる洋楽も披露された。最後に、普段部室でおこなっているという即興のセッションが披露され、部員たちの音楽にたいする熱い情熱を感じさせた。
    筆者は、9団体が参加するライブに参加し、各団体の特色を存分に楽しむことができた。音楽団体に入りたいという新入生にとってもひじょうに貴重な場となっただろう。「イッキ見!」ライブの様子は、Youtubeでもアーカイブ配信されている。軽音団体に入りたいという人や、音楽が好きだという人は、ぜひ視聴してみてはいかがだろうか。

新歓への思い語る   グリークラブ「部活を存続できるように頑張りたい」

                                                                                             2022年4月7日

    3月29、30日の日程で、3年ぶりに対面での新歓祭が開催された。様々な団体が新入生を勧誘し、にぎやかな風景が徐々にではあるが戻りつつある。私たち新聞会は、文化総部に加盟する団体に新歓にかける思いを伺っている。今回は、男声合唱団グリークラブさんにお話を伺った。
    部長の清水さん(4回生)は、新歓について、「今年の新歓で新入生が入らなかったら、廃部になる。部活を存続できるように頑張りたい」と語った。2020年と2021年の2年間で、入部してくれた人はおらず、清水さんが入部したときに、17人いた部員も、今では、5人に減少しているという。しかも、清水さんを含めたこの5人は、全員4回生以上(大学院生含む)だ。今、グリークラブは、存続の危機にたたされている。この現状について、清水さんは、「グリークラブの創部は、1905年で、長い歴史がある。自分の代で終わらせていいのかというプレッシャーを感じている」と、苦しい胸の内を吐露した。
    清水さんによると、「新入生は男声合唱というものを知らない」という。だからこそ、対面で新入生を勧誘することが重要になってくるが、コロナ下の2年間は、その機会がなくなった。清水さんは、「オンラインでは、新入生に(男声合唱の)魅力を伝えることができない」と語る。オンラインでの新歓では、新入生の勧誘がひじょうに厳しい現実が浮かびあがっている。
    こうした現状を突破するために、グリークラブの部員は、週1回の頻度で、部室での新歓企画を予定している。部員たちが合唱の練習をおこない、新入生には、その様子を見学してもらうそうだ。それに加えて、Twitterでも宣伝をおこなっていく予定という。
    記者がグリークラブの魅力について伺うと、清水さんは、「アットホームな雰囲気ですね」と即答した。部員同士の仲がよく、また、部室はリラックスすることができる環境だという。男声合唱の魅力についても、伺った。清水さんは、「女性パートがなく、男性だけなので、音域が近く、音にまとまりがある。野太い音で、力強く聞こえる。きれいにハーモニーができれば、うれしい」と語った。記者は、グリークラブの合唱を聞いてみたくなった。また、12月に行われる定期演奏会では、合唱用に作られた曲だけでなく、ポップスも歌う。ポップスを歌うことが好きな人にも門戸は開かれている。
    今回の取材を通じて、グリークラブに新入生が入部し、部が存続してほしいと心から思った。合唱に興味のある方や、アットホームな雰囲気で部活をしたいと思う方は、ぜひ一度連絡をとってみてはいかがだろうか。

凌美会、新年度に向けた意気込みを語る 

文総加盟団体インタビュー 

                                                                                              2022年4月4日

    4月に入り、いよいよ2022年度新歓も本格的に始まった。文化総部に加盟する各団体も、自分の部活・サークルの魅力を新入生に伝えようと、工夫や努力を積み重ねていることだろう。 

    今回は、新歓期を前にした3月下旬に、文総に加盟する美術系団体の凌美会に、部の魅力と新歓に向けた思いをうかがった。 

    部長の米谷さん(文学部3回生)と渉外担当の大木さん(文学部2回生)が取材に応じてくれた。 

    2人から話を聞いて、記者が抱いた凌美会の印象は、創作が好きな人、美術が好きな人たちのゆるやかな集まりだ。 

    コロナ下の今、凌美会の主な活動は土日のオンライン制作会だ。Zoomを使って、部員同士でおしゃべりをしながら、それぞれ作品をつくるという。雑談もあり、アドバイスもありで、先輩や友達から作品を評価してもらえることがあるとうれしい、と2人は話してくれた。米谷さんと大木さんは文学部所属だが、大木さんは先輩の米谷さんから文学部の先輩として、学生生活の上でとてもためになる話をしてもらえるとも言っていた。頼りになる先輩や友達と一緒に、楽しく活動できるのが凌美会であることが伝わった。 

    制作会と並ぶ重要な凌美会の活動が部員の作品の展覧会だ。かつては年に4回展覧会を開いていたが、コロナの影響で、2021年度は1回しか開催できなかった。2022年度は展覧会を2回開催することを計画している。2022年度の秋冬の時期はアバンギャルド展、2023年の春ごろには、他大学の学生の作品をも受け入れた、オープンな展覧会を企画しているそうだ。大木さんによると、凌美会は他大学の美術部との交流もあり、2021年度は関西大学の学生とオンライン交流会を行ったと話してくれた。関西大学の方との交流はとても刺激となり、2022年度の展覧会に向けたやる気につながっていることが伝わってきた。今年の4月には、より多くの部員が参加するZoom交流会も企画している。凌美会は、今後も他大学との交流を積極的に行っていこうと考えている。 

    制作会や展覧会といった凌美会の活動に、部員が縛られることはない。制作会への参加は自由だ。1人で黙々と作品を作って、展覧会に出品する部員もいるし、構想や下書きは1人でやって、絵付けの時には制作会に参加することもありだという。展覧会にも、作品を出すかどうかは自由である。米谷さんは「マイペースで、無理をすることがないですよ」と話していた。 

    個々に制作を行うだけではなく、チームで1つの作品をつくる活動も、凌美会ではできる。2021年度には、有志の部員十数人で作品をつくり、「六甲ミーツアート展」に出展するための審査会に提出した。残念ながら結果は落選だったが、参加者は「めいっぱい楽しんだ」と話していたそうだ。美術作品を一緒に作る仲間を見つけることができるのは、部活の魅力だろう。これも凌美会の自由さだ。 

    以上のように、活発な活動を行っている凌美会だが、コロナ下での活動の制約は大きく、やりたいけどやれなかった活動も多かったと2人は話してくれた。 

2022年度からは、神大でも対面での授業も増えてきて、社会的にはコロナを理由とした規制も感染リスクをふまえた上で、緩和されてきている。大学の部活・サークル活動も、緩和されてもいいのではないだろうか。 

    米谷さんは、2022年度は、これまでよりも活発な活動をやりたいと話していた。米谷さんたちは、これまではZoomを使っていたリモート制作会も、対面でできる機会を増やすことを考えている。対面での活動の機会が増えれば、部員同士の交流も増えるに違いない。そのほかにも、希望する部員で、人数を限定して、景色がいいところへのスケッチへ行ったり、美術館めぐりに行ったりもできないか構想しているという。2022年度も凌美会は精力的な活動を行うようだ。 

    記者から2人に凌美会に入部してよかったことについて聞くと、創作の楽しさとともに、画材の調達で助かるという話をしてくれた。入部して、部費を払えば、部室にある道具をいろいろとつかうことができるので、部室にあった画材を使用して作品をつくることもあるそうだ。 

    部の中には発達科学部の美術コースで学んでいる人もいて、最新の画材や、美術の知識に詳しく、作品をつくるうえで助かるアドバイスをもらえるという。画材は高く、一からすべての道具をそろえようと思うと、多額の初期費用がかかる。そういった初期投資を抑えることができるので、凌美会で、これまでやったことのない新しいことに挑戦するのもおすすめだ、と米谷さんと大木さんは話してくれた。 

    最後に記者から、凌美会について新入生に是非伝えたいことについて尋ねた。 

    大木さんからは、作品をつくることでなくても、芸術鑑賞に興味のある人、芸術に関わってみたい人も、ぜひ凌美会に来てほしい、ということが言われた。大木さんは凌美会での活動で、切り絵制作のほかに、作品鑑賞に重きを置いているという。大木さんは美術の歴史が好きで、文学部でも美術史を学んでいるという。「観る専の人とぜひ話をしてみたい」と大木さんは話していた。また、「作る人を手伝うのも楽しい」と大木さんは話す。展覧会の運営や、宣伝、新歓活動など、部を支える活動に、大木さんはやりがいを感じてきたようだ。 

    部長の米谷さんからは、「創作に関わることなら何でもできる自由さ」が凌美会の特徴だといわれた。コロナ下での2年余り、思うような活動はできなかったが、その分過去の活動にとらわれず、自由にできるという。米谷さんは、「新入生には新しい風を持ち込んでほしい」と言っていた。 

    美術が好きな人、興味のある人はぜひ、凌美会の新歓イベントに参加してはどうだろうか。 

 

2022年六甲祭の実現にむけた思い 
六甲祭実行委員会 

                                                                                              2022年3月20日

    新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけにして、神戸大学では2020年、2021年と2年つづけて六甲祭の対面での開催が中止に追いこまれている。私たち新聞会は、六甲祭の対面開催の中止が決定するたびに、当時の六甲祭実行委員会(以下、六実)の委員長から「現地(対面)開催を実現したかった」という悔しさと無念さのにじむ声を聞いてきた。六甲祭の対面での開催を期待する多くのサークルの思いを受けとめるとともに、六甲祭を実現するために六実に入部した100人を超えるスタッフの思いをも一身に背負って準備をしてきた六実委員長にとって、対面での六甲祭を実現できない悔しさはどれほど大きかったことだろう。今年こそは対面での六甲祭が実現されて欲しいと思う。 

    今回は、六実新委員長の星川さん(2回生)に、今年の六甲祭の実現にむけた現在の思いをうかがった。 

    星川さんによると、今年の六甲祭の開催方法について六実内でも話をしているらしいが、新型コロナウイルスによる感染状況がどうなるか先が見通しにくいこともあり、「対面とオンライン、両方の可能性を並行的に考えながら準備をすすめている」とのこと。新学期に入ってから、今年の六甲祭の開催方法などについて大学側とは本格的に話し合いをおこなっていく予定だという。 

    六甲祭実現にむけた今年の六実の活動理念は「intersection~今までとこれからの交差~」。この理念には「祭りは楽しくやるべき」という思いと「今までにないものをつくる」という思いを「交差」させるという意味が込められていると星川さんは語った。六甲祭をコロナ前と同じように開催することが難しいなか、自分たちの代で、今までとは違う・なおかつ誰もが楽しめる六甲祭をつくりあげていきたい、そんな星川さんたちの思いを感じた。もし2022年の六甲祭を対面で開催することができるならば、コロナ前の六甲祭と同じように楽しい学園祭となることは間違いないだろうし、同時にこれまでとはひと味違った、新鮮な喜びと感動を呼ぶものになるに違いないと思った。 

    とはいえ、新型コロナウイルスの感染の収束がなかなか見通せない現時点では、2022年の六甲祭が対面で開催できるという確証が得られているわけではない。展望をはっきり描くことが難しいなか、星川さんたち六実の幹部の間で「六甲祭の価値ってなんだろう」と話になるなど、自分たちの活動の意義をあらためて考える機会もあったという。「学祭は、あらかじめできあがったものがあるわけではなくて、誰かがつくらないといけないもの。それをつくるために六実に100人以上が集まって活動しているが、現状は、実際に開催できるかどうかわからないもののために毎週定期的にミーティングを開いて全員で話し合いをしている状況。モチベーションを保ちつづけるのは大変だと思うが、それでもミーティングに集まってくれるみんなに、委員長として申し訳ないという気持ちもわいてくる。展望がみえない現状については、とくに誰かに・何かにたいしてというわけではないけれども、腹が立つし、悔しい。自分が何に向かって走っているのか、自分でも分からなくなるときがある」-星川さんの言葉には、六実のスタッフを思う強い責任感と同時に、明確な目標を定められないまま進まなければならない現状にたいする苦悩がにじんでいた。 

    それでも、先輩たちからバトンを引き継いだ星川さんたちは、誰もが楽しめる六甲祭を、今までにないかたちで実現するために、今できる最大限の準備をおこなっている。本来なら学内外から多くの来場者を迎えて盛大に実現される六甲祭。神戸大学の秋の風物詩ともいえるこの一大イベントが、本2022年こそは実現されることを願うばかりだ。

―春の訪れを告げるコンサート― 

神戸大学マンドリンクラブ「Spring Concert 2022」開演 

                                                                                              2022年3月10日

    3月6日に、東リいたみホールにて、神戸大学マンドリンクラブによる「Spring Concert 2022」が開催された。

    神戸大学愛唱歌「商神」で幕を開けた演奏会第Ⅰ部の1曲目は「マンドリニストの生活」。配布されたプログラムの指揮者記には「マンドリンの軽やかなメロディーや、行進曲のリズムに合わせて全パートの音が重なるときの一体感が魅力的な曲です」と紹介されていた。行進曲のリズムによってなのだろうか、曲を聴いていると、風光明媚な場所を散歩している光景が頭に浮かんだ。マンドリン・オーケストラの低音パートが、背中を前へ前へと押し出すような迫力のある音を出し、高音パートの軽快な音が、うきうきするような気持ちにさせてくれた。この曲の作者、J.B.Kokはオランダの演奏家・作曲家だ。彼がこの曲で思い描いていたのは、ヨーロッパののどかな田舎町か、それとも歴史ある都市なのか、はたまた異国の観光地なのか、想像するだけで楽しくなってくる。

    2曲目は武藤理恵作曲「Paradiso」。冒頭のAndante(「歩くくらいの速さで」という意味の音楽用語)では、穏やかな音色に聴き入り、曲の中に心が溶け込んでしまうような思いになる。Allegro(「快活な」という意味で、速いテンポを指示する音楽用語)に入ると、曲に溶け込んでいた心が揺さぶられ、感動の波がくりかえし押し寄せてきた。透きとおった、印象的なメロディーが繰り返されるたびに、心が天高く舞い上がっていくようだった。ラストでは、マンドリン・オーケストラの一体となった音が聴く者の胸に迫り、最後に余韻を残してくれた。

    AndanteやAllegroといった音楽用語を駆使したプログラムの指揮者記からは、曲の魅力が具体的に伝わってきて、こうした曲の魅力を引き出すべく、練習を積み重ねてきたのだろうと想像できた。

    休憩をはさんで行われた第Ⅱ部は、「プロヴァンス風序曲」から始まった。プログラムの指揮者記には、「題名からこの曲が南フランスのプロヴァンス地方をイメージして作られたということがわかる」「7分程度の曲にもかかわらず、テンポ、曲調が8回も変化する聴いていて飽きない曲になっている」と、その特徴が紹介されていた。曲の変化に注目して聴いてみると、曲の印象が目まぐるしく変わっていくことに驚かされた。作曲者のA.Tournelは、季節や天候によって表情を変えるプロヴァンスの風景を表現したかったのだろうか。聴いていて楽しく、面白い曲だった。

    次の曲は丸本大悟作曲「茜」。指揮者記の曲目解説には、「この曲では同じ旋律がパートを変えて何度も繰り返されることが印象的だ。そうすることで次第に暮れていく空の様子が表現されているようだ」とある。マンドリンやマンドラといった高音の楽器のパートから、マンドセロ、クラシックギター、コントラバスといった低音の楽器のパートへと主旋律が変わることで、太陽の沈んでいく様子が伝わってきた。ラストの、マンドリン・オーケストラが一体となって盛り上がり、最後に音がフェードアウトしていくところでは、太陽が沈み切るか、沈み切らないかの美しい瞬間が切り取られていたように思えた。マンドリン・オーケストラのすべてのパートが活躍する、すばらしい演奏だった。

    プログラム最後の演奏はI.Culotta作曲の、組曲「ナポリの風景」だ。全4楽章で構成されていて、静かな熱気が伝わってくる1楽章、どっしりとした印象の2楽章、しめやかな美しさを感じた3楽章と、心に染み入るような、しみじみとするような曲が続いた。3楽章が終わると、間髪入れずに始まった4楽章は、一転して明るく、朗らかな雰囲気へと変わった。指揮者記で、「4楽章は子供がいたずらして、何かをひっくり返したかのような音から始まり、子供が駆け回るような軽快なメロディが続く楽しい曲だ」と解説されている。この駆け回っているようなメロディが、低音パートで奏でられると、高音のパートよりも体の大きい、年長の子どもが駆け回っているように思えて、とても賑やかな光景が想像できた。

    プログラムのすべての曲が演奏されると、会場から大きな拍手が送られた。拍手に応えて、多保孝一作曲「愛をこめて花束を」が披露された。マンドリン・オーケストラで奏でられたこの曲は、とても華やかで、音にやさしく包み込まれるような感じがした。演奏中に、照明によって、無数の小さな白い光が、会場中を照らし出す演出が行われた。会場中を飛び回る光は、舞い散る雪のようにも、花びらのようにも見えて、冬から春への移り変わりを感じさせた。幻想的な演出の中、「はるかな友に」が演奏され、コンサートは幕を閉じた。

    終演後、会場を出ると、冷たい風が吹いていたが、春が近づいていることも感じられた。コンサートによって明るい気持ちになれたからに違いない。

文総加盟団体 新歓への思い語る
混声合唱団アポロン「多くの新入生に活動の魅力をアピールしたい」 

                                                                                              2022年2月23日

    アポロン部長の松田さん(国際人間科学部3回生)によると、部員数は年々減り続けているらしく、現状は「かなりギリギリの人数で活動している状態」だという。特に男子部員が少なくなっており、女声パートと男声パートとのバランスを保つのが難しくなりつつあるらしい(混声合唱には女声のソプラノ・アルト、男声のテノール・バスという4つのパートがある)。松田さんは「男子の団員は一人一人の声量が大きいこともあり、人数が少なくてもいまのところ女声パートとの声量のバランスは保たれているが、このまま団員数が減りつづけるとどうなってしまうか心配。団内でも危機感がある」と語った。並々ならぬ切迫感が伝わってきた。
    春の新歓に向けては、どうしたら新入生が入部してくれるか部員同士で相談しながら、体験練習やミニコンサートなど、さまざまな企画を計画しているという。ミニコンサートでは、新入生に合唱の魅力を感じてもらうために、新入生にも馴染みがありそうな曲を選んで歌を披露することを計画しているらしい。松田さんは「新入生に良い歌が披露できるよう、団員みんなで日々練習に励んでいる。おととしは対面新歓が完全に禁止されてしまったし、『今年こそは』と意気込んで臨んだ昨年も対面の新歓活動が許可されたのは2週間程度で、すぐにまた制限がかかってしまった。結局ミニコンサートはできずとても残念だった。はじめから興味があって入部してくれる人もいるけれど、そういう人に限らず“なんとなくサークルに入りたい”と思っている人にも、ミニコンサートなどをつうじてアポロンの活動の魅力を伝えて、入部につなげたい」と今年の新歓にかける意気込みを語った。

    新歓祭の対面での開催については「ぜひそうなってくれると嬉しい。どの団体も対面での新歓はやりたいと思っているはず」と松田さんは語った。ミニコンサートのように、目の前でアポロンの団員によるすばらしい歌声を聴くという体験は、新入生にとって大きなインパクトとなるのは間違いない。歌声のすばらしさはもちろんのこと、先輩たちの合唱にかける情熱、自分たち新入生を歓迎してくれる温かい雰囲気など、対面でこそ感じることのできるものはとても多いはずだ。最初から合唱に興味があったわけではなくても、対面での新歓をつうじて「この先輩たちと一緒なら合唱をやってみたい」と思った新入生がアポロンに入部する、そういう光景がうみだされるならば、本当に喜ばしいことだ。今年こそは、対面での新歓が十全におこなわれることを願う。 

文総加盟団体 新歓への思い語る 

混声合唱団エルデ「多くの新入生と一緒に良い合唱をつくりたい」

                                                                                              2022年2月23日

    エルデ新部長の田渕さん(2回生)と前部長の静木さん(3回生)にお話を伺った。 

    田渕さんは「自分たち2回生の代は部員の数が少ないこともあり、20人くらいいた4回生が引退した今は部員がけっこう少なくなったなと感じている。合唱は人数が多い方が良いものがつくれるから、多くの新入生に入部して欲しい」と新歓に向けた意気込みを語った。エルデは入部時には合唱未経験だった部員が約8割におよび、田渕さん・静木さんも高校までは合唱とは別の活動をやっていたという。「それでも」と田渕さんはエルデの魅力を次のように話した。「最初はうまく歌えなくても、いろんな人と一緒にやっているうちに歌えるようになる。そういう感じで合唱をつくりあげるのが楽しい。だから、人数は多い方が良い」-多くの仲間と一から合唱をつくりあげる喜び、それはなにものにも代えがたい貴重な経験にちがいない。たくさんの新入生をエルデに迎え入れて、また仲間たちと共に一から楽しく合唱をつくりあげていきたい、田渕さんの言葉からはそんな思いが伝わってた。 

    今年の新歓に向けては「具体的な計画を早く立てたいけれど、感染状況がどうなるか分からないし、新歓についての大学からの情報もなかなか入ってこないので、方針が立てづらい」と田渕さんは困惑しながら語った。新歓に限らず、対面での活動がどれだけできるのかの情報が早めに示されないと、合宿等さまざまな活動計画を立てづらいのが悩みだという。静木さんは「自分が1回生だったときが、対面で十全に活動できた最後の年。田渕の代以降は対面で1年通して活動した経験が無い。経験していないことを後輩たちに伝えることもできないので、このままだと、これまで先輩たちから引き継がれてきたエルデのイベントの中で無くなってしまうものが出てくるかもしれない。早く活動の見通しがたって欲しい」と切実な思いを語った。 

    新歓祭の対面開催について、田渕さんは「私が1回生のときはオンライン新歓のみで、対面で先輩と話すこともなく入部したので、不安があった。やっぱり対面で先輩と話をしたほうが新入生も不安が少ないと思う。対面での新歓はやりたい。感染が拡大してしまうのも心配なので、検査キットを配るとか学生の感染対策を大学側もサポートしてくれたら、もっと安心して対面新歓もやれると思う」と現在の心境を語った。エルデをはじめ、すべてのサークルがこの春に多くの新入生を迎え入れることができるよう、新型コロナウイルスの感染が一刻も早く収束し、3年ぶりに新歓祭の対面での開催が実現されることを願うばかりだ。

KUBC新宣伝局長

「初心者にも積極的に入部してもらえるよう工夫したい」

                                                                                              2022年2月21日

     各サークル・部はいま、新歓にむけた準備を精力的に進めている。今回は、神戸大学放送委員会(KUBC)の新宣伝局長、高橋海愛さん(文学部2回生)にサークルの現状と新歓に向けた思いをうかがった。 
    高橋さんによると、KUBCの活動は現在、基本的にオンライン上でおこなっているという。KUBCにはアナウンス部、フリーペーパー部、制作部の三つの部局があるが、高橋さんの所属するアナウンス部も、練習は週1回オンラインでおこなわざるをえない。しかし、「アナウンス」「声劇」「朗読」の練習のうち、特に「声劇」は複数人による「かけ合い」のため、オンラインだとどうしても「間」ができてしまい、うまく練習できないという。また、制作部では年に数回「番組発表会」をおこなっているが、オンラインでの発表会だとミュージックビデオの制作を著作権に配慮しながらつくらなければならないので大変だという。高橋さんの話からは、オンラインで活動することによる苦労が伝わってきた。 
    新宣伝局長になっての抱負は、「違う学年同士の縦のつながりをもっとつくっていくこと」。オンラインでの活動が中心だと先輩と顔を合わせる機会がどうしても減ってしまうため、高橋さん自身も一度も顔を見ないまま引退してしまった先輩がいてとても残念だったという。また、現在入部している2回生は昨年の秋新歓で入った部員が多く、引退する3回生との接点があまりつくれなかったという。今年はそうしたことがないように、「先輩と後輩が積極的に交流できる新しい取り組みを考えていきたい」と高橋さんは意気込みを語ってくれた。新たな取り組みによって部内の交流がより活発になり、部員の絆が強くなることを願うばかりだ。 

    KUBCの現役部員は現在、1・2回生ともに10人ずつであり、人数的には「ちょうどいい」(高橋さん)という。しかし、現在の1回生は初心者が少ないらしく、「SNS中心の勧誘だと初心者の人はなかなか入りにくいのかなと思う」と高橋さん。「今年の新歓は、“SNS上での勧誘だから入部しにくい”という新入生が出ないようにしたいです」。そのために高橋さんは、初心者でも積極的に入部してもらえるような宣伝の工夫を考えたいと語ってくれた。 

    取材を通じて、SNS中心の活動を余儀なくされている中で、悩みながらもサークル活動の新たな形態をも模索しつつ前向きに活動に励む高橋さんのたくましさを感じ、取材した筆者自身鼓舞される思いがした。多くの新入生が入部し、KUBCの活動がさらに活発になることを願ってやまない。 

文総加盟団体 新歓への思い語る
ESS「ESSならではの雰囲気を味わってもらう新歓に」

                                                                                              2022年2月19日

    今回は、ESSの副部長・藤川さん(2回生)にお話を伺った。
    藤川さんは、「ESSならではの雰囲気を味わってもらい、気持ちよく帰ってもらえるような新歓にしたい」と今年の新歓にむけた意気込みを語った。
    昨年の新歓では、Zoomでの「おしゃべり会」をおこなった。ESSの部員が新入生とざっくばらんに話すように心がけたことで、すぐに彼らと打ち解けた関係をつくることができたという。藤川さんは、「おしゃべり会は、反響があり、けっこうな部員が入ってくれた」とその意義を語ってくれた。藤川さんたちESSは、もし今年もオンライン新歓が中心になれば、この昨年の成功を生かし、Zoomでの「おしゃべり会」をおこない多くの新入生を獲得するべく準備を進めている。
    同時に、藤川さんは、将来後輩だけで対面新歓をおこなうときに、後輩たちがその経験がないと「何もわからなくなってしまう」と危惧する意見が部内で出されたことを契機にして、コロナ・パンデミック以前は行われていた女子会やピクニックのように、メンバー同士がリアルに交流できる対面新歓の企画をESSとして計画していると語ってくれた。藤川さんは、「Zoomで入ったら、新入生は自分ひとりだけだったという他サークルの話を聞いた。また、Zoomに抵抗感がある人もいる。対面の方が気軽にこれるので、対面がいいですね」と、対面新歓の意欲を語った。
    多くの新入生がESSの雰囲気や魅力に惹かれて入部し、部活動がますます活発になることを願う。

文総加盟団体 新歓への思い語る

交響楽団「弦楽器の奏者が少ないので、新入生に多く入ってもらいたい」

                                                                                                  2022年2月18日

    今回は、交響楽団のチーフマネージャーの道端さん(2回生)と新歓マネージャーの千代延さん(2回生)にお話を伺った。
    道端さんは、「弦楽器の奏者が少ないので、新入生に多く入ってもらいたい。ツイッターやYoutubeなどSNSを活用したい」と、新歓への意気込みを語った。コロナ下でのオンラインを中心とした新歓では、以前より入部してくれる人数が減り、とりわけ弦楽器の奏者が不足しているという。以前は、1学年で40人くらい入ってくれていたそうだが、道端さんと千代延さんたち2回生の代は、30人となっている。このことは、演奏のクオリティにも関わってくる。道端さんによると、演奏会で披露される3曲のうち、他大学の交響楽団では、1人1曲を担当していることもあるそうだが、神戸大の交響楽団では、人数が少ないことによって1人3曲を担当しているという。そのことによって、1曲あたりにかける練習時間が減ることになる。昨年12月に2年ぶりとなる定期演奏会を成功させ、神戸大の交響楽団をさらなる高みにおしあげようとしている道端さんたちにとって、より多くの新入部員を獲得することは重要になっている。
    道端さんは、入部人数が減っていることについて、「初心者がYoutubeとかで演奏をみてすごいと思っても、楽器を演奏するのは、ハードルが高い。楽器と触れあう機会があれば、ハードルが下がってくる」と語った。また、千代延さんも「私は対面での新歓がなくて入部するのをためらった」と語った。オンライン中心の新歓では、新入生が楽器に触れたり、部の雰囲気を感じたりすることができないことがボトルネックになっている。
    道端さんは、「楽器に触れる機会をつくりたい。練習風景をみてもらいたい」と語り、千代延さんは、「4月に新歓コンサートをおこない、オーケストラの楽しさを伝えたい」と語った。対面での新歓がおこなわれ、交響楽団のすばらしい魅力にひかれた新入生が次々に入部してくれることを切に願う。

文化総部が要望書を大学に提出
対面での新歓祭の開催を求める

                                                                                                     2022年2月17日

    2/17に、文化総部は、対面での新歓祭の開催を求める要望書を大学に提出した。2/13におこなわれた文総総会において、要望書案の提案と採決がおこなわれ、賛成31、反対0、保留2の賛成多数で、可決された。この決議にもとづいて、要望書の提出がなされた。
要望書では、3年連続で対面での新歓祭が中止されれば、活動休止に陥る団体が続出しかねない厳しい現状に文総加盟団体がおかれていることを訴えている。
    また、文総の委員長は、「文総の風通しの悪さ」を改善するために、文総改革を実行している。この改革の趣旨にのっとっておこなわれた今回の要望書提出は、文総加盟団体の切実な声を大学側に伝える「下から上へのボトムアップ」として意義のある取り組みだといえる。文総加盟団体は、より一層結束を強めた。対面新歓祭が3年ぶりに開催されることを願うばかりだ。
 
 要望書の内容は、以下の通り。
 

2022年新歓祭の対面開催に関する要望書

                                                                                               文化総部

    現在、新型コロナウイルスのオミクロン株による感染拡大がつづいており、いつ収束するかは予断を許さない状況です。課外活動をおこなうにあたって、部員・サークル員の中から感染者を出さないために気を配らなければならない厳しい状況がつづいています。
    しかしながら、「まん延防止等重点措置」など社会的に感染拡大を防ぐための対策がとられるなか、感染症の専門家からは、早ければ3月頃には感染拡大が収束する可能性もあることが指摘されてもいます。新たな変異株の広がりも言われており、予断を許さない状況に変わりはありませんが、新歓祭の開催時期である3月末時点で、感染拡大が収束している可能性も残されているのではないかと考えられます。
    現状では感染拡大がつづいており、社会的に緊張を強いられる状況ではありますが、数ヶ月先を見据えるならば感染が収束している可能性も残されているなか、私たち文化総部は、今後の感染の収束状況や社会状況に鑑みて実施可能と判断できるようなばあいには、対面での新歓祭の開催を認めていただけるよう要望いたします。
    私たち文化総部をはじめ、神戸大学のすべての課外活動団体にとって、新歓祭は日頃の活動の成果を新入生に披露してサークル活動の魅力を伝え、ともに活動を担う仲間として迎えいれるための死活的に重要なとりくみです。しかしながら、2020年新歓から2年つづけて対面での新歓祭が中止に追い込まれたことにより、文化総部に加盟する多くの団体が、新入部員が思うように獲得できず活動に多大な支障が生じています。存続の危機に立たされている団体は決して少なくなく、このままでは活動に必要な部員数が確保できず活動休止に追い込まれる団体が続出しかねません。また、もし今年も対面での新歓祭が中止されてしまうならば、対面の新歓祭を経験した世代のほとんどが引退・卒業してしまうことにより、伝統ある神戸大学の新歓祭の継承がますます困難になってしまいます。
    実際、いくつかのサークルから、以下のような声があがっています。

・  現有部員では人数が少ないので、引退した先輩たちにも活動に入ってもらってなんとか活動が維持できている状況
・  今年新入部員が思うように獲得できなければ、休部せざるをえない。それは避けたい
・  オンラインのみの新歓では、サークルの雰囲気を肌で感じることができないので新入生は不安が残る。対面で先輩たちと直接ふれあうことで、新入生も部の雰囲気を感じられ、安心して入部できる
・  自分が1回生だった2020年度はオンラインのみの新歓だったので、サークルの活動のイメージがわかなかった。2回生になった昨年の春に対面で先輩たちに活動の成果を披露してもらったり、実際に活動を体験させてもらったりする機会があり、そこでサークルの魅力を感じ入部を決断した。対面での新歓祭は重要
・  部員数は減り続けており、現状は活動を継続するのにギリギリの状態。今年こそは対面での新歓を十全に実現したいという思いで準備を進めている。多くの新入生に自分たちの活動の魅力を知ってもらいたい
 
    私たち文化総部加盟団体の中には、活動の性格上、対面でなければサークルの魅力を伝えることが難しい団体が多くあります。もし3年連続で対面での新歓祭が中止されてしまうならば、その悪影響は計りしれません。
    つきましては、対面新歓祭の開催について、以下のように柔軟な対応をご検討いただけるよう要望いたします。
 
①  新歓祭の開催時期(3月29、30日)に新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着いている       ばあいには、新歓祭を対面で開催すること
②  新歓祭の時期を迎えても感染拡大が収束せず対面新歓祭の実現が困難なばあいには、          感染が収束した時期にあらためて対面の新歓祭を開催すること
 
    以上です。何卒、よろしくお願いいたします。

 クラシックギター部 第47回定期演奏会 YouTubeで配信中

                                                                                                        2022年2月14日

    12月11日に、神戸大学クラシックギター部が第47回定期演奏会を神戸芸術センターで開催した。その時の演奏の様子が、クラシックギター部の公式YouTubeチャンネルで公開されている。記者も動画で、クラシックギター部の演奏に耳を傾けた。

 ライトで照らされたステージ上で、黒のスーツでぴしっと決めたクラシックギター部の部員たちが、これまで腕を磨いてきた曲を、次々と披露した。演奏会で披露された曲は、どれも違った個性を持っていて、曲の魅力が存分に引き出されていた。奏者たちの真剣な表情からも、クラシックギター部の部員たちがこの演奏会にかける思いと、これまで尽くしてきた努力が伝わってきた。

    演奏会のはじめを飾ったのは、ジャズの定番「Take The A Train」。自由奔放で、気ままさが感じられる一曲で、聞いていて気持ちがはずんできた。

    次に披露されたのは、アニメ「ドメスティックな彼女」の主題歌「カワキヲアメク」のギターアレンジ曲だ。心の叫びのような、ドラマチックなメロディーが印象的だった。感情の揺れ動きがクラシックギターの音色から伝わり、心に突き刺さった。

    3曲目の「光の街~In my Hometown」は、「キラキラ」という言葉が似あうような、きれいな曲だった。神大キャンパスから見える神戸の夜景を思い浮かべながら聞くと、この曲も、神戸の街も、さらに好きになりそうだ。

    アニメ「僕のヒーローアカデミア」の主題歌として有名な「ピースサイン」は、クラシックギターの軽やかな音色にクールさを感じた。クールな音色の奥底に隠された情熱も伝わってくるようで、オリジナル曲の熱血さも感じられた。

   「California Breeze」は、ギターの弦をたたくような奏法が特徴的で、その音は、一歩一歩力強く歩いていく足音のように聞こえた。アメリカ西海岸の乾いた風を受けながら、何事にも動じずに歩みを進めていく旅人の姿が頭に浮かんできた。

  「カルメン組曲 1.Aragonaise」は、ギターの側面を指先でたたいてリズムを刻む音が印象的な、面白い曲だ。心地よいリズムを刻むクラシックギターの音色は、優雅さと情熱が感じられた。

  「忘れじの言の葉」は、切ないメロディーが胸にぐっと迫ってくるような曲だった。聞い ていて物悲しい気持ちになってくるが、その沈む気持ちをそっと受け止めてくれるような優しさが感じられた。

  「Carnaval」(カルナバル)は活気とともに、どこか妖しい魅力が感じられた。タイトルにあるように、異国のカーニバルに迷い込んだような気がした。

    演奏会のラストを飾る曲は「Asian Dream Song」で、部員9人による大合奏で贈られた。ロマンティックな音色にほれぼれする一曲だった。この曲は、作曲家久石譲が1998年の長野パラリンピックのテーマソングとして作曲した曲であり、クラシックギターの音色がエギゾチックな雰囲気を演出していた。

    定期演奏会で披露されたこの9曲は、実は11月のミニコンサートでも披露されていた。そこからの約1か月間で練習を重ね、演奏にさらに磨きをかけてきたに違いない。コンサートホールの雰囲気も、黒のスーツでそろえられた部員たちの姿も、クラシックギター部の2021年の活動の集大成にふさわしい、格調高いものだった。定期演奏会の様子は、クラシックギター部のYouTubeチャンネルで公開中なので、ミニコンサートを観たという方も、まだ観ていない方も、ぜひご覧になっていただきたい 

「対面新歓祭は貴重な機会」 

クラシックギター部新歓担当インタビュー 

                                                                                                  2022年2月14日

    クラシックギター部の佐藤さん(2回生、新歓・広報・会計担当)が取材に答えてくれた。

    クラシックギター部は、今年度は1,2回生部員が少なく、4回生や院生に演奏会に参加してもらっているという。今の3回生も、今年度で引退なのだが、来年度もクラシックギター部の活動に参加して、部の活動を支えてくれるそうだ。2回生の佐藤さんは、「今は3,4回生の先輩に頼っています」という。演奏会でも、演奏者が増えれば、1つのパートを2人以上の演奏者がついて演奏でき、音の厚みをふやして、華やかな曲にすることもできる。そのため、佐藤さんは少しでも多くの新入部員を獲得したいと考えている。クラシックギター部が多くの部員を獲得して、来年度も活躍することを願うばかりである。

クラシックギター部の2022年度新歓の取り組みとして、2022新歓ツイッターのアカウントを作成し、準備を進めているという。佐藤さんは「音楽未経験者でも入部しやすいと思えるような発信をしたい」と考えていることを話してくれた。インスタグラムでも何かできないか検討中であるという。

    そのほかの活動としては、佐藤さんは新入生を招いた演奏会と、演奏体験会を開催したいと考えている。新入生にもギターに触れてもらい、音階からやさしく教えたいという。佐藤さんは「僕も大学に入ったらギターを始めたいと思って、クラシックギター部に入部したんです。自分の経験では、新入生がギターのできるサークルを自分で見つけるというのは大変だった。そういう新入生とつながることができればいいなと思います。何とか対面にもっていって、入部につなげたいですよね」と話していた。音楽経験者はもちろん、ギターに興味を持っている新入生との接点をどのように作るか、頭を悩ませていた。

記者から、「新歓祭の対面開催についてはどう思いますか?」と尋ねると、佐藤さんは「新入生とつながれる貴重な機会だと思います」と答えた。オンライン授業が中心となり、新入生がキャンパスに来る機会も限られている。私たち部活・サークルの先輩にとっては、対面新歓祭は大きなチャンスとなる。一方で、新入生にとっても、対面新歓祭は、部活・サークルを知ることができる貴重な機会だ。佐藤さんの話にあったように、部活・サークルに入りたいと思っている新入生は、コロナ下で、部活・サークルを見つけることも難しい。サークルの雰囲気などはさらにつかみにくいだろう。新歓祭で、先輩の話や具体的な活動を直接聞いたり体験できたりすれば、雰囲気も伝わりやすいのではないだろうか。

    対面新歓祭が、私たち学生にとって、貴重な機会となることは間違いないだろう。感染対策などをとり、リスクを小さくしたうえで、新歓祭を対面で実現することはできないのだろうか。

先輩たちが伝えてくれたマンドリンの魅力を、伝えたい 

マンドリンクラブ新歓担当インタビュー 

                                                                                                           2022年2月14日

    新型コロナウイルスがこの世にあらわれて、2年が過ぎた。私たち神大生は、コロナ下での、3度目の春を迎えようとしている。2022年度の始まりを前にして、神大の部活・サークルに所属する学生にとって気がかりなのは、今年の春の新歓をどのように行うかである。対面での新歓祭は、2020年度から、2年連続で中止となり、来年度の新歓祭も、どのようなかたちで行われるかは未定である。部活・サークル独自の新歓活動も、キャンパス内での対面での活動が制限される中で、思うような成果が挙げられない部活・サークルが続出している。中には、新入部員の獲得がうまくいかないことによって、存続の危機に直面している部すら出てきているほど、問題は深刻だ。私たち新聞会は、神戸大学の文化総部に加盟する団体を中心に、新歓をめぐる活動について取材し、その現状と課題について伝えたい。

    神戸大学マンドリンクラブの長井さん(2回生、広報・内部マネージャー)と、奥田さん(2回生、広報・旅マネージャー)が取材に答えてくれた。

   2022年度の新歓に向けての目標や意気込みについて尋ねると、次のようなマンドリンクラブの事情について話してくれた。マンドリンクラブには6つのパートがあり、パートによっては現2回生、1回生が少ないところもある。マンドリンクラブとしては少しでも多くの新入生に入部してもらいたいのだという。マンドリンクラブは60人を超える部員を擁しており、私もマンドリンクラブの演奏会に観客として参加したこともあったが、大人数でのマンドリン・オーケストラの音の厚みは、迫力が感じられた。部の規模を維持するだけでも、毎年多くの新入生を勧誘しなければならないことは想像できる。長井さんと奥田さんは、現下のコロナ感染拡大で、先が読めない中で、新歓の時期となる4月に部活・サークル活動が制限されることを心配していた。制限があることも念頭において、5月以降も新歓を続けることも考えているという。部活・サークル活動をとりまく環境が、社会的な状況や、大学による規制次第で大きく変わるという条件の下での新歓が困難であることと、この不利な状況でも新入部員を獲得するために、部員・サークル員たちが例年以上に努力と苦労を重ねようとしていることがわかった。

    マンドリンクラブの新歓では、具体的にどのような活動を行おうとしているのか2人に質問すると、2021年度に先輩たちが行っていた「見学会」を受け継ぎたいと話してくれた。見学会では、先輩たちが、ジブリの曲や、J-POPなどの新入生が親しみやすい曲を数曲演奏し、聞いてもらったうえで、楽器を新入生に触ってもらい、演奏を体験してもらうというものだ。先輩たちは「密」にならないような工夫を行っていて、長井さんと奥田さんは安心して参加することができたという。見学会について紹介してくれる2人は、生き生きと、楽しそうに語っていて、見学会がいい思い出だったことが伝わってきた。先輩たちが演奏する姿を間近で見て、実際に楽器を触る体験は、鮮烈だったのだろう。長井さんと奥田さんは、対面での見学会がマンドリンクラブ入部の決め手となった。それだけに、対面での見学会を行いたいという思いがあるのだという。

    普段私たちが体験したことのない世界に出会い、入ることができるのも、部活・サークルの魅力である。その出会いのきっかけとなる新歓で、対面での活動が制限されると、その魅力を伝える機会も減り、どうやって伝えるかも難しくなる。対面新歓の機会が確保され、新入生が様々な部・サークルに出会う機会が保証されることを切に願う。

文総加盟団体  新歓への思い語る

ブルーグラス新部長

「新歓で多くの新入生に入ってもらいたい」

                                                                  2022年2月13日

    大学当局による課外活動規制が続く中、各サークル・部は新歓に向けた準備を進めている。今回、ブルーグラスサークルを取材した。
 

    ブルーグラスは現在、1・2回生の現役部員が例年に比べて少なく、特にバンドを組むのに欠かせないウッドベース担当の部員がいないため、新歓ではぜひ多くの新入生に入ってほしいと、新部長の山田晋吉さん(経済学部2回生)はその切実な思いを話してくれた。今のところ対面での新歓祭が予定されているので、部としては初めてステージでのバンド演奏をおこなうことを考えているという。「ブルーグラスは名前がそんなに知られていないサークルなので、SNS上での勧誘だけだと新入生が集まりません。生で演奏を聴いてもらって1回生にぜひブルーグラスの魅力を知ってもらいたいです。」新歓に向けた意気込みを、山田さんは熱く語ってくれた。 

    ブルーグラスでは、「新歓に向けて部内での交流をもっと活発にしたい」(山田さん)というコンセプトのもと、楽器ごとの「ワークショップ」をひらいて先輩から楽器についていろいろ教えてもらう機会をつくったり、1か月に1回「ジャム」(バンドを新たに組んでおこなう即興演奏会)をおこなうなど、サークル員同士が交流できる機会を積極的につくっていく予定だという。課外活動上の様々な制約のもとでサークル員同士の交流が満足にできない中で、部員同士の親睦を深め、サークルの紐帯を強くして新歓にのぞみ、新入生にブルーグラスの魅力を存分に感じてもらいたいという強い思いが、山田さんの話からヒシヒシと伝わってきた。筆者もぜひ応援したいと思った。 

    ブルーグラスは3月20日に西宮のライブハウス「フラッパーハウス」でライブを予定している。「ブルーグラスは聞いていて楽しくなるし、コーラスもハモればすごくきれい。入学が決まった新入生にもぜひ来てほしいです」と山田さん。カントリーミュージックの生演奏を聴ける貴重な機会。興味のある方はぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。 


文総加盟団体  新歓への思い語る

                                                                  2022年2月11日

    文化総部に加盟する団体は、厳しい課外活動規制のもとで、2年間もの長きにわたって、対面での新歓を十全にできていない。このことによって、入部する人数が減少し、中には、存続すら危ぶまれる団体もでているほどだ。今年の春の新歓こそは、対面でできるようになってほしいところだ。私たち新聞会は、文総加盟団体に今年の新歓にかける思いをお聞きした。 
 

将棋部「新入生が入ってくれないと、団体戦に出られない」 

    将棋部の主将の南野さんは、部員の減少が続いている部の現状に危機感を抱いている。南野さんは、「新入生が入ってくれないと、団体戦に出られない」と語った。現在、学生会館の和室に来て練習している部員は、5人になっている。南野さんは、「ぎりぎり団体という感じですね」と語った。 
    このことは、昨年のオンライン新歓が苦戦したことが大きく関係している。南野さんは、「(昨年の新歓で新入生が)全然入らなかった。入ってくれたのは、例年より少ない5人だった。(そのうち)今も来てくれているのは、2人だけ」と語った。オンラインだと、将棋が好きな経験者は連絡してきてくれるそうだが、初心者にとっては、敷居が高いようだ。しかも、将棋部の活動をオンラインから対面に切り替えたことによって、部活に来なくなった人もいるようだ。学部によっては、大学の授業がほとんどオンラインでおこなわれている中で、大学に来ない部員にとっては、対面での部活動への参加はなかなか難しいようだ。オンラインの弊害が影を落としている。 
    南野さんは、「経験者だけでなく将棋部にちょっと興味を持った人を呼び込みたい」と、今年の新歓にむけての意気込みを語った。そして、南野さんは、「オンラインでもいいんやとなっちゃうと、対面での部活に来てくれない。なので、新歓も対面がいい」と、対面新歓ができるようになってほしいと語る。 
    南野さんへの取材を通じて、オンライン新歓の困難さが浮かびあがった。今年の春こそは、対面新歓がおこなわれ、将棋部に新入生がたくさん入ることを願ってやまない。 


2年ぶりの定期演奏会、苦難をのりこえ感動を届ける
神戸大学交響楽団   第71回定期演奏会

                                                                          2021年12月27日

 
    12月18日、兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホールにおいて、神戸大学交響楽団が第71回定期演奏会を開催した。実に2年ぶりに演奏会が開催された。チケットはすぐに売り切れ予約が埋まる盛況ぶりで、会場には多くの観客が足を運んだ。また、12月25日~31日の期間で、動画がアーカイブ配信されている。筆者は、アーカイブ配信で視聴した。演奏会の様子をお届けしたい。 
    まず、演奏されたのが、スヴェンセン作曲の祝典ポロネーズだ。学生指揮者が会場に入ると大きな拍手が巻きおこり、団員たちの表情が引き締まる。学生指揮者がタクトを振ると、会場全体を揺さぶるようなオーケストラサウンドが響きわたる。団員たちが2年ぶりとなる演奏会開催の喜びを込め、思いを爆発させたように感じ、私は一気に引き込まれた。指揮者の情熱あふれる指揮と、コンサートミストレス(第1バイオリンの女性首席奏者)のダイナミックな演奏姿が特に目をひく。そして、団員たちは、指揮者のタクトに合わせて、3拍子のワルツ形式で美しい音を奏でていく。優雅で迫力満点の音は、宮殿の舞踏会でステップを踏みながら踊る人々の姿が目に浮かんでくるようだった。 
    続いて、チャイコフスキーの幻想序曲「ロメオとジュリエット」だ。この曲は、シェイクスピアの悲劇を題材にしている。ここからの演奏は、プロの指揮者である小田野宏之氏がタクトをとった。まず、ファゴットとクラリネットで始まり、直後にチェロとコントラバスが続く。豪華絢爛な祝典ポロネーズとはうって変わって、この曲の始まりは、ゆったりとした低音が響いた。そして、「ロメオとジュリエット」の物語が進行していくように、どんどん曲調が変わっていく。巧みな演奏によって、不安に駆りたてられたり、激しい感情があふれ出たりしている登場人物の心情が見事に表現されていた。弦楽器だけでなく管楽器の見せ場も多い。筆者は、オーボエののびやかな演奏が印象に残った。精密で円熟した小田野氏の指揮によって、学生の合奏がより輝きをましているように筆者は感じた。 
    最後に、チャイコフスキーの交響曲第6番「悲愴」が演奏された。小田野氏の指揮のもと、団員たちが一致結束してチャイコフスキーのこの大作を見事に演奏する姿は、まさに圧巻である。 
    まず第1楽章は、美しくも郷愁を感じさせるメロディが弦楽器によって奏でられる。その直後にフルートとクラリネットののびやかな演奏があり、まろやかさを感じさせる。この弦楽器と管楽器のバランスが絶妙である。そして突如として、美しいメロディが、弦楽器と管楽器の激しい音が交互にからみ合うものへと変化していく。団員たちは、複雑な構成をなす第1楽章を見事に演奏した。 
    第2楽章では、団員たちは、美しさを強調したメロディを丹念に演奏する。この演奏によって、筆者は、踊りたくなるような気持ちに駆られた。 
    第3楽章では、力強く疾走するような旋律が何度も繰り返され、いろいろな楽器が次々と主旋律を演奏する。ピッコロの音色が聞こえると、力強さだけでなく可愛らしさも感じる。そして、全合奏になり、大迫力のクライマックスに達する。団員たちの力強い演奏に、筆者は、体の内側から力がみなぎってくるように感じた。 
    第3楽章のクライマックスをむかえた後に、悲しく切ない第4楽章(=終楽章)が展開される。団員たちは、チャイコフスキーの「悲愴」特有のこの展開を見事に演奏していく。バイオリンによって悲しみの感情が呼び起こされ、コントラバスの重低音の余韻によってその悲しみをより深いものにいざなっていく。その直後に、まるで歌うように滑らかに演奏するファゴットの悲しげな音色は格別だ。最後に、タムタム(中国に起源をもつ銅鑼)がまるで死を表すかのように弱く鳴らされる。その後、だんだんと音がしぼみ、はかなく消えて、曲がおわる。 
    曲がおわると、会場から万雷の拍手が巻きおこり、いつまでも拍手が鳴り響いた。現状を鑑みると大声をだすことはできないが、会場にいた観客は、こころの中で「ブラボー!」と叫んでいたに違いない。アーカイブ配信で視聴していた筆者も、感動がこみあげてきて、胸が熱くなった。 
    団員たちが2年ぶりとなる演奏会を成功させるまでの道のりは、容易ではなかっただろう。演奏会が何度も中止に追い込まれたり、練習場所である学生会館が十全に使えなかったりした苦労もあっただろう。それでも、団員たちは、こうした苦難をのりこえ、演奏会を大成功させたのだ。 
    アーカイブ配信は、12月31日までおこなわれている。神戸大学交響楽団の団員たちが努力してつくりあげた素晴らしい演奏を聴いてみてはいかがだろうか。また、演奏会のパンフレットには、2022年5月に次回公演を予定していることが告知されている。次回の演奏会にも目が離せない。 

 マンドリン・オーケストラの美しい音色 響きわたる 
―神戸大学マンドリンクラブ 第66回定期演奏会― 

                                                                                                                     2021年12月26日                                  

    12月18日に、神戸市中央区の「神戸芸術センター 芸術劇場」にて、神戸大学マンドリンクラブによる第66回定期演奏会が開演した。私も会場で、マンドリンクラブの生演奏を楽しんだ。 

    演奏会に来た観客には、マンドリンクラブからパンフレットが配布された。パンフレットには演奏会のプログラムや、演奏曲解説、パートの紹介などが掲載されていて、マンドリンの世界の一端に触れることができた。とくに、演奏会のⅠ部、Ⅱ部、Ⅲ部でそれぞれ指揮をする3人が書いた演奏曲解説は、指揮者たちの演奏曲に対する愛情があふれていて、とても読みごたえがあった。こういったパンフレットを手に入れることができるのも、有観客開催の良さだ。開演を待っている間に読むと、演奏がますます楽しみになった。 

 開演直前に、マンドリンクラブの部員たちがステージに登場し、椅子に座り、演奏に備えた。50人以上の部員たちが、ステージに整然と並び、楽器を構えている姿は、とても壮観だった。神戸大学愛唱歌「商神」のマンドリン・オーケストラによる演奏で、演奏会は開演した。 

   Ⅰ部は、アリゴ・カペレッティ作曲の「マンドリン賛歌 フローラ」と、武藤理恵作曲「月に舞う」の2曲である。1曲目の「マンドリン賛歌 フローラ」では、高く澄みわたったマンドリンの音色が印象的だった。マンドリンは「2本の弦を素早く反復して引くトレモロ奏法」が特徴の一つだそうだが、その面白さがわかりやすく伝わった。マンドリンより一回り大きな楽器のマンドラや、それよりも大きなマンドセロが加わると、低音の味わいが出てきて、さらにクラシックギターやベースパートのコントラバスも参加して、すべてのパートがハーモニーを奏でると、深みのある美しい音色となった。マンドリン・オーケストラの魅力がよくわかり、この後の演奏にわくわくしてくる最初の1曲だった。 

    2曲目の「月に舞う」は、スリリングな速いリズムで、ラストまで駆け抜けていくような終盤が印象的な曲だった。パンフレットの演奏曲解説によると、この曲は、地球の人間と禁断の恋に落ちた月の妖精の舞をイメージした曲で、最後に妖精は、月の神から、「掟に背いた者として、永遠に年を取ることなく、月の世界で舞い続けることを命じられる」のだという。身体が引き裂けても構わないとばかりに、激しい舞を踊る妖精の姿が頭に浮かんでくるような、イメージがかきたてられる曲だった。 

    Ⅱ部では、エリック・サティ作曲「ジムノペディ第1番」と、久保田孝作曲「舞踊風組曲第2番」が披露された。「ジムノペディ第1番」は、穏やかなメロディーが、マンドリンの伸びやかな音色で奏でられ、私も音に聴き入った。聞いていると、だんだん時間の経過を忘れてしまうような曲だった。 

   「舞踊風組曲第2番」は、情熱的な導入部から、哀愁漂うメロディーへ、続けて激しいリズムへと次々と変化していく曲だった。舞踊風組曲の名の通り、ダンスの難しいステップを踏むような激しいリズムの中盤は特に印象的で、ハラハラドキドキする独特の緊張感があり、心が揺さぶられた。 

    Ⅲ部では、アマデオ・アマデイ作曲「海の組曲」と、鈴木静一作曲「細川ガラシャ」が演奏された。「海の組曲」はいずれの曲も、海の精霊や海の神をモチーフにしており、物語性があった。第1楽章「ナイアードのセレナータ」と、第2楽章「オンディーナの踊り」は、穏やかな水の精霊ナイアードと、やんちゃさや茶目っ気のある妖精オンディーナの性格の違いが伝わってきたような気がして面白かった。第3楽章「シレーナの唄」では、穏やかで優しい音色に包まれた。セイレーンは、その歌で船を惑わせるが、その歌を聞いた船乗りは、幸せな気分で魅入られていくのだろうと思える曲だった。第4楽章「トリトーネのフーガ」は、パンフレットの演奏曲解説によると、「怒濤の中、船は舵が取れず危機に瀕し、トリトンが怒濤を沈めようと駆け回っている情景」が描かれているという。解説の通り、船を沈めないよう一生懸命になっている船乗りたちや、慌てて駆け回っているトリトンの姿が思い浮かんできた。船乗りやトリトンの必死さに、どこかコミカルなところが音に込められていて、愉快な気持ちになれる曲だった。 

   「細川ガラシャ」は、壮大なドラマを感じさせる曲だった。マンドリン・オーケストラのすべてのパートの楽器が力強く弾かれ、躍動していた冒頭は、ものすごい迫力があった。心の平穏を感じさせる、ゆったりとしたメロディーや、戦乱の世を示す激しいメロディー。コントラバスの低音がつくりだす不穏な気配など、細川ガラシャの波乱に満ちた生涯が表現されていた。クラシックギターとマンドリンのそれぞれのソロパートが掛け合いを行う場面は、ガラシャと誰かの会話だったのだろう。運命に翻弄されながらも、それに毅然と立ち向かう姿が思い浮かんだ。 

    プログラムのすべての曲が終了すると、会場から大きな拍手が送られ、拍手は次第にアンコールを求める手拍子へと変わった。アンコールに応えて、山下達郎の「クリスマス・イブ」がマンドリン・オーケストラで演奏された。一足早いマンドリンクラブからのクリスマスプレゼントに耳を傾けた。最後は「はるかな友に」が、マンドリンクラブの部員たちの合唱で披露された。荘厳な響きの歌声を聞いていると、演奏会が終わってしまうことへの名残惜しさも感じられた。 

    マンドリンの魅力が、存分に伝わってきた演奏会だった。 

ブルーグラス

定期演奏会を盛大に実現

                                                                                                                     2021年12月25日                                  

    12月18日、神戸大学ブルーグラスサークルの冬の定期演奏会が、三宮の生田文化会館でおこなわれた。様々なバンドが織りなす演奏に客席も一体となって大いに盛り上がった。 

    11時50分、会館2階の大ホールに用意された約70人分の客席が埋まる中、演奏会が始まった。最初に演奏したのは「まーちゃんバンド」。最近入部したばかりの2回生部員「まーちゃん」を中心としたバンドで、6人がとても息の合った演奏を披露してくれた。特に「ブルーリッジ」という曲はとても陽気な曲で、聴いているこちらも元気をもらえる素敵な曲だった。マンドリンのソロパートでは、「まーちゃん」が短い期間の中で一生懸命練習した成果を披露してくれ、たくみな指使いに会場から大きな拍手が送られた。 

    続いて登場したバンド「PARTY PEOPLE」は、3回生の女子4人組のバンドで、演奏者4人の息の合った歌声がとても印象的だった。特に「Take me on」という曲は、リズミカルなサビを4人がハモりながら重層的なメロディーを生み出し、筆者は曲の世界に一気にひきこまれた。 

    続くバンド「アジフライ」は、ギターでボーカルの「たいしょー」が英語の曲を圧倒的な歌唱力で歌いあげ、筆者もおもわず息をのんだ。特に「I’ll stay around」という曲は、5人の演奏が「たいしょー」の歌声をひきたてていて、聴いていてとても心地よかった。
    その他にも、5人組バンド「アルマゲドン」の演奏では、今年入部した1回生2人がフィドル(ヴァイオリン)とマンドリンを担い、日頃の練習で培ったスピード感のある巧みな指さばきを披露して会場を盛り上げた。また、3回生バンド「ポカリスエット」は、「走れマキバオー」の「ネタ曲」を披露してくれ、バンジョーの「ちょび」が馬のかぶりものをして演奏し、マンドリンの「タニコ」が競馬の実況中継さながらの歌い出しから曲に入るサプライズで会場を大いに沸かせた。さらに、今年度で卒業する大学院2回生の7人組バンド「約M2バンド」は、練習時間があまりとれない中での演奏ということであったが、ギター、マンドリン、ウッドベース、フィドル、バンジョー、ドブロの合奏が調和し、ベテランの風格を感じさせる演奏だった。その中でも「オールド・ホーム・プレイス」という曲は、聴くものを郷愁にいざなう曲で、ブルーグラスサークルでのこの間の思い出をふり返っているような、演奏者皆の思いがつまった曲だと筆者は感じた。 

    今回の演奏会には様々な個性あふれるバンドが総勢14組登場し、陽気さと郷愁漂うカントリーミュージックの醍醐味と、練習を重ねて洗練されたソロパートや美しい歌声を存分に楽しむことができた。まさにブルーグラスの魅力を堪能できる演奏会だった。この日、会場にはOB・OGも多数かけつけ、すばらしい演奏におしみない拍手を送り演奏会を盛り上げていた。筆者も初めてカントリーミュージックを生で聴き、その迫力と楽しさに心癒された。 

    渉外担当の方によると、昨年の冬はコロナの影響で寒い屋外での開催を余儀なくされたが、今年は屋内で開催できとてもよかったと語ってくれた。この日配られたパンフレットには、「異例ばかりの状況で困難もありましたが活動を続けることができました。協力してくださったサークル員の皆さんやそのほか見守って下さる皆さんに感謝申し上げます」という部長さんの挨拶が掲載されている。コロナ下と大学による課外活動規制という困難な状況でも、ブルーグラスのサークル員たちが互いに協力し合い、冬の定期演奏会を大盛況のもと実現できたことは本当によかったと筆者は思った。ブルーグラスサークルの今後のさらなる発展を願ってやまない。 

    なお、この日の演奏会の映像は、今後ブルーグラスのHPで公開されるとのこと。少しでも興味を持った方は、ぜひ一度ご覧になってはいかがだろうか。 

 

ESSドラマセクション

活動規制下の困難をのりこえ冬季公演を実現

                                                                                                                     2021年12月21日                                  

    12月15日(水)、ESSドラマセクションによる冬季公演が神戸市灘区の劇場「イカロスの森」にて上演された。平日にもかかわらず会場には多くの人がつめかけ、ほぼ満席に。私は英語劇を生で観るのは初めてだったが、役者のみなさんの巧みな英語と迫真の演技に魅了された。 

    今回上演されたのは〝Groundhog Day〟(邦題『恋はデジャブ』)。物語の舞台はアメリカ東部のペンシルベニア州。主人公は高慢で自己中心的なTVの気象予報士フィル。彼はTV局の同僚と一緒に、田舎町で開催されるGroundhog Day(「聖燭節」と呼ばれる2月2日のキリスト教の祭日。グラウンドホッグというリスの一種を使って春の訪れを予想する行事がおこなわれる)の取材に訪れる。だが彼は、この取材にたいして「地味だ」「マンネリ化している」と不平ばかりでまったく身が入らない。 

    それでもなんとか取材を済ませた彼はさっさと町を出ようとするが、吹雪が町を直撃し、足止めを喰ってしまう。仕方なくホテルに引き返してもう一泊することを余儀なくされた彼が、翌朝目を覚ましてみると、2月3日になっているはずの日付は2月2日のまま。昨日終わったはずのGroundhog Dayのお祭がまた行われている。翌日も、さらにその翌日も……。無限に繰り返す2月2日Groundhog Dayに閉じこめられた彼は、そこからなんとか脱出しようと懸命にあがくが、すべてうまくいかない。どうすれば彼に“明日”は来るのか……。主人公フィルがさまざまな体験を経て、かけがえのない今・この瞬間を大切に生きることのすばらしさに気付いていくプロセスが、コミカルなラブコメ調で描かれていてとても面白かった。 

    なにより私が惹かれたのは、個性的なキャラクターを、すべて英語で、見事に演じた役者一人一人の熱意あふれる演技だった。高慢・自暴自棄・誠実、様々な表情で格好悪いところも格好良いところも見せる主人公・フィル(崔一渓さん)と、知的で優しく、かつ凛とした姿を見せるヒロイン・リタ(髙嶋紗愛さん)。2人の間で繰り広げられるドタバタ劇では、何度も失敗を繰り返して頭を抱えるフィルの姿に親近感を覚えるとともに、2人がソファに座って会話をするラストシーンは、フィルの詩的な台詞がロマンチックな雰囲気を一層引き立たせており、感動的だった。 

    主役の2人もさることながら、彼らの脇を固める個性的な人物たちも印象的であった。特に印象に残ったのは、取材に訪れた町でフィルが口説き落とす女性・ナンシー(山田彩未さん)だった。真っ赤なドレスと、わざと髪をなびかせて自己を強くアピールするような態度がうまくはまっていて、個性派ぞろいのキャラクターのなかでも一際存在感を放っているように感じた。 

    役者の緻密な演技にも惹きつけられた。フィルが滞在するホテルで働く高齢の使用人・ランカスター(根兵香帆さん)が、フィルに朝の挨拶をする際に声がうまく出なくて咳払いをする場面は、あまりに自然だったので最初は演技なのかどうか分からなかったが、フィルが2月2日を繰り返すシーンでまったく同じ場面が再現されて、やっと演技だと確信することができた。細かい演技だが、これとしゃがれ声とがあいまって、ランカスターがかなり高齢の使用人であることが伝わってきた。ひいては、そのような使用人を雇っている田舎のホテルの雰囲気がうまく表現されているように感じた。 

    その他にも印象的なシーンが多々あるが、ここでは書ききれない。役者の情熱的かつ繊細な演技を間近で観て感動し、役者と観客とが一体となってつくりだす劇場ならではの熱気を肌で感じながら、約1時間15分の公演を最初から最後まで存分に楽しませてもらった。場面が次々と展開していくなか、役者と照明・音響といったスタッフとの連携も息があっており、綿密な打ち合わせにもとづいて何度もリハーサルがおこなわれたであろうことが推察された。役者のセリフに的確にあわせるかたちで舞台後方のスクリーンに日本語の字幕が表示されていたのも、私のように英語だけでは話についていけない人間にとって非常にありがたかった。 

    上演終了後には、今回の公演を機に引退する3回生の役者が舞台の最前列に並んで挨拶をおこなった。「私たちは、コロナ下で昨年から2回の公演中止に追いこまれましたが、こうして本日の公演を実現することができたのは、みなさんのご協力のおかげです。ありがとうございました」という感謝の気持ちが凝縮された言葉に、会場からは大きな拍手が沸きおこった。ESSドラマセクションは、昨年にひきつづき今年5月に予定していた春の公演の中止を余儀なくされた。大学による「コロナ感染対策」を理由とした課外活動規制が長引くなか、冬季公演に向けた練習・準備も相当大変だったに違いない。数々の困難をのりこえて冬季公演を実現したESSドラマセクションのみなさんに敬意を表したい。そして来年こそは、春の公演も無事に実現されることを願う。次回作にも大いに注目したい。 

活動の成果、高らかに歌いあげる 
―神戸大学混声合唱団アポロン 第59回定期演奏会 開演― 

                                                                                                                                  2021年12月17日                                  

    12月12日、伊丹アイフォニックホールにて、神戸大学混声合唱団アポロンによる、第59回定期演奏会が開かれた。今年度のアポロンとして、最初で最後の、貴重な発表の機会だ。私も演奏会に行き、合唱を堪能した。 

  定員約500人のホールに、演奏を楽しみにしたお客さんが続々と集まってきた。ホールの1階席は、座席後方に向かって急な傾斜がついていて、ステージに立つ人が間近に見える工夫がなされていた。私は、間もなく始まる演奏への期待に胸を膨らませた。開演時間となり、アポロン団員による神戸大学愛唱歌「商神」が歌われ、演奏会の幕が開けた。 

    演奏会は3つのステージで構成されていた。1stステージは、さくらももこの詩による無伴奏混声合唱曲集「ぜんぶ ここに」から6曲が披露された。「ちびまる子ちゃん」の作者として有名なさくらももこが詩に込めたメッセージが、アポロンの団員たちの歌声に乗って、胸の中まで届いてくるように思った。詩に込められた「日常では気付かない大切なこと」をかみしめながら、音楽を楽しむ心地よい時間を過ごすことができた。 

    2ndステージは、Vytautas Miškinisの作品から、宗教曲4曲が演奏された。アポロンが配布したパンフレットで紹介された、ミシュキニスがその曲で表現したかった情景や思い、曲の特徴や見どころをヒントに、普段聞きなじみのない外国の宗教曲を楽しんだ。全曲つうじて「ドラマチック」という言葉がぴったりで、聞いていると気持ちが盛り上がってくるものばかりだった。アポロンの団員たちのエネルギー溢れる合唱によって、ミシュキニスが表現したかった世界が、聞いている私の心に、色彩豊かに描き出された。 

 指揮者の山本啓之先生と、ピアニストの内藤典子先生を招いて行われた3rdステージの混声合唱組曲「ティオの夜の旅」は圧巻だった。全編を通じて海を感じさせるこの曲は、聞く者の感情を強く揺さぶる、エキサイティングなものだった。 

    1曲目の「祝福」は、光の降り注ぐような印象の曲で、この曲で描かれる世界のスケールの大きさを予感させるものだった。2曲目の「海神」では、嵐のような勢いで曲が進行し、歌詞の一節ごとに情景が目まぐるしく移り変わり、聞いていてくらくらしてくるような思いがした。3曲目の「環礁」は、聞いていて不安や恐怖がわき上がってきて、音に身をまかせていると、暗い海の底にゆっくりと沈んでいくような心地になった。不安や恐怖というと、マイナスの感情を表す言葉ではあるが、そのような感情の底に、どこかうっとりとするような気持ちもあり、不思議な体験であった。4曲目の「ローラ・ビーチ」は一転して、とてもおおらかでゆったりとした印象を持つ曲だった。歌を聞いていると、美しい海岸の光景が頭に浮かんできた。5曲目は、組曲の名にもなっている「ティオの夜の旅」だ。コミカルな響きから始まるこの曲は、とても難解で不思議な歌詞で、聞いていておかしみを感じた。奇妙な歌詞を最後は駆け抜けるように歌われて、曲が終わった後も余韻が残り、組曲すべてをもう一度聞きたいと思えた。 

    山本先生の迫力ある指揮と、内藤先生のピアノと、山本先生の指揮に応えるアポロンの団員たちの歌声によって、すばらしい演奏となっていた。 

    会場からの鳴りやまない拍手に応えて、「よかったなあ」という曲が披露された。自然への素直な感謝の思いを告げる歌を聞くと、さわやかな思いでいっぱいとなった。アンコールに応えて奏でられた曲は、聞いているとリラックスできるような曲だった。 

最後に、今年度でアポロンを卒団する団員が主役となって、曲集「2つの理由」より「私が歌う理由(わけ)」が披露された。1本の木、1人の人間といった、さまざまなもののために歌うことの喜びが伝わってくる歌に、アポロンの団員たちの想いが込められているように思った。苦しい中でも、団員同士で切磋琢磨し、喜びの瞬間もあっただろう。これまでの活動の成果が凝縮された演奏会は、聞いていた私たちを感動させてくれた。 

長引く課外活動規制に苦しむ文総加盟団体 第二弾⑥ 
将棋部「1日3時間の練習時間では、部員が集まらない」 

                                                                        2021年11月26日

    社会的には、イベントなどの行動規制の緩和が進んでいるが、神戸大の課外活動の制限は、依然として厳しい状態が続いている。大きな問題になっているのが、対面での活動時間の少なさだ。今回は、将棋部の方に取材した。
    将棋部の主将・西さんは、困っていることとして、課外活動の1日3時間までの時間制限によって対面での練習が少なくなっていることを挙げた。「1日3時間の練習時間では、部員が集まらない。部員が集まらないと対面での練習が中止になることもある」と語った。コロナ・パンデミック以前は、学生会館の和室を5~6時間借りて、部員の都合のいい時間に和室に来て対局をしていたそうだが、1日3時間では、予定が合わず来られない場合があるという。このことは、将棋部にとって大きなマイナスだ。西さんは、「(オンラインよりも)対面の方がいい」と繰り返し強調する。西さんは、対面での対局の重要性について、「オンラインだと相手の顔もわからないが、対面だと相手の表情とかを読んだりするなど駆け引きがあって楽しい」「(自分が)将棋を指している人以外の人からもアドバイスをもらえる」と語った。
    対面での活動ができないことは、「部員の気力の低下」にもつながり、その結果、部員の人数も減っているという。以前は40~50人いたそうだが、今は30人にまで減っているそうだ。西さんは、「(将棋が)強い人がいる4年生の代が卒部されたらどうなるのか。来年は、多くの部員が入ってくれないと困る」と、不安を語った。西さんは、先輩たちの努力によって関西の強豪にまで育てあげられてきた神戸大将棋部の伝統を、なんとか守ろうとしている。なるべく早く規制が緩和され、将棋部がより活発に活動できる日がくることを願ってやまない。
    取材の最後に、西さんは、「部員のみんなは優しいので、遠慮せずに将棋部に入ってきてほしい」と笑顔で語った。興味のある方は、気軽に将棋部に連絡してみてはいかがだろうか。


 

『文化の秋』に神大の部・サークル文化花開く 

クラシックギター部    漫画研究会 

                                                                                                                                  2021年11月24日                                  

   

    大学当局による、コロナ感染対策を理由とした課外活動規制がかけられている下でも、複数の部活・サークルが、感染対策を行ったうえで、普段の活動の成果を発表する場をつくり、神大の部活・サークル文化を花開かせた。ここでは、11月13,14日に行われた文総加盟団体によるイベントについて紹介したい。 

 

クラシックギター部    ミニコンサートを学生会館で開催 

    11月13日に、神戸大学学生会館の第三集会室において、クラシックギター部のミニコンサートが開催された。コンサートは1部と2部に分かれており、記者はもちろん、その両方を楽しませてもらった。1部と2部でそれぞれ5曲ずつ、合計で10曲が披露された。ギターのための音楽はもちろん、ジャズやポップス、アニソンやオペラ、ゲームの主題歌など、クラシックギターの演奏用に編曲された、さまざまなジャンルの音楽が演奏された。それぞれの曲に違った雰囲気があり、約1時間のコンサートの間、飽きることなく、最後まで楽しむことができた。そして今回のコンサートは、対面開催である。ミニコンサートということもあり、十分なソーシャルディスタンスをとったうえでも、クラシックギター部の部員たちがギターを弾く姿を間近で見ることができた。ギターを弾く姿と、ギターの生の音を同時に楽しむことができて、対面のコンサートを見ることができてよかったと思わされた。 

   コンサートで披露された曲の一部をここで紹介したい。 

    1曲目は「カワキヲアメク」。アニメの主題歌をギターの曲にアレンジしたものだ。サビで迫力のあるギターの響きと、疾走感のあるメロディーが印象的な曲だ。聞いていて気持ちが揺さぶられる感じがした。2曲目は「光の街」。光が零れ落ちてくるような、キラキラした響きが印象的だ。このような曲が似合う街とはどれほどきれいな街なのだろうと想像するような曲だった。3曲目は「Asian Dream Song」。9人のギターによる合奏で、コンサートの最後に披露された。うっとりとするようなメロディーで、エンディングを飾るのにふさわしい、素敵な演奏だった。 

このコンサートでの演奏は、クラシックギター部のYouTubeチャンネルでいつでも視聴することができる。是非ご覧になってはいかがだろうか。 

 

漫画研究会   毎年恒例のパネル展をレンタルギャラリーで開催 

     11月13日と14日には、漫画研究会が、例年六甲祭で行っているパネル展を、レンタルギャラリーで開催した。「夜」というテーマで、漫画研究会の部員たちが作った作品が、数多く展示されていた。ギャラリーでの開催ということで、パネル展は、美術館の企画展のような、本格的な雰囲気が漂っていた。ある一つのテーマに沿って部員たちがそれぞれ作成した「テーマパネル」が展示されていたが、夜のパーティー、夜空の星々のひみつ、夜の冒険、人狼ゲーム、夜のダンス、夜に飲みたくなるコーヒーなどなど、「夜」という言葉から漫画研究会の部員たちがわかせたイメージは自由で、個性的であり、作品を1つ見るごとに、はっとさせられるような意外性があった。部員の皆さんが作品に込めた思いのゆえだろうか、一つの絵の背景を想像すればするほど、絵の世界の中にどっぷりはまり込むことができて、見ていると時間を忘れてしまうほどだった。作者の世界観に触れたような気がして、とても楽しい時間が過ごせた。 

    会場には多くの来客があり、にぎやかだった。漫画研究会の方の話によると、OB、OGの方が多く来られたということだ。漫画研究会の先輩が、後輩に対して、絵の良いところやアドバイスをしていたりもしていて、漫画研究会の和気あいあいとした雰囲気まで伝わってきた。 

    作品と会場の雰囲気もとても良いパネル展だった。 

長引く課外活動規制に苦しむ文総加盟団体  第二弾⑤ 

                                                                                                                                  2021年11月24日                                  

   今回は、邦楽部と天文研究会の方にお話を伺った。 

 

邦楽部

「いろいろな部が和室を使っているので、争奪戦になる」 

    邦楽部の部員たちは、今年の12月に行われる定期演奏会にむけて練習しているが、練習時間が確保しづらいという問題に直面している。部長の向井さんは、「いろいろな部が(学生会館の)和室を使っているので、争奪戦になる」と、学生会館が十全に利用できない苦しさを語った。しかも、「コロナ対策」として和室の利用は15人までと決められていて、邦楽部の部員全員が入ることができない。そのため、3時間の練習時間を前半と後半にわけて、人を入れ替えて練習しているという。課外活動が1日3時間までと制限されているが、その貴重な3時間すら練習できないのは、深刻な問題だ。 

大学による1日3時間の制限は、早急に緩和されるべきだ。大学側の姿勢について、向井さんは、「(大学側は)部活にたいして厳しい。授業いがいのことにも目をむけて欲しい」と語った。 

    邦楽部は、12月の定期演奏会を六甲台講堂でおこなおうとしている。六甲台講堂での演奏会は、有観客での開催は認められていない。このことについて、向井さんは、「(観客の有無で)気持ちの入りようが違う。拍手とかしてもらうと達成感もある」と、有観客での開催ができないことに悔しさをにじませて語った。代わりに、YoutubeかZoomで演奏会の様子を配信することを考えているという。向井さんは、演奏会について「私たち3回生が卒部しても、後輩たちが邦楽部を継承できるようにしたい。定期演奏会ってこんなんだよと(後輩たちに)伝えたい」と、意気込みを語った。課外活動規制による厳しい現状が続いているが、輝かしい邦楽部の伝統を後輩に伝え、困難をのりこえようとする向井さんの思いが伝わってきた。12月の定期演奏会が成功することを願ってやまない。 

 

  天文研究会

「3時間の課外活動時間に部室の使用が含まれていない」 

    続いて、天文研究会の会長の野間さんに部の現状についてお話を伺った。困っていることをお聞きすると、野間さんは、「3時間の課外活動時間に部室の使用が含まれていない」と語った。天体観測用の望遠鏡を置いている部室の使用が禁止されている影響は小さくないようだ。文化総部に加盟する多くのサークルにとって、部室は、部活動をおこなう場所としてかなり重要だ。大学による部室の使用禁止が緩和され、文総加盟団体がより活発に活動ができるようになることを願ってやまない。 

    天文研究会は、オンラインでのプラネタリウム上映や、月1回の天体観測をおこなっているという。11月19日には、摩耶山の掬星台で部分月食の観測会をおこなった。部分月食を撮影した美しい写真が、月食が終わった直後の満月の写真とともにtwitterで公開されている。月という身近な存在の魅力を存分にひきだした写真をぜひご覧になってはいかがだろうか。 

長引く課外活動規制に苦しむ文総加盟団体  第二弾④

マンドリンクラブ 

「練習時間規制、他大生の参加禁止、財政問題…多くの問題に直面」 

                                                                                                                                  2021年11月22日                                  

    今回は、マンドリンクラブの久保田さんと秋定さんから、活動上で困っていることと、財政的に困っていることについてお話を伺った。 

    練習時間が十分に確保できない状況は今も続いており、秋定さんは「コロナ以前の半分しか練習ができていない」と嘆いていた。マンドリンクラブでは、コロナを理由とした活動規制が行われる以前には、1日5時間の練習や、休日の「1日練習」といった、精力的な活動を行っていた。 

   現在は1週間で、水曜日と土曜日の週2回、合計で6時間の練習時間しか確保できていない。練習場所の不足と、1日3時間の活動時間規制があるからだ。久保田さんは「水・土以外の時間を確保するのが大変。(学生会館の廊下で練習ができないため、)自由に練習する時間が取れない。水・土以外でも練習がしたい」と、切実な願いを訴えていた。秋定さんも、「練習時間が長くなることで感染リスクが上がるということには根拠があるのか。(1日3時間の時間制限には)納得できない」と言っていた。大学には、こうした学生の現状に耳を傾け、感染を防止したうえでできる最大限の活動とは何かを探ることが求められているのではないだろうか。 

    練習時間の不足は、定期演奏会にも影響している。練習時間は減っているが、充実した演奏会を実現するためには、曲数を減らすわけにはいかない。久保田さんは一曲あたりの練習時間が少なくなっていることに頭を悩ませていた。これはマンドリンクラブの努力だけでは解決できない問題だ。 

    他大生の参加が禁止されていることも、マンドリンクラブにとっては深刻な問題だ。マンドリンクラブでは、演奏の要である指揮者を他大生部員が担っていた。しかし、大学当局は、感染対策を理由として、他大生の参加を禁止しているため、新しく指揮者を選ぶ必要があったという。指揮者という重要な役目をすぐに決めることもできず、「1ヵ月相談して決めた。大変だった」ということだ。他大生の参加禁止措置が長引いていることについて、久保田さんは、「他大生はいつ参加できるのか。緊急事態宣言とまん延防止措置が解除されているのにだめなのかと思う」と、社会的には行動規制が一定程度緩和されている一方で、大学による他大生の参加禁止が続いていることに疑問を投げかけていた。 

    今回の取材では、久保田さんと秋定さんから、財政的に困っている問題についても話を聞かせてもらった。久保田さんからは、「(楽器の故障が重なり、)今年は修理が多かった。楽器を1台修理するために、3万円の費用がかかるので、予算が飛んでいった」という事情を話してくれた。楽器の修理といった、活動するうえで必要な出費はどうしてもかかってしまう。それにもかかわらず、今年は収入が減少しているという。マンドリンクラブでは演奏会のために、部員からお金を集めているのだが、「部員が減った分、収入も減っている」(秋定さん)というのだ。久保田さんによると、今年の新入部員は例年よりちょっと少ないくらいの人数だったが、昨年度の新入部員が「全然入らなかった」というのだ。部費などが収入の大きな柱となっている部にとっては、新入部員の減少は死活問題だ。昨年度の4月は、緊急事態宣言と、それに伴う部活・サークルの活動規制によって、新歓活動はまったくと言っていいほどできなかった。その影響がいまだに尾を引いていることに、マンドリンクラブを含めた多くの文総加盟団体が直面している問題の深刻さを感じた。 

    さまざまな困難に直面しながらも、マンドリンクラブは12月18日に、定期演奏会の開催を予定している。演奏会に参加するためには、事前登録が必要なので、詳しくはマンドリンクラブのツイッターを見てほしい。久保田さんは、「少ない練習時間で、いろいろと頑張ってきた。有観客での開催にこぎつけられそうなので、頑張りたい」と、演奏会に向けた意気込みを語ってくれた。ぜひ多くの人に、マンドリンクラブの演奏を聴いてもらいたい。 

長引く課外活動規制の一日も早い緩和を求める声

児童文学研究会「どの団体も早く学内で十分活動できるようになってほしい」

                                                                                                                                            2021年11月22日                                  

    長引く課外活動規制によって自らが所属する団体の活動が制限されているのに加え、他団体が苦しい状況に追いこまれていることに心を痛め、早期の活動規制緩和を求める声があがっている。今回は、児童文学研究会会長の岡本楓さん(文学部3回生)にお話を聞いた。 

    岡本さんによると、児童文学研究会の現在の活動は学生会館の集会室を借りて週1回おこなっているという。コロナ前は部室(六甲台第1キャンパスのグラウンド東側にある部室棟の部屋)に部員たちが好きなときに集まって活動していたが、いまだ部室での活動が大学から禁止されているため、やむなく学館の部屋を借りて活動せざるをえない。日頃の活動の集大成として作成する機関誌「すぎかえる」は、部員たちの多様な作品を収録した毎号100ページを超える大作だが、この冊子を作るための紙や小道具類を部室から学館まで持ち運ぶのも手間がかかる。「早く部室が使えるようになってほしい」と岡本さんは語る。苦労して作った機関誌「すぎかえる」も、現在の活動規制下では手渡しで多くの学生に配布して読んでもらう機会がつくれないため、自分たちが創った作品の手応えを感じづらいのも悩みだという。 

    自分たちの活動が不便になっているというのもあるが、岡本さんはそれ以上に、活動規制下で苦しい状況に追いこまれている他団体のためにも、部室や教室を使用しての活動が解禁されてほしいと訴える。現在、大学から部室、教室を使っての活動が禁止されているため、学内で活動できる場所を求めて学館の部屋の予約を申請する団体が増えている。そのため、同じ日時・同じ部屋を申請する団体が複数出て競合してしまい、やむなく抽選で使用できる団体を決定するのだが、抽選に外れた団体は、学外の有料施設を借りて活動するか、あるいは活動そのものを諦めるかという厳しい選択をしなければならない。このような状況に心を痛めている岡本さんは、「児童文学研究会は部員数が少ないため、コロナ禍の状況であっても感染対策をしっかりすれば比較的安全に部室で活動しやすい。部室さえ使えるようになれば、自分たちは学館の集会室を借りなくて済む。自分たちのような団体から学館の集会室を使わなくて済むようになれば、比較的規模の大きな団体が学館の集会室を借りやすくなり、活動場所の確保で困ることもなくなるはず」「外の会場を借りて活動している団体はお金がかかって大変だと思う。学内の教室や部室が使えれば本来は支出しなくても済むお金。学外の会場に移動せずに済めば、活動時間だってより多く確保できる。早くどの団体も学内の教室や部室を使って十分活動できるようになってほしい」と語った。岡本さんの言葉には、課外活動というかけがえのない経験の機会を制限されていることへのやるせない思いと、そのような苦しい状況下でもがんばって活動している他団体の姿に共感し、一緒に現状をのりこえたいという気持ちが込められているのを感じた。 

    児童文学研究会は、今年の六甲祭にオンラインで参加。「ふろっこうさい」(児童文学研究会による六甲祭出展企画の名称)ではzoomを11月13日(土)の18時から11月14日(日)の21時までつないで、参加者とともに機関誌「すぎかえる」に収録されている部員たちの作品の合評会や即席での文章づくりなど、創造性豊かなミーティングをおこなった。岡本さんによれば、現役部員とOB・OGを中心にして「ふろっこうさい」を大いに楽しむことができたという。ただ、本来なら対面の六甲祭に出展し、「すぎかえる」を来場した方々に配布して、自分たちの作品を多くの人に知ってもらいたかったはずだ。自分たちが手作りした機関誌を多くの人に手にとって読んでもらい、感想を言ってもらえるという体験は、なにものにも代えがたい貴重なものだろう。児童文学研究会をはじめ、すべての課外活動団体が学内でのびのびと活動できるようになる日が一刻も早くおとずれることを願う。 

KUBC、King of Stageを盛大に実現 

                                                                                                                                  2021年11月21日                                  

    11月13日(土)と14日(日)、KUBC(神戸大学放送委員会)は、六甲祭の代替企画としてオンライン上でKing of Stageを開催した。昨年に引き続く試みで、部員たちの創意工夫した様々な企画が楽しめた。 

    筆者は13日(土)の配信を生視聴した。まずは「KoS RADIO」。初めてタッグを組んだという3回生部員2人が、神大・周辺のおすすめスポットやKing of Stageの見どころ、コロナが終息した後にどこに行きたいかなどをアットホームな雰囲気で語り合った。「私のお気に入り」のコーナーでは、六甲台にある社会科学系図書館がきれいでとても心地いい場所であることや、阪急六甲駅近くのケーキ屋「遊菓」の手作りケーキがとてもおいしいことなど、聴いているこちらもぜひ行ってみたくなるようなトークがくりひろげられた。コロナ後についてのトークコーナー「そのときには」では、「とりあえず皆に対面で会いたい」と二人が意気投合していたことがとても印象的だった。筆者も同感だ。 

    続いての企画は、「リアクションクイズ」。部員4人が画面に登場し、誰が1人だけわさび入りのおにぎりを食べているかや足つぼマットをふみながら話しているかを視聴者にあててもらう視聴者参加型の企画だ。みな顔に出さない演技派ぞろいでなかなか当てるのが難しかったが、企画が工夫されていておもしろかった。 

    さらに、「朗読」と「声劇」の企画では、オリジナル台本に基づく物語が発表され、一つ一つの話が想像力をかけたてられ聴く者を惹きつけた。筆者は「おじさんと僕」という作品が印象に残った。公園で瀕死の状態だった「僕」を拾ってくれたおじさんが大切な人を亡くして悲しんでいる姿を見て、「飛びっきりの美しい花」を咲かせることでおじさんを励まそうとする「僕」とおじさんとの交流が眼前に浮かんできて、哀しく切ない思いがじーんと湧いてきた。 

    また、KUBC内の製作部のメンバーたちがこの日のために創意工夫してつくりあげた作品を発表した「番組発表会」では、見ごたえのある動画や思わずゾッとする物語などが次々と展開され、一つ一つの作品の世界観にひきこまれた。筆者が特に印象に残ったのは、「イルカーの冒険」という動画作品だ。イルカが水中と地上を冒険する様を巧みなカメラワークで追いかけスピード感を演出するとともに、製作物もバスのけむりを綿で再現するなど随所に工夫がほどこされていて圧巻だった。 

    その他にも、出演した3人のうち誰がウルフかをあてる「ワードウルフ」や、殺人事件の犯人をあてる「マーダーミステリー」、一問一答のクイズ大会など、視聴者が楽しめる企画が盛りだくさんだった。「マーダーミステリー」では、田舎の無人駅での殺人事件という設定の臨場感を出すために、実際の駅舎の写真などが背景写真として所々でちりばめられ、ミステリー感の出る悲しそうなBGMを流すなど、事件のあらましとともに作品制作者たちの工夫の跡が感じられた。 

    2日間を通じて実現されたオンラインKing of Stage。どの企画も見応えがあり、作成したKUBC部員たちの様々な困難や苦労もかいま見え、筆者は心が揺さぶられた。また、総合司会の方が冒頭、「対面で実現できないのは残念」と言われていたように、彼らはKing of Stageが昨年同様オンライン開催になったことへの悔しさもあったに違いない。来年はぜひとも対面でおこなわれることを願ってやまない。 

    なお、King of Stageの様子は、KUBCのツイッターやHPからアーカイブを見ることができる。見逃した方はぜひご覧になってはいかがだろうか。 

長引く課外活動規制に苦しむ文総加盟団体  第二弾③

クラシックギター部 「現在も活動場所と時間の確保に苦労」 

                                                                                                                                  2021年11月20 日                                  

    コロナを理由とした課外活動規制が1年半以上という長期間にわたって続く中で、多くの文総加盟団体が悩み、苦心しながら活動を続けている。前回の記事に引き続き、文総加盟団体の、秋以降の活動の現状について取材した。 
    今年の夏の取材に引き続き、クラシックギター部部長の久保下さんにお話を伺った。前回の取材では、久保下さんは練習場所と練習時間の確保に苦労していることを話してくれたが、いまもその問題は解決していないという。クラシックギター部は現在、部室での練習が禁じられており、学生会館の集会室を借りて練習している。学生会館の利用は抽選制なので、希望する日時に部屋を借りることができるとは限らない。クラシックギター部は、10月中の月曜日がすべて抽選に落ちてしまった。このことはクラシックギター部の部員たちにとっては予想外のことだったようだ。なぜなら今年4~7月の活動が可能だった期間で、一番抽選に当たらなかった曜日は、金曜日だったからだ。月曜日の予定を開けていた部員も多く、練習の調整が難しくて困ったと久保下さんは話してくれた。「部室を4人とかの人数制限をしたうえで使えたらうれしい」というのが久保下さんの望みだ。活動のための場所を必要としている団体の数に対して、大学が使用を許可している活動場所の数が足りていない現状が浮き彫りになっている。 

    久保下さんは、練習のほかにも、新入部員の獲得にも悩んでいるという。クラシックギター部は春の新歓活動にも懸命に取り組み、久保下さんも「手ごたえはあった」と感じていたのだが、途中で退部した人もおり、今年は新入部員がめっきり減ってしまったのだという。クラシックギターの音楽は、複数のパートに分かれて重奏を行う音楽が多い。久保下さんは、このまま部員が減少すると、演奏できない曲も出てくるのではないかという不安も語っていた。クラシックギター部は、秋の新歓にも力を入れて取り組むことにしたという。コロナ下での大学側による活動規制の影響が大きいことは間違いない。 

    困難な中で、クラシックギター部は、11月13日のミニコンサートを開催し、12月には定期演奏会も予定している。演奏会は活動の成果を発揮する場になるとともに、参加した人にクラシックギター部に興味を持ってもらう貴重な機会だ。ぜひ多くの人にクラシックギター部の音楽に触れてもらいたい。コロナの感染拡大が収まってきており、社会的にもイベントへの規制が緩和されている中で、私たち学生もこうした活動の成果を発表する場をつくりだす機会も増えてきた。それらのイベントを最高のものに仕上げるためにも、すべての文総加盟団体が十分な活動時間を確保できることが今後ますます重要になってくる。 

初のハイブリット方式での六甲祭

神大文化を新たにソウゾウ

                                                                                                      2021年11月19日

    11月13日、14日の両日、オンラインと一部対面のハイブリットで六甲祭2021~ソウゾウしよう、新たな祭りを~がおこなわれた。35団体の参加のもと、多彩な企画がWEBを通して発信され、多くの視聴者を魅了した。(一部を除き、ひきつづき11月30日まで六甲祭2021公式ホームページ上で参加団体の企画を視聴できる)
 

ハイブリッド方式のお笑いライブ、生配信の企画も

    六甲祭初日、お笑いライブが対面で行われた。澄み渡る秋空の下、六甲台講堂前には、開場前から神大生数十名が列をつくった。密を避けるようにグループごとに受付が行われるなど、六甲祭実行委員会による感染対策は万全だ。キャンパス現地での企画開催に、参加者だけでなく、黄色いジャンパー姿の六実のメンバーもみんな晴れやかな表情をしている。こうして「スーパーマラドーナ」と「吉田たち」の2組の芸人によるパフォーマンス(当日生配信もされた)で六甲祭は幕を開けた。
    六甲祭の魅力のひとつである音楽系サークルのパフォーマンス。今年は、軽音Rockがスタジオ246からのLIVE配信をおこなった。全バンドのTOPをつとめたのはこれが入部後初のLIVEとなる1回生たちのバンドだ。初めてとは思えない伸びやかな歌声と息のあった演奏をくりひろげる彼らのパフォーマンスにひきこまれた。先輩バンドも負けていない。洋邦問わずどのバンドもLIVEでのパフォーマンスを楽しんでいることが伝わってきた。音響・カメラワークもよく、ROCKの魅力を十分に堪能できた。
    放送委員会も昨年につづき、King of stageをオンラインで生配信した(別掲記事)。
    また、2日目には神大生ユーチューバー・パーカーさんの公演が生配信された。(20日までアーカイブで自由に視聴できる)
 

魅力あふれる各サークル・団体の発表

    動画やWEBで参加した団体の企画もどれも見ごたえ・聞きごたえ十分だ。
    ブルーグラスサークルは厳選された演奏動画が視聴できた。配信された7曲はカントリーミュージックの良さを感じさせてくれる優れた演奏ばかり。とりわけ西部劇を思わせる小屋を模したスタジオでの演奏は雰囲気バツグンだ。どの曲も軽快な合奏と美しいハーモニーが心地よかった。
    軽音楽部JAZZは18本の動画が自由に視聴できる構成になっている。どの動画も秀逸だが、筆者は、とりわけ1本目のBIGバンドKOBE Mussoc Jazz Orchestra(通称マソック) 2020の演奏が圧巻だった。JAZZ初心者でも、その魅力を存分に味わうことが出来る。
    混声合唱団アポロンは、六甲祭用に収録された5曲が配信されている。透き通る女声と力強い男声。それぞれの魅力が堪能できる構成になっている。なかでも、アポロンメンバー全員で歌った無伴奏曲「ぜんぶ」はコロナ下での合唱団員のさまざまな思いが込められているように感じられとても揺さぶられた。
    クラシックギター部は、サマーコンサートの音源をアップしている(別掲記事)。
    児童文学研究会は、彼らの魅力がたっぷりつまったホームページを見ることができる。最新の機関誌「すぎかえる」第255号六甲祭号は、部員の集大成で、読み応え十分。恒例の「ふろっこうさい」は、すぎかえるの中の作品の合評会や即席での文章づくりなど創造性豊かなミーティング。今年はZOOMを13日晩から翌日にかけてつないでおこなわれた。 
    漫画研究会は、学外のギャラリーでのパネル展を開催する(別掲記事)とともに、Web上で作品を公開した。漫画あり小説ありの独創的な漫研ワールドが広がっておりとても面白い。
    児童文化研究会は初のオンラインでの人形劇にチャレンジ。手作りのほのぼのとした味わいが心を和ませてくれる優れた作品だ。多くの子どもたちが、これを見て様々なソウゾウをかきたてられるにちがいない。部員のみなさんの熱い思いが伝わってきた。
    宝生流能楽部は、能の面白さ・魅力を伝えるホームページが閲覧できる。舞台での真剣な稽古の様子、レクリエーションでの和気あいあいとした様子などがいきいきと伝わってくる。時代を超えて、「謡」と「舞」に込められた“いま”を生きる喜びが躍動感をもって伝わってくる。
    その他にもまだまだ数多くの多彩な企画が目白押しだったが、ここですべてを網羅することはできない。学術系、体育系、そして六甲祭実行委員会による観光案内動画や、オンラインでのクイズ、神大生格付けコンテストなど、それぞれに創意工夫をこらした諸企画が祭りを彩り、多くの人の心を豊かにしたことはまちがいない。

来年こそは対面開催で

    参加団体が、コロナ下の厳しい条件のなかで、地道に積み上げてきた活動の成果をいかんなく発揮することによって、また六甲祭実行委員会の熱意と入念な準備によって、初めてのハイブリット形式での六甲祭は、神大文化を新たにソウゾウするものになった。同時に、現地開催の準備のために、この春から室内企画班、模擬店企画班、装飾班など様々なグループをつくって準備を進めてきた実行委員会のメンバーにとって、昨年につづき一部を除いて現地開催が中止となった悔しさも当然あるであろう。それでも、オンラインというかたちで実り豊かな諸企画を実現し、次の世代にバトンをつなげられたことは、大きな前進であることはまちがいない。今年度の成功にふまえて、来年度の六甲祭は対面開催ができることを心から期待したい。 


「ぜひ多くの人に来てもらいたい」 KUBC、King of Stageを今週末開催

                                                                                                                                  2021年11月12日                                           

    KUBC(神戸大学放送委員会)は、11月13日(土)と14日(日)、六甲祭の代替企画として昨年に引き続き、オンライン上でKing of Stageを開催する。今回、その魅力を、企画の中心メンバーである新井智哉さん(文学部2回生)にうかがった。

    新井さんによると、King of Stageでは皆が楽しめる様々な企画を用意しているという。まずはKoS RADIO。コロナの前まではKUBCは大学の学生会館などでラジオを流していたが、そのような気軽に聞けるラジオ放送をおこなうという。King of Stageの見所や六甲祭、KUBCについてなど、部員が思いのたけを語ってくれる。何が聞けるか楽しみだ。

続いて、朗読・声劇企画。普段「KUBC PRESS」をつくっているフリーペーパー部が創意工夫して作成したオリジナル原稿をもとに、制作部が動画・ミニ劇の「番組」をつくり、アナウンス部のメンバーが日頃の練習の成果を朗読、声劇の形でくりひろげるという。新井さんも原稿を担当したとのことで、注目の企画だ。

    「マーダーミステリー」も見ごたえがあると新井さんは教えてくれた。これは殺人事件の犯人を参加者が推理する企画だが、動画そのものの完成度が非常に高いという。動画制作を普段おこなったことのないメンバーが一から制作し、BGMも本格的で臨場感が伝わる作品になっているという。筆者もぜひ見てみたいと感じた。

    その他にも、出演者の中で誰が皆と違うお題を与えられた人かを当てる「ワードウルフ」や4人の出演者のリアクションを見て仲間外れを探し出すリアクションクイズなど、視聴者参加型の気になる企画が盛りだくさんだ。誰が仲間外れや犯人かを当てるこうした企画には、協賛企業からいただいた豪華景品が多数用意されているという。ぜひ皆さんも積極的に参加してみてはいかがだろうか。

    このような企画を準備する過程では、様々な苦労があったと新井さんは話してくれた。企画は主に2回生が担っているが、何より新井さん自身が昨年秋に入部したため、オンライン企画の経験がなく、先輩のアドバイスを受けながら一からつくっていったこと。新井さんは全体のスケジュールを管理する立場だったが、他のメンバーとの連絡は基本的にオンラインだったため、対面でのやり取りと違って、企画制作の進行状況を共有しながら進めることがとても困難だったこと。各企画を担当したメンバーからは、動画の編集が特に大変だったという声を数多く聞いたこと‥‥。新井さんは、部員一人一人の汗と努力の結晶である今回の充実した諸企画について「ぜひ多くの人に見てもらいたい」と熱く語ってくれた。

    King of Stageは13日(土)・14日(日)両日とも10時30分から15時まで(12時~13時30分は昼休憩)YouTube Liveで配信される(詳しくはKUBCのツイッターを参照)。「当日は楽しいクイズや様々な企画を用意しており、参加してもらえれば豪華景品が当たるチャンスもあるので、皆さんぜひおこしください」と新井さん。今週末は、KUBC員たちが創意工夫してつくりあげた珠玉の企画をぜひ堪能してみてはいかがだろうか。

長引く課外活動規制に苦しむ文総加盟団体  第二弾②

「活動時間制限を緩和してほしい」 ブルーグラス切実な訴え

                                                                                                                                  2021年11月11日                                           

    兵庫県の緊急事態宣言が解除された後期に入っても、大学側による過剰な活動規制が続くもとで、文総加盟団体の多くは思うように活動ができず苦境を強いられている。今回、ブルーグラスサークルを取材した。 
    取材に応じてくれた部長のCさんによると、いま一番困っていることは新入生の獲得と練習時間の確保だという。コロナ前は例年20人ぐらい入部してくれたが、今年はまだ4人。ブルーグラスでは1バンドを5~6人で構成するため、このままではバンドを構成することも難しいとCさんは苦しい胸の内を語った。新入生をなかなか獲得できない理由として、Cさんは対面での新歓活動が制限され、オンライン中心にならざるをえないことをあげた。ブルーグラスは他の音楽系サークルに比べても知名度が低いため、ツイッター上で新入生にフォローしてもらうことがとても難しいという。そのため、新歓情報の連絡ができず、体験入部につなげられない。他方、対面勧誘ならその場で先輩の顔が見え、サークルの雰囲気や演奏の楽しさを直接伝え、次につなげることができる。実際、先月参加した秋新歓では、オンラインブースになかなか新入生が来なかった他方で、対面ブースには8人の新入生が来てくれて数人を体験入部に誘うことができたという。対面での新歓活動規制の早急な緩和が求められていると強く感じた。 

    学生会館での練習時間が満足に確保できないことも深刻な問題だ。Cさんによると、コロナ前は週6日、サークル員が来たいときに来て練習できたが、いまは抽選のため、多くても週4日、少ないと週2日しか練習日が確保できず、準備・片付け含めると1日2時間半しか練習時間が確保できない。Cさんは、「予定が合わない人はそもそも練習したくてもできない」「対面授業も増えているので、大学には練習時間の制限を緩和してほしい」と訴えた。活動時間制限の一刻も早い緩和が求められている。 

    このような困難な状況でも、ブルーグラスのサークル員たちは、限られた時間の中で練習を重ね、その成果をライブハウスで披露している。月1回、三宮のライブハウス「ホンキートンク」でバンド演奏を実現するとともに、今月3日には初めて西宮のライブハウス「フラッパーハウス」でライブをおこなった。「フラッパーハウス」からは4月にバンドの演奏依頼が入っていたが、練習時間が確保できず、なかなか応えられなかったという。半年かけて実現したライブに「私も楽しかったし、新入生も楽しんでもらえたと思う」とCさんは笑顔で語ってくれた。ブルーグラスは、12月18日(土)に冬の定期演奏会を三宮の生田会館で予定している。ぜひ多くの人に彼らの演奏を聴いてもらいたい。詳しくはブルーグラスのツイッターやHPを参照してほしい。 

    最後にCさんは、新入生に向けてブルーグラスサークルの魅力を生き生きと語ってくれた。なによりサークル員の性格がみな「柔らかく」、サークル全体が落ち着いた雰囲気ですぐになじめること、みな初心者なので楽器経験がない人でも大歓迎であること、また自由度が高いサークルなので活動にうちこみたい人はいくらでも練習に参加することができ、予定がある人は自分のペースに合わせて活動できること。少しでも興味の湧いた方は、ぜひ一度直接会って話を聞いてみてはいかがだろうか。ブルーグラスサークルの今後の発展を願ってやまない。 

今年の六甲祭    初のハイブリッド開催へ 
六甲祭実行委員会委員長「ぜひ多くの人に訪れてほしい」 

                                                                                    2021年11月10日

    今年の六甲祭(11月13、14日開催)は、参加団体はオンライン上で出展をし、一部の企画は対面で実施されるというように、史上初のハイブリッド形式で開催される。六甲祭そのものが「中止」に追い込まれた昨年と比べれば、実現にこぎつけることができた意義は大きい。開催に至るプロセスでの苦労や、本番に向けての意気込みなどを、六甲祭実行委員会(以下、六実)委員長の﨑山航志さん(文学部3回生)に聞いた。 

    﨑山さんは、六甲祭のハイブリッド開催を実現することができたのは「スタッフ全員による事前の準備のたまもの」だと語る。六甲祭の中止を余儀なくされた昨年、無念さを抱えながら引退していった先輩たちからバトンを引き継いだ﨑山さんたちは、翌年の六甲祭はなんとしても実現するために、「仮に現地開催(対面開催)ができない場合でも、オンライン上で楽しめるような六甲祭をやろう」とみんなで意志一致。現地開催・オンライン開催のどちらにも対応できるように準備を進めてきたという。年明けの1月から活動を本格化させ、新入生をあらたな仲間として六実に迎え入れた4月以降、企画を具体的に練り上げていった。 

    オンライン開催の可能性も視野に入れていたとはいえ、やはり現地開催を実現したいという強い思いのもと、﨑山さんたちは最大限の準備を進めていた。5月、6月には1回生の各部局(屋外ステージ担当、模擬店担当など)への配属も完了し、現地開催へ向けた体制も整えていた。だが、大学側から六甲祭の現地開催を認めることはできないという回答が出され(8月23日)、2年連続で六甲祭の現地開催を断念せざるをえなくなった。﨑山さんは、「やっぱり現地で六甲祭をやりたかったというのが本音」と無念さをにじませた。 

    残念ながら現地開催は断念せざるをえなくなったが、それでも﨑山さんたちは、オンライン開催でも充実した六甲祭を実現すべく、オンライン開催の企画案にのっとって準備を進めた。講演会やお笑いライブといった企画をライブ配信する以外にも、出展団体がオンライン上で発表する企画のリンクを六実のホームページに貼り付けて共有するかたちで、来場者に様々な団体の企画を見てもらうといった工夫をおこなった。﨑山さんは「企画担当の委員たちが尽力してくれたおかげで、思い通りのパフォーマンスができている」と手応えを口にした。 

    お笑いライブはオンラインでの配信と同時に、神大生に限定するかたちで観客を会場に入れて実施される。「お笑いは場の空気が大事だし、芸人さんも目の前で笑ってくれる人がいた方がやりやすい」という思いのもと、﨑山さんは会場に観客を入れて実施する案をめぐって大学側と交渉。感染対策を十分にとったうえでの有観客開催の実現にこぎつけた。講演会は、現役神大生ユーチューバーのパーカーさんによる講演が、ユーチューブのライブ配信で実施される。 

    六甲祭本番を前にして、﨑山さんは「オンライン開催の難しいところは、人が集まりにくいところ。現地開催なら、来場者は会場に足を運んだついでにいろいろな企画を訪れやすくなるが、オンラインだと来場者は各団体のリンクを押さないといけないので、現地開催と比べるとどうしても企画に訪れにくくなってしまう。それでも多くの人に訪れてもらえるよう、情報宣伝をおこなっていきたい」と意気込みを語った。六甲祭実行委員会の多大な奮闘によって開催の道がひらかれた今年の六甲祭、大いに盛り上がることを期待したい。 

    お笑いライブは11月13日(土)9時55分開演。講演会は11月14日(日)14時00分~15時30分、ユーチューブ上でのライブ配信で実施される。講演会は誰でも自由に視聴できる。お笑いライブ、講演会の他にも、六実のホームページでは、六甲祭出店団体の企画のリンクはもちろんのこと、六実の装飾チームによる制作発表、巨大迷路、オンラインツアーin神戸など、充実した内容で来場者を迎えてくれる。ぜひ訪れてみてはいかがだろうか。 

六甲祭実行委員会公式ホームページ:https://www.rokkosai.com 

長引く課外活動規制に苦しむ文総加盟団体 第二弾①

                                                                                    2021年11月6日

 

    活動規制が課されてから、1年半以上が経過したが、いまだに教室の使用禁止や活動時間の制限などの規制が緩和されていない。こうしたことが、闊達に文化・芸術活動をくりひろげようとしている文総加盟団体にとって大きな障害になっている。今回は、とりわけ秋以降の現状を取材した。 

 

混声合唱団エルデ 「貯めていたプール金を切り崩して」 

 

    混声合唱団エルデは、部の支出が増加し、財政的な苦境に陥っている。エルデ・部長の静木さん(国際人間科学部・3回生)にお話を伺った。 

    コロナ・パンデミック以前は、大学の教室で練習していたが、現在は大学の規制によって、一切教室が使えなくなった。エルデは、現在学外施設を借りて週3回練習している。施設を1回利用するためには、1万円かかるという。しかも、4つのパートごとに講師の先生がいて、先生が指導した際には、「謝礼金」を支払う必要がある。静木さんによると、部の支出は月に約20万円にも及ぶという。この現状に静木さんは、「貯めていたプール金を切り崩して切り崩してやっている」と悲鳴をあげた。 

    こうした重い負担は、エルデの部員たちにのしかかっている。コロナ下で1カ月間の部費を2000円から3000円に引き上げたが、さらに1000円から2000円引き上げる案がでているという。しかも、学生たちに追い打ちをかけているのが、飲食店などの廃業・休業によって、アルバイトが満足にできないという現状だ。静木さんによると、アルバイトの募集に「4回落ちた」部員もいるという。極めて深刻な状況だ。 

    神戸大当局は、いまだに教室の利用を認めていない。静木さんは、大学にたいして、「教室を使わせてほしい。なんらかの金銭的な補助をしてほしい」と訴える。一刻も早い規制緩和と、金銭的な補助が求められている。 

    こうした困難な状況において、エルデは、12月に有観客でコンサートを開催しようとしている。1年ぶりに有観客で開催される今回のコンサートは、1回生が初めて参加し、4回生が引退する重要なイベントとなる。静木さんは、「集大成」と位置付ける12月のコンサートについて、「例年以上にできれば」と意気込む。このコンサートが成功することを願ってやまない。 

 

ESS 「部員の定着率が低くなっている」 

 

    ESS・副部長の藤川さん(経済学部・2回生)は、「部員の定着率が低くなっている」と苦悩する心境を語った。2回生の部員は、当初30人いたが、現在活動している人数は、半分以下になっているという。その理由について、藤川さんは、「対面だと人間関係が濃くなるが、オンラインだと辞めたり、来なくなったりする」と語った。 

    ESSは、昨年はオンライン中心に活動していたが、今年はオンラインだけでなく対面で活動している。とはいえ、対面での活動は十全には出来ていない。以前は使えていた教室が大学によって使用禁止となっているために、学生会館しか借りられないことが大きな要因となっている。学生会館の予約が集中すれば、抽選になってしまう。その抽選に落ちれば、当然利用できず、対面での活動ができなくなる。しかも、たとえ学生会館を借りられたとしても、人数制限があるために、ESSにある5つのセクション(ドラマセクションやスピーチセクションなど)の全てを対面で行うに足る場所がなかなか確保できていないという。藤川さんは、「ドラマセクションは、対面でやる必要があるので、他のセクションが場所をとれない」と語る。藤川さんが所属するカンバセーションのセクションでは、対面の活動が少なく、「とりわけいなくなる人が多い」という。 

    こうした中で、ESSは、10月31日にハロウィンイベントを開催した。部員たちは、仮装して、ミニゲームやビンゴ大会、ミュージカル発表などをおこない、楽しんだ。ハロウィンイベントを楽しみ、充実した部員たちの様子を撮った写真は、twitterで見ることができる。藤川さんたち運営メンバーは、なかなか思うように対面での活動ができない中にあっても、部員どうしが結束できるように創意工夫をこらして、活動をおこなっている。今後の活動にも目が離せない。

活動機会が限られる中で練習積み重ね、演奏会を実現 

クラシックギター部

                                                         2021年11月4日

     

     

    クラシックギター部は、コロナを理由とした活動規制の下で、練習を積み重ねてきた。そしてその練習の成果として、『サマーコンサート2021』を無観客で開催し、その演奏をYouTubeで発表した。緊急事態宣言発令に伴う活動休止や、活動時間の3時間までの規制、練習場所の確保が困難であったことなどにより、十分な練習時間が確保できないなかで、実現された演奏会である。このコンサートで披露された演奏について紹介する。 
    『サマーコンサート2021』で演奏され、公開されたのは3曲である。 

    1曲目は「A Whole New World」。この曲はクラシックギター部に入部した新入生による初ステージである。クラシックギター部の曲紹介によると、「この曲は、ディズニー映画『アラジン』で、王子に変装したアラジンが、ジャスミンとともに魔法のじゅうたんで世界中を旅する」場面で歌われる曲だ。演奏を聴くと、主旋律のギターの音は、歌っているように聞こえ、音が楽しそうに飛び跳ねているようなイメージが湧いてきた。映画『アラジン』を観たことのある人は、歌詞が頭の中に浮かんでくるのではないだろうか。新入生たちによるギター3重奏は、なんだか楽しい気持ちにさせてくれる演奏だった。 

    2曲目の「Streets of London」は、どこか哀愁のただよう曲で、いつまでも聞いていたいような気がした。目を閉じて、音楽に耳を澄ましていると、気持ちが落ち着いてくるような演奏だった。クラシックギター部の曲紹介によると、「Street of London」は、「ロンドンの街々を舞台に貧困や孤独を描いた歌」だそうだ。この曲紹介を読んで、もう一度演奏を聴くと、音楽がそっと寄り添ってくれるような優しさが伝わってくるような気がした。 

    3曲目は、「情熱大陸」。葉加瀬太郎さんの代表曲とも呼べる曲のギターアレンジだ。「情熱大陸」と言えば、葉加瀬太郎さんのヴァイオリン演奏が思い浮かぶが、このギターアレンジ曲はまた違った魅力を持っていた。ギターの低音がとてもかっこよく、私は心をつかまれた。この曲を聴いていない人には、ぜひ聴いて、クラシックギターの渋い魅力を感じてもらいたい。 

    クラシックギター部は、11月13日、14日にもコンサートを企画している。13日には対面形式で、観客を神大生に限定して、神戸大学学生会館の第3集会室で開催する。当日の飛び入り参加も可能だが、参加できる人数に限りがあるため、確実にコンサートを聴くためには、事前連絡が必要だ。詳しくはクラシックギター部のTwitterを見てもらいたい。コンサートでの演奏は14日にYouTubeで配信される。ぜひ多くの人にクラシックギター部の演奏を聴いてもらいたい。 

アポロン、エルデが参加するリモート合唱企画、行われる 

                                                         2021年10月15日

     

    神戸大学混声合唱団アポロン、神戸大学混声合唱団エルデ、京都大学医学部混声合唱団メディカルコール、香港の合唱団のDiocesan Choral Societyの4団体による演奏動画をYouTubeに公開する企画が行われた。この企画は、新型コロナウイルスの感染拡大による影響で、4団体合同での対面によるjointコンサートが中止を余儀なくされたことを受けて、その代替企画として行われた。大学の垣根や、国境を越えて行われたこの企画は、神大の部活・サークル文化の豊かさを物語っていると言える。 

    企画では、4団体それぞれの単独ステージと、アポロンとエルデによる国内合同ステージ、4団体による国際合同ステージが動画として公開されている。私が公開された歌を鑑賞して感じたのは、沈んだ気持ちを前向きにさせてくれるような歌が多かったことである。コロナ感染拡大の影響によって、鬱屈とした気持ちになりがちな今だからこそ、聞きたくなるような、そして歌いたくなるような曲を、合唱団の皆さんが選んでくれたのではないだろうか。 
    この企画で公開された9曲のうち、その一部を紹介する。 
    4団体による国際合同ステージ「Earth song」は、この企画の目玉である。香港の合唱団の先生の指揮の下で、遠く離れた4つの合唱団の歌声がハーモニーを奏でていた。彼らの荘厳で迫力のある歌声を聞いていると、この歌の世界の中に引き込まれていくようだった。 

    私が一番気に入った歌は、「葡萄の樹」という曲だ。この曲はアポロンとエルデが合同で歌ったステージである。生命力あふれる葡萄の樹の姿の中に、生きていることの喜びが沸いてくるような歌だった。この曲がアポロンやエルデの団員の皆さんの、エネルギー溢れる歌声に乗ってきて、私の心も弾むような思いがした。 
     紹介した2曲のほかにも、ユーモアあふれるミュージックビデオが付いた曲や、さくらももこさんの詩をもとに作られた曲など、ぜひ聞いてほしいと思う曲ばかりである。アポロンやエルデのホームページの「演奏会情報」にYouTubeへのリンクが載っていて、視聴することができるので、ぜひ聞いてもらいたい。 

    コロナ感染拡大の影響による活動規制の下で実現されたリモート合唱は、輝きを放つ素晴らしいものであった。それでも、コンサートという晴れの舞台で歌を披露することができないことによって、合唱団の皆さんが感じたであろう悔しさは大きかったに違いない。一日でも早く、すべての部活・サークルがより自由に活動できる日が来ることを望むばかりである。 

いまだにつづく活動規制 

「他大生の参加、部室の使用を認めてほしい」応援団総部吹奏楽部

                                                         2021年10月9日

    文化総部加盟団体にとどまらず、神大の多くの課外活動団体が、長引く活動規制に苦しんでいる。今回は、応援団総部吹奏楽部に話を聞いた。 

    部長の土屋祥仁(よしのり)さん(工学部機械工学科3回生)によると、吹奏楽部は現在、部室兼練習場所であった音楽練習室(鶴甲第1キャンパスの弓道場の隣)の使用が大学側から禁止されているため、やむなく学生会館を使って練習しているという。練習のたびごとに、楽器の保管場所でもある音楽練習室から楽器を持ち出して学生会館との間を往復しなければならず、とりわけ大きい楽器を移動させるのは一苦労だ。楽器の運搬だけで、上限3時間という貴重な活動時間のうち30分が削られてしまう。加えて、定められた活動時間内に楽器を片付けて完全撤収しなければならないため、どうしても練習時間は短くなってしまう。学生会館が利用できないときは学外の施設を借りて練習するのだが、施設利用料に加えて楽器を運搬するためのレンタカー代も重なり、出費は増える一方だ。音楽練習室の使用が禁止されていることの弊害は大きい。 

    他大生の練習への参加が未だに認められていないことも切実な問題だ。吹奏楽部には他大生が20人ほど所属しているが、神大生と一緒に練習ができないため、楽器を演奏できない状況が1年以上もつづいている。土屋さんは「吹奏楽部がない大学もあり、そういう大学の学生が神大の吹奏楽部に入ってくれている。その人たちが文化に触れる機会を奪うことになっている」と、他大生を練習に参加させることができない苦しさと不満を打ち明けた。 

    神大生の部員にしても、肝心の発表の場が一切無くなっているので、練習にたいするモチベーションを保つのが難しいと土屋さんは語る。今年7月に開催を予定していたサマーコンサートは、感染対策を理由に昨年につづき2年連続の中止を余儀なくされた。神戸大と京都大の硬式野球部による「神京戦」も中止になるなど、他団体の試合に応援に駆けつける機会も失われている。コロナ前は社会人野球のチームの応援依頼も請け負い、それが吹奏楽部の収入の大半を占めてもいたのだが、コロナ下で社会人野球は無観客で試合を開催しているため、応援依頼もなくなっている。それ以外にも、コロナ前は様々な学外のイベントで演奏を頼まれることがあったが、それらも軒並み中止になっている。演奏を披露する場も、部の運営に必要な収入を得る機会も、ことごとく奪われるという非常に苦しい状況だ。 
    土屋さんは「後輩たちは、演奏会も応援も、まったく経験できていない。実際に現場で体験してもらいながら活動の引き継ぎをやりたいのだが、それができない」と苦しい胸の内を明かした。土屋さんたち3回生の先輩部員は、応援の振り付けを収録した動画を作成したり、部の運営上問題になることを文章に残したりしながら、なんとか後輩部員に活動を引き継ごうとしている。本来なら、後輩たちに演奏会や応援といった経験を積ませながら引き継ぎをやりたかったはずだ。土屋さんたちはどれほど無念なことだろう。 

    大学への要望として、土屋さんは第一に他大生の練習への参加、第二に部室(音楽練習室)を使用しての練習の許可を挙げた。「広さはほぼ同じなのに、なぜ学館は使用できて音楽練習室は禁止なのか分からない。感染対策の重要性は理解できるが、今は大学側から一方的に方針が下ろされるだけ。具体的な感染対策のガイドラインをこちらで作成する用意もあるので、学生の意見を大学側に伝える機会が欲しい」と、展望の見えない現状をなんとか打開したいという想いをにじませた。1年半にもおよぶ課外活動規制の影響は深刻であり、一刻も早い状況の改善が求められている。 

 

【取材後記】 

    私が土屋さんのお話を聞いてとても印象に残っていることは、新型コロナウイルスの感染拡大によって、吹奏楽部は去年から公での演奏が全くできてないということである。発表の場というのは部活動の中でもっとも重要な役割を占めているため、それができないのはとても残念なことである。そして、今吹奏楽部は3年生主軸の体制から2回生が主軸の体制に引き継ぎをする時期であり、発表経験に乏しい2回生に引き継ぎをするのはとても難しいとおっしゃっていた。土屋さんのお話を通して、新型コロナウイルスの影響によって「練習時間」という側面だけでなく「経験値」という側面でも部活動は厳しい状態に追い込まれていることが分かった。 

神大学生フォーミュラチーム「FORTEK」が

学生フォーミュラ全国大会で優勝の快挙

                                                                                                                                                              2021年9月27日 

    8月にオンラインで行われた「学生フォーミュラ日本大会2021」で神大FORTEKが初優勝の快挙を遂げた。(9月3日に総合結果が発表) 
    この大会は、2003年以降毎年開催されてきたが、昨年はコロナ感染拡大のため初めて中止された。今年は、例年おこなわれてきた静岡の会場での動的審査(製作したフォーミュラマシンを実際に走らせてその性能を競うもの)が全面中止になり、オンラインでの「デザイン部門」「コスト部門」「プレゼンテーション部門」の3部門での静的審査(フォーミュラマシンについての図面や書類での説明・プレゼンテーションについての審査)のみがおこなわれた。 
    神大FORTEKは「デザイン部門」が45チーム中9位、フォーミュラマシンの製造にかかったコストを審査する「コスト部門」が44チーム中2位、製造したフォーミュラマシンのコンセプトを紹介しながら、製造企業にどのように売り込むのかを競う「プレゼンテーション部門」が46チーム中2位となり、総合で大阪大学(2位)、京都大学(3位)をおさえてみごとに優勝した。 
    FORTEKの2021年度のプロジェクトリーダーである村田康貴さんは、今回の優勝後のインタビューのなかで、コロナ下での活動人数、活動時間に制約があり、製作にかける時間が大幅に限られたことなど、この間の活動の苦労を語っている。困難な状況のなかで、例年は活動の中心から外れる4回生・院生の経験豊富な先輩たちに活動に加わってもらったという。また、時間が限られるなかで流用部品をつかうなど工夫をこらしてきた。何よりもZOOMで仲間同士をつなぎ、作業を共同でおこなうなど、一体感を創造しチームの士気を高めることによってピンチを打開してきた。今大会の優勝は、「神大FORTEK」のチーム力をいかんなく発揮してかちとったものといえるだろう。 
    今回のFORTEKの快挙に、コロナ下でサークル活動が思うようにできず苦しむわれわれは大いに励まされた。優勝を成し遂げたとはいえ、FORTEKのメンバーの心中には、製作したマシンを大会で走らせられなかった悔しさもあっただろう。この悔しさをも、来年度以降のFORTEKのさらなる飛躍につなげてほしい。今後の彼らのさらなる活躍に注目したい。 

長引く課外活動規制に苦しむ文化総部加盟団体⑧

マンドリンクラブ  規制でがんじがらめのなか、演奏会に向け練習に励む 

                                                                                  2021年8月24日

    多くの文総加盟団体が、大学側による厳しい規制のもとで、苦心しながら部の運営を行っている。今回はマンドリンクラブを取材した。 

  運営責任者の斉藤さんと尾﨑さんからお話をうかがった。マンドリンクラブは現在、水曜日と土曜日の週2回、練習を行っている。練習するうえで困っていることについてたずねると、練習場所の確保に困っているという。マンドリンは五つの弦楽器(マンドリン・マンドラ・マンドセロ・クラシックギター・コントラバス)でオーケストラを構成する。パートも複数に分かれており、一つの音楽を作り上げるには、全体での合奏練習が不可欠だ。マンドリンクラブの練習には25~30人が参加するが、全員が一堂に会して練習できる場所は、学生会館には定員80人の大ホールのみである。大ホールが借りられないときは、部屋を2つ借りるそうだ。大ホールは前期には借りることができないことが多く、3時間という活動時間制限もあり、斉藤さんと尾﨑さんは、演奏会に向けた十分な練習量が確保できるか不安だという思いも語っていた。今、文化系団体が大学で活動できる場所は、学生会館に限られている。文化系団体の活動場所の不足は深刻な問題だと感じた。 

  斉藤さんと尾﨑さんに「大学からの規制で困っていることは何ですか?」と質問すると、すかさず「他大生の参加についてです!」という答えが返ってきた。マンドリンクラブには現在5人の他大生部員が所属しているが、練習には参加できず、斉藤さんと尾﨑さんも心苦しい思いをしているという。斉藤さんと尾﨑さんはある他大生部員の話を紹介してくれた。その部員は高校の時からマンドリンをやっていて、マンドリンクラブの先輩の紹介で入部したそうだ。兵庫県内にマンドリンクラ 

ブのある大学は少なく大学でもマンドリンを続けるためには、他大学のマンドリンクラブに所属する必要がある。しかし今は大学の規制によって他大生の活動参加は禁止されており、斉藤さんと尾﨑さんは、他大生部員と顔を合わせることさえままならないという。他大生部員の置かれた苦しい立場を聞いて、胸がつまる思いがした。他大生の参加禁止は学生にとってあまりにも厳しい規制だと思った。 

  斉藤さんと尾﨑さんはそのほかに部の運営で困っていることとして、活動申請書について挙げた。現在、大学への活動申請書は月1回の提出で、申請書を月の初めに提出すると、月末ごろに大学から許可・不許可といった回答がある。申請から大学からの回答までの期間が1か月近くもかかることで、柔軟な活動が難しくなっているのだ。マンドリンクラブには外部の商業施設から演奏を依頼されることもあるという。依頼されてから活動申請書を作成し、大学に提出する必要があるが、大学から回答があるまで、依頼者に対して依頼を受けるという正式な回答をすることができない。これではマンドリンクラブも依頼者も、演奏を行うという前提で動くことができなくなってしまう。マンドリンクラブ以外の団体にも、活動申請書への回答が遅いことで困っている団体はいるだろう。大学には活動申請書の審査の期間を短くするように求めたいところだ。 

  様々な規制がある中で、マンドリンクラブは演奏会に向けた練習に励んでいる。今年度は、12月と、2022年3月に演奏会を開催する予定だ。マンドリンの魅力は五つの弦楽器の音色が合わさって、一つの美しい音楽を紡ぐところにある。演奏される音楽は、マンドリンオーケストラ用の音楽や、ポップスなど様々だが、斉藤さんと尾﨑さんによると、ジブリの音楽がマンドリンの音色によく似合うそうである。聴きなじみのある曲も、マンドリンの音色で聞くと、新しい魅力を感じられるだろう。今年12月と、来年3月の演奏会は、収録されてマンドリンクラブのYouTubeチャンネルで公開予定だ。過去の演奏会もこのチャンネルで鑑賞することができる。ぜひ多くの人にマンドリンクラブの演奏を聞いてもらいたい。 


長引く課外活動規制に苦しむ文化総部加盟団体⑦

宝生流能楽部    日々練習に励み、研鑽中


                                                                                  2021年8月14日

       

    大学による課外活動規制が長引く中、苦境に立たされながらも各サークル・部は地道に活動をおこなっている。今回、「宝生流能楽部」を取材した。 

    取材に応じてくれた小林さん(理・2回生)によると、現在、宝生流能楽部は、週1~2回、学外の施設を借りて練習をおこなっているという。練習場所や頻度はコロナの前と変わらないとのことだが、そもそも施設の利用料が毎回かかるため、大学側に学内で自由に練習できる部室を確保できないか交渉中とのこと。 

    コロナの下で大きく変わったのは、大会数が激減したことだという。例年は、毎月1回もしくは2か月に1回は謡と舞を披露する大会があったが、いまは年2回ほどしかない。そのため、練習のモチベーションを保つのが難しいと小林さんは語っていた。 

    また、コロナの前までは、甲南女子大の宝生流能楽部との合同練習をおこなっていたそうだが、今は大学に禁止されているという。「早くできるようになればうれしいんですけど‥‥」と、小林さんは苦しい胸の内を語ってくれた。 

    新歓の現状は、非常に厳しいとのこと。例年は新入生との小旅行を企画したり、六甲祭など対面で新入生と触れ合う機会を活用して着物でアピールできたが、現在のSNS上での勧誘のみでは、能や宝生流能楽部への興味を持ってもらうことがなかなか難しいようだ。文化総部加盟の他の団体から、国人第一キャンパスにつながる陸橋でのビラまきを大学側に認めてほしいという要望があることを紹介すると、小林さんは「僕たちもぜひやりたい」と共感を示してくれた。ちょうど取材をおこなった日は、新入生が練習を見に来てくれるとのことで、小林さんは「とても楽しみにしています」と笑顔で話してくれた。 

    他大生部員は、今はいないが、「他大生も全然OKなので、募集中です」と小林さん。大学側が他大生の課外活動への禁止を継続していることについては、「なんでずっと禁止なんだろうと思っています」と不満をうちあけてくれた。「小中高生は授業も対面だし、課外活動も普通にしているのに、“なんで大学生だけ負担を強いられないといけないの?”って思います」と小林さん。大学生なら誰もが感じている思いを話してくれた。 

    ちなみに、能とは、約600年前に始まったとされる歴史と伝統のある「ミュージカル」(宝生流能楽部の新歓ビラより)で、謡・舞・楽器で構成されている。学生は、主に「謡」と「舞」をおこない、舞をおこなうときは、「面」をつけることもあるという。謡も舞も非常に見ごたえがあり、一度見ると能に詳しくなくてもそのすごさを感じることができる。流派が5つあり、競技人口が一番多いのが観世流で、二番目に多いのが、宝生流。小林さんに能の魅力を聞くと、「伝統芸能と聞くと格式ばっていると思われがちですが、能を通じて、さまざまな人たちと交わることができるのが一番の魅力です」「学生から年配者まで幅広い年齢層の人たちと交流できる競技はなかなかありません。年配の人からはたくさんのことを学ぶことができ、視野も広がります。」と、その魅力を熱く語ってくれた。その語りぶりに、筆者も能のおもしろさ、奥深さを感じることができた。宝生流能楽部に少しでも興味を持った方は、ぜひ彼らのツイッター(@KobeHosho)やHP(kobe-hosho-noh.jimdofree.com)を参照してほしい。 

    新歓や他大生との合同練習など、大学側の過度な規制により思うように活動できない中でも、宝生流能楽部の部員たちは日々稽古に励み、その技術に磨きをかけている。早く規制が緩和され、より活発な活動がおこなわれることを願っている。 


長引く課外活動規制に苦しむ文化総部加盟団体⑥

                                                                                  2021年7月30日

 
    長引く課外活動規制のもとで、多くの文総加盟団体は、普段の活動やイベント、交流などの対面での活動が十全にできないことで苦しんでいる。今回は、将棋部と混声合唱団エルデの方にお話しを伺った。 
    将棋部の主将・西さん(理学部3回生)への取材では、対面での活動が制限されていることが大きな問題になっていることがわかった。将棋部の普段の活動は、オンラインでおこなっている。大会も、決勝以外はオンラインでの対局だという。「部員は楽しくやっている」そうだ。だが、西さんは、「(オンラインでは)連携をとりにくいので、先輩からの引継ぎなどが難しい」「将棋を教えたり、教えてもらったりするのは対面の方がいい」と、対面での活動ができず困っている心境を語った。 
    事態は深刻だ。部を辞める人もでており、3回生の部員は西さん以外には「いなくなった」という。新歓についても、「例年は入部が二桁の人数になるが、今年は一桁」。将棋部という人気ある部が苦境にたたされている。西さんは、長引く課外活動規制について、「オリンピックはやるのに…」と、納得できない表情で語った。大学の規制が中学・高校の部活動やプロスポーツなどの社会的な基準に比しても厳しすぎる現状が重くのしかかっている。 
   エルデの部長・静木さん(国際人間科学部3回生)は、現在困っていることについて、「対面でおこなっていた以前のような活動ができない」と語った。合宿などのイベントがなく、学生間の交流が希薄になっているという。静木さんは、「一つの団体としての結束がつくれない」と、もどかしい気持ちを明かした。部員の息を合わせる必要がある合唱の性格上、部員の結束がつくれないことは死活問題だ。 
   こうしたことに加えて、「人数制限をしないといけなかったり、週3回の練習が週2回になったりする」など、日々の活動も十全におこなえていないという。しかも、大学によって教室の使用が禁止されているために、利用料がかかる学外施設を使わざるをえない状況に陥っている。静木さんによると「(施設利用料は)1回1万円で、1人当たり月2000円かかる」という。大学の規制について、静木さんは、「大学側が学生の課外活動に重きを置いていない」と不満を吐露した。 
    7月に予定していたコンサートは中止に追い込まれた。12月に今年最後のコンサートが開かれ、ここで4年生は引退となる。部長である静木さんは、先輩たちの花道であるこのコンサートをなんとしても成功させようと奮闘している。 
   今回の取材で、役職の引継ぎや部員どうしの連携がうまくいかなかったり、部内の結束がつくれなかったりする問題が深刻になっていることが浮かびあがった。対面での活動が制限された現状を少しでも改善する必要があると感じた。 



長引く課外活動規制に苦しむ文化総部加盟団体⑤ 

                                                                               2021年7月29日

    長引く課外活動規制のなか、文総加盟の各団体は工夫しながら活動をおこないつつも、規制の影響により例年とは違う苦しい部の運営を強いられている。今回はクラシックギター部と天文研究会について報告したい。

 

クラシックギター部「部室での活動を認めてほしい」

    取材に応じてくれた部長の久保下さんによると、クラシックギター部は現在、例年週3回(月・金・土)おこなっていた練習が、週2回(月・土)しかできなくなっているという。練習場所として使っていた部室での活動が現在禁止されているため、やむなく学生会館の集会室を借りて練習しているが、同じように集会室を利用したい団体も多く、どうしても部屋の争奪戦にならざるをえない。特に競争率が高い金曜日は学館の集会室をとるのが極めて困難であり、やむなく金曜日の練習をあきらめざるをえない状況だ。それに加えて、練習時間も、準備・片付け等を含め1日3時間までと制限されているため、練習は十分にできていない。夏の演奏会(感染対策のため無観客で開催。演奏を収録したものを後日You Tubeで公開予定)も、練習が十分にできなかった影響で、披露する曲数を減らさざるをえなかった。

    思うように練習ができない現状について、久保下さんは「部室で2~4人で練習できるだけでも違う。大学には部室での活動を認めてほしい」と切実な想いを語った。

    新歓の状況は、4月に活動時間の1時間を新勧活動(体験入部)に充てたことが実を結び、新入生が3人正式に入部してくれたとのこと。久保下さんは、「あと3人入って欲しい。計6人入部してほしい」と語る。8月にあらためて新歓をしたいと考えているが、「自分たちがいつも使っている学館の第1集会室だと定員が12人なので、(体験入部を実施するには)少しきびしい。第3集会室は定員21人だけど、競争率が高くてとれない」という。学館の集会室が取り合いになることによって新勧活動にも影響が出てくるというのは、由々しき問題だと感じた。

   このような苦境にたたされながらも、クラシックギター部は、感染対策を最大限おこなうなど工夫しながら、夏の演奏会の開催にこぎつけた。昨年はすべての演奏会の中止を余儀なくされたので、2回生にとっては初めて日頃の練習の成果を披露する機会が得られたことになり、画期的なことだ。先述したとおり、演奏会を収録したものが後日You Tubeで公開される予定なので、楽しみにしたい。

 

 

天文研究会「後輩への引き継ぎができないことが心配」

    お話をうかがった天文研究会会長の野間さんによると、SNS上での新勧活動の成果もあり、新入生はたくさん入部してくれたとのこと。ただ、せっかく新入生が入ってくれたにもかかわらず、事前に活動申請を大学におこなわなければならない現在の規制の下では、思うように活動できていないのが悩みだという。例年は直近の天気を確認して確実に観測活動ができる日を見定めたうえで、部員たちの都合の良い日に観測に行くことができていたが、今は天候があらかじめ予想できない数週間先の活動計画まで決めたうえで大学に申請しなければならないため、せっかく申請が通っても観測日当日の天気が悪いと中止を余儀なくされてしまう。それゆえ、「4月から夜の星の観測には行けていない」と野間さんは語る。夜の観測活動は天文研の大きな魅力だと思うが、それができない無念さは察してあまりある。

    天文研には他大生部員が5人いるが、神大は他大生部員の活動参加をいまだ禁止しているため、活動に参加できていない。野間さんは「(活動に参加させてあげられない)他大生の人には申し訳ない」と苦しい心境を語った。

    部室が使えない影響も決して小さくない。部室には天体観測用の立派な望遠鏡が数台置いてあるが、野間さんは「望遠鏡は点検や修理が必要だが、(部室が使えないと)そのやり方を後輩へ引き継ぐことができないので困る」という。やむなく、部室以外でおこなっているミーティング時に最大限引き継ぎをするしかないという苦しい状況だ。 

    今年の学園祭が対面で開催されるかどうかまだ分からず、例年おこなっている年3回の合宿(春・夏・冬)も行いたいのは山々だが、100名近い部員の感染対策を考えると開催に踏み切るのが難しい。後輩に部の運営を引き継ぐことはとても困難になっており、部を背負う野間さんの苦労は絶えない。

    野間さんの話からは、思うように活動できないことにたいするもどかしさや、活動しながら大勢の部員たちを感染から守らなければならないという苦労、責任感など、様々な想いが伝わってきた。そのような中でも、天文研の部員たちは、今やれる最大限の活動をおこないながら、部員同士のつながりを強めている。のびのびと活動できるような日が一刻も早く訪れることを願うばかりだ。


 

長引く課外活動規制に苦しむ文化総部加盟団体④ 

                                                                               2021年7月26日

 
    1年以上の課外活動規制によって、多くのサークル・部が苦境にたたされている。今回は、EESの方にお話を伺った。 
    EES副部長の松下さん(国際人間科学部3回生)は、「2、3年生のモチベーションが下がってしまっている」「3年生はそれぞれの忙しさもあり、さらに集まりにくい状況だ」と語った。松下さんは、部を運営する中心的な役割を担う立場から、部の現状に危機感を抱いている。普段は、週2回オンラインで活動しているが、対面での活動がないため、「活動への意欲や帰属意識がなくなっている」という。 
    ESSが活動場所としていた教室の利用が大学から禁止されていることは由々しき問題となっている。松下さんは、「除菌を徹底したら教室は絶対に使える。なんで部活動での使用はダメなのか。施設代払っていますよといいたい」と、大学側が一方的に教室の利用を禁止していることに憤りを表明した。学生会館は感染対策をした上で使用できるのに、なぜ教室は利用できないのか。このような大学の二重基準にたいする疑問は、多くの学生が感じていることではないだろうか。 
    加えて、例年行っていた合宿が行えないことが部員のモチベーションを保てない現状に拍車をかけている。コロナ蔓延以前は、夏休みに長野での合宿を行っていた。3年生が出し物などの1、2年生を楽しませるイベントを行うことが「伝統」になっていたという。しかし、去年に引き続き今年も、感染対策を理由に合宿を断念した。松下さんは、ESSの「伝統」を「(後輩に)伝えられなかった悔しさ」があるという。 
   こうした窮状におかれながらも、松下さんらEESの運営メンバーは、先輩たちから脈々と受け継がれてきた合宿の「伝統」を形を変えてでも守ろうと懸命になっている。合宿の代わりに、泊まりなしの3日間のイベントを構想している。こうした企画が成功することを願ってやまない。 
   今回の取材で、過剰ともいえる規制のもとで抱える苦悩や、困難をのりこえようとする姿が印象に残り、厳しい現状を早急に改善する必要があると感じた。 


 

長引く課外活動規制に苦しむ文化総部加盟団体③

 ブルーグラス    制約がある中で粘り強く活動

                                                                              2021年7月24日

    大学による課外活動の規制が続く中、各サークル・部は苦境にたたされながらも地道に活動をおこなっている。今回、「ブルーグラス」サークルを取材した。

    Bluegrassとは、アメリカのカントリー・ミュージックで、ギター、マンドリン、バンジョー、フィドル(ヴァイオリン)、ウッドベース(コントラバス)、ドブロなどの弦楽器で構成される。ドブロはブルーグラスにしか見られない楽器だ。演奏だけでなく歌も歌い、合奏と合唱全体で醸し出すその陽気さが特徴だ。

    取材に応じてくれた渉外担当のAさんによると、ブルーグラスは現在、学生会館の談話室を抽選で週3~4日、1日あたり3時間借りて練習しているという。普段なら学生会館が開いている時間帯にいつでも行って練習できたため、ブルーグラスの醍醐味である「ジャム」(即興演奏)をその場に居合わせた仲間同士でおこなうことができたが、現在は時間の制約があるため、もっぱら発表に向けた練習のみをおこなっているという。1日3時間という制約は、本来のブルーグラスの活動をおこなう上でかなり厳しい条件であることがうかがえた。

    新歓の状況について聞くと、入部した新入生は、例年の1割ほどにとどまっているという。春から現在に至るまで対面での学内勧誘が禁止されているため、宣伝や勧誘が思うようにできていないという。渉外担当の方は、「国人の橋のところでギターとかやってたら楽しそうな雰囲気が分かるし、“ブルーグラスって何?”という人にも宣伝できる」「大学側は、ビラ配りなど、もう少し柔軟な形での勧誘を認めてほしい」「体験入部は認められているが、社会的に広く知られていないジャンルの音楽なので、SNSだけで勧誘するのは難しい」と、苦しい胸の内を語ってくれた。

    「大教室の貸し出しについても、大学に認めほしい」とAさんは訴えた。個人練習のために抽選で学館の集会室をとったとしても、部屋が小さいため、他の仲間の歌声や楽器の音が部屋の中で反響して自分の練習に集中できないという。練習場所も満足に確保できない彼らの切実な思いが伝わってきた。

    このような困難な中でも、彼ら「ブルーグラッサー」(ブルーグラスを演奏する人のこと)たちは、演奏に磨きをかけるために日々練習に励んでいることが取材を通じて伝わってきた。Aさんは、ブルーグラスの魅力を生き生きと語った。なんといってもジャムがおもしろく、即興で曲をつくって楽しめる音系サークルはなかなかないこと。また、「コーラスワーク」も魅力的で、ソロや合唱は迫力があること。とても陽気な音楽なので、いつ聴いても元気が出ること‥‥。話を聞いているだけで筆者にも楽しい雰囲気が伝わってきた。ブルーグラスに少しでも興味のある方は、ぜひ一度彼らのツイッター(@kobe_bluegrass)やHP(http://kobe-u-bluegrass.wixsite.com/homepage)にアクセスして、カントリー・ミュージックの魅力に触れてみてほしい。

    大学による課外活動の規制は、ブルーグラスサークルにとって大きな負担となっていることが今回取材して分かった。そうした中でも、彼らは自分たちの活動に誇りをもち、挫けることなく練習に励んでいる。今後、大学側の規制が少しでも緩和され、彼らの活動がより活発になることを期待してやまない。 

 

長引く課外活動規制に苦しむ文化総部加盟団体②

 軽音楽部Ⅲ 「部室を早く使わせてほしい」

                                                                              2021年7月23日

    大学側による課外活動の厳しい規制が長引く中で、活動に大きな支障が出ているサークル・部も少なくない。その中の1つ、「軽音楽部Ⅲ」に話を聞いた。 

  
    取材に応じてくれた部長のBさんによると、現在、軽音楽部Ⅲは、学外のスタジオを毎回借りて、月平均2回の頻度で活動をおこなっているという。ドラムやアンプなどの機材がそろっている学生会館の部室(408)が、大学側の規制によって全く使えないためだ。これまでは部室でいつでも活動できたが、部室が使えない今は、毎回部員にアンケートをとって希望日を集約し、参加できる人のみで練習をおこなっているという。学外のスタジオを借りると機材代なども含めて、一回あたり数千円はかかるため、金銭的に負担になっているという。Bさんは、「これまでは、部室があるからいつでも行きたいときに行って、集まった人でアドリブ・セッション(即興演奏)などができたが、今はそういうこともできない。部のメリットは、たまり場になる部室があって気軽に集まれることなのに‥‥」と、部室が使えないことで本来の活動が思うようにできない歯がゆさを率直に話してくれた。大学側には一日も早く部室を使えるようにしてほしいという切実な思いが伝わってきた。Bさんは、同じ学生会館でも、そこまで広くない部屋が貸し出し可能になっている他方で、部室がいまだ使用禁止になっていることに疑問を感じているとも話してくれた。 

    新歓の現状について聞くと、非常に厳しいとの返事。入部してくれた人はいるが、例年は、春に音系のサークル・部の約7団体でおこなう「イッキ見」というライブを開催し、これを見た新入生が入部するケースが多いが、今年はそれも中止にせざるをえなかったという。 

    ちなみに、軽音楽部Ⅲでは、バンドを固定せず、集まった仲間たちでそれぞれの楽器(ギター、ベース、ドラムなど)を使って原曲をアレンジする「アドリブ・セッション」スタイルが活動の中心だという。曲は様々なジャンルを扱うが、定番曲は椎名林檎さんの「丸の内サディスティック」など。Bさんの好きな曲は、ハービー・ハンコックの「カメレオン」というジャズ・ファンクというジャンルの曲で、テンポが速くのれる曲調だと語ってくれた。軽音楽部Ⅲに少しでも興味のある方は、ぜひツイッター(@kobe_u_keion2)やインスタグラム(instagram.com/keion2bu/)を参照してほしい。 

    軽音楽部Ⅲにとって、部室が早く使えるようになることが、いま一番必要なことだと取材を通じて感じた。一刻も早い規制の緩和が待ち望まれる。  

 

長引く課外活動規制に苦しむ文化総部加盟団体① 

                                                                              2021年7月18日

   いま、少なくない文化総部加盟団体が、新入部員が獲得できていなかったり、他大生の参加が禁止されたりすることにより、活動に多大な支障が生じ、なかには存続の危機にたちいたっている団体さえうみだされている。1年以上にわたる活動規制の影響は甚大であり、このままでは各団体が先輩たちから引き継いできた神戸大学の輝かしい文化・芸術活動が消滅してしまいかねない。私たち新聞会は、この現状を重く受け止め、各団体の窮状を取材した。 

 

    混声合唱団アポロン副部長・永尾美沙子さん(文学部4年)は、他大生部員が参加できないことによる活動への支障は大きいと訴える。アポロンには、松蔭女子大、武庫川女子大など他大学の学生も多く所属しており、パートリーダーを務めるなどアポロンの運営を中心で担ってもいる。そのような部の要となる学生が練習に参加できないことにより、神大生部員だけで部の運営をなんとかやりくりする状況がずっとつづいている。永尾さんは「他大生の団員と話した際には、練習面で神大生に皺寄せがいっていないかと心配していた。神大生の私たちは“(他大生部員を)練習に参加させてあげられなくて申し訳ない”と思っている」と、他大生部員の練習参加が禁止されていることにたいする部員たちの苦しい胸の内を明かした。 

    アポロンは昨年12月に定期演奏会の開催にこぎつけることはできたものの、ずっと一緒に練習できていなかった他大生部員は演奏会当日は手伝いに回らざるをえなかった。他大生の練習参加が禁止されている現状にたいして永尾さんは、「大学生活はたった4年間。その中で、1年以上も活動に参加できない空白期間ができてしまうのはすごくかわいそう」「演奏会に出られればいいという話でもない。一緒に練習したり、練習の行き帰りに部員同士でいろいろ話をしたり、こういう一つ一つの活動がかけがえないのない時間」と、他大生の部員をなんとか練習に参加させてあげたいという切実な想いを語った。 

    新入生の入部状況も良くないという。例年ならば毎年10名ほどは入部しているが、今年の新入部員は6名(男子3人、女子3人)。これ自身、オンライン上で座談会をおこなって部の雰囲気を感じてもらうなど、オンライン新歓を工夫した成果であり、「昨年の今頃に比べれば入ってくれた方」だという(昨年は5月時点で新入部員は1人という非常に厳しい状況だった)。永尾さんによれば、関西圏の大学だけでも、今年に入ってすでに消滅してしまった合唱団が出ているらしい。「このままではアポロンも、私たちの代が卒業したら大変になるのではないか」永尾さんは危機感を抱いている。 

    アポロンは現在週3日(月・木・土)のペースで活動しているが、神大当局が課外活動への教室貸し出しを禁止しているため、今は平日含め3日とも地元の公民館を借りて練習している。そのため、施設使用料だけでコロナ前と比較して1ヶ月あたり2万円近く負担が増えている。オンラインで練習に参加せざるをえない学生の自宅と練習会場とをリモートでつなぐためのwi-fiのレンタル費用もかさむ。これらすべてをあわせると、年間の活動費はコロナ前と比べ約20万円も増加。部の財政は逼迫している。平日の練習時間も、そもそも公民館の夜間の貸し出し時間が短くなっているのに加え、会場への移動時間、練習の合間におこなう換気・消毒作業などに時間をとられ、大学の教室を借りて練習していたときと比べると大幅に削られている。コロナ前には学内の部室等で当たり前のようにおこなっていた部員への個別指導もほぼまったくできていない。「一対一の練習を増やしたい」という声は後輩たちからもあがっており、切実な問題だという。 

    神大当局は“感染者が出たばあいの「責任の帰属」が曖昧”という理由で他大生の活動を禁止しているが、小・中・高校や社会人、プロの団体などは、感染対策を最大限おこなうことを前提にして、活動を再開している。なぜ大学生だけがいまなお過度な規制を強いられなければならないのか。どうしても理不尽さは拭えない。このことについて尋ねると、永尾さんは、大学の立場に理解を示しつつも「小・中・高は良いのに大学生はダメ。『なんで?』という思いはある」とやりきれない胸の内を語った。大学の教室貸し出しが禁止されていることについても「大学の団体なのに、大学の施設が使えないのはやはり納得できない」「大学側には、学生の活動を規制するんじゃなくて、学生の活動を守るという気概がほしい」と語った。1年以上も思うように活動できず、今後の見通しもたたない苦しさがにじんでいた。 

    大学への要望として、永尾さんは、第一に他大生の活動参加許可を挙げ、「学生の貴重な大学4年間を守ってほしい。条件つきでもいいので、参加する道をつけてほしい」と訴えた。第二に、学内の教室を使用した活動許可を挙げ、「公民館の使用料にとどまらず、部員たちの交通費もかさんでいる。平日1日だけでもいいので、許可してほしい」と語った。 

    アポロンは、7月11日に予定していた他の合唱団も参加しての「Jointコンサート」が感染対策を理由に中止となったばかり。いまはコンサートの代替案として、同じ神大の混声合唱団エルデと合同でオンラインで演奏を配信するために、演奏の録画・収録をおこなっている。合唱という活動にたいする世間の厳しい視線をうけながらも、その美しい歌声で合唱の魅力を私たちに伝えるために、アポロンの部員たちは、さまざまに創意工夫をこらしながら活動をつづけている。一刻も早く、過度な課外活動規制に苦しむ状況が改善されることが求められている。 

文化総部オンライン総会で

新たな常任委員会の体制を確立

                                                                                 2021年2月12日

    2月8日、午後12時30分から50分にかけて、文化総部に加盟する25団体の代表者の参加のもと、文化総部のオンライン総会が開催された。 

    この日の議題は、今後の文総常任委員の人事についてであった。これまで文総委員長の役職は自由劇場の部員が担っていたが、その自由劇場がコロナ対策のガイドラインに違反して活動し、さらに大学にたいして虚偽報告をおこなっていたことを理由として、大学当局から1年3ヵ月の停部(活動停止)という処分を課されてしまった。この現状にふまえ、今後も自由劇場の部員が文総委員長を継続すべきか否かを核心的な内容とする文総常任委員の新たな人事案について、総会で採決がおこなわれた。 

    総会の冒頭、議事進行を務める文総書記局長(新聞会部員)から、議題の確認と簡単な問題提起がおこなわれた。書記局長は、自由劇場が停部にいたった経緯を簡単に説明するとともに、自由劇場に対して一方的に1年3ヵ月の停部という極めて厳しい処分を下した大学当局の対応についても「疑問」を呈した。 

    そのうえで書記局長は、「これまで自由劇場の方は文総委員長の役職を責任をもって担い、文総加盟サークルの利害を守るために尽力してこられた」と話し、自由劇場のメンバーに引き続き委員長の役職を担ってもらいたいという意志を表明した。同時に、自らも文総副委員長として、委員長を支えながら文総全体が一致結束できるように努力したいと決意を明らかにした。書記局長は、昨年文総加盟団体が結束して要望書を大学へ提出したことによって文化系団体のキャンパスでの活動再開を実現した成果にふまえ、今後も文総全体で協力していこうと参加者全員に呼びかけた。 

    最後に、来たる2021年度新歓を成功させるために、対面での新歓祭の実現にむけ奮闘している新歓祭実行委員会とともに文総常任委員会も尽力する決意を述べ、書記局長は問題提起を終えた。 

    その後ただちに、自由劇場の部員が委員長を継続し、新聞会の部員が副委員長を担うという内容の新たな人事案について採決がおこなわれた。その結果、賛成24(うち不在者投票2)、反対2、保留(無投票)1の賛成多数で人事案は承認され、文化総部規約第11条にもとづいて、新たな常任委員会の体制がつくられた。 

    こうして、文総加盟サークルは、新たな常任委員会の体制のもと文総全体が結束することの重要性を確認してきた。この地平にふまえ、キャンパスでの活動が未だに大きく制限され、少なくないサークルが十分に活動できていないという厳しい状況が一刻も早く改善されることを期待したい。 

神戸大学マンドリンクラブ 

「第65回定期演奏会ONLINE」を開催

                                                                                                                2021年1月13日

    神戸大学マンドリンクラブは、「第65回定期演奏会ONLINE」を開催し、1月10日(日)の18:00よりYouTube上でプレミアム公開している。昨年12月に、神戸大の百年記念館六甲ホールでおこなった演奏を収録したものを、動画で公開した。弦楽器のマンドリンを中心にした合奏が披露された。
     冒頭で、神戸大の愛唱歌「商神」が演奏され、〈第Ⅰ部〉が幕を開けた。そして、まるで「瞑想」の中の世界が広がっていくような壮大さを感じさせる「詩人の瞑想」(ジュゼッペ・マネンテ作曲)が披露された。続いて、鈴木静一作曲の狂詩曲「海」が演奏された。穏やかなリズムで始まったかと思えば、急にリズミカルになったり、三味線を彷彿とさせる日本的な旋律を感じさせる音になったりと、次々と変化して私たち視聴者を楽しませてくれた。
    〈第Ⅱ部〉では、20名ほどの部員たちによるアンサンブルが披露された。「君をのせて」「星影のエール」「Pretender」というマンドリンに詳しくない視聴者にとっても馴染みのある曲が演奏され、マンドリンの温かみのある音色によって原曲とは一味違う音楽が楽しめた。
    最後の〈第Ⅲ部〉では、大栗裕作曲の「マンドリンオーケストラのためのシンフォニエッタ第6番『土偶』」とアルリ・ゴ・カペルレッティ作曲の「劇的序曲」が演奏された。前者は、コントラバスの重低音が強調された不思議な曲であり、後者は、明るく迫力のあるサウンドが聞くものの気分を高ぶらせる曲であった。
    3部構成の演奏を聞き終えた視聴者は、感動し、画面の中の部員たちにたいして心の中で拍手を送ったことだろう。こうした視聴者の“拍手”に応えてなのだろうか、〈アンコール〉として「願いの叶う本」と「はるかな友に」が演奏された。マンドリンの優しい音色に私たち視聴者は包まれた。
    50名以上の部員たち一人一人が指揮者の振るタクトに合わせて正確に演奏することによって、ダイナミックで調和のとれた音楽が見事につくり上げられた。新型コロナの感染が拡大する以前のような練習はできない厳しい条件の中でも、視聴者を楽しませる音楽をつくり上げようと部員一丸となって練習してきた成果が、演奏会で発揮されたことは感動的である。ぜひYouTubeを視聴して、部員たちがつくり上げた圧倒的なオーケストラサウンドを体感してみてはいかがだろうか。


「神戸大学マンドリンクラブ第65回定期演奏会演奏曲解説」
演奏曲解説.pdf - Google ドライブ



神戸大学競技ダンス部が

全日本学生競技ダンス選手権大会で全国3位に輝く 

                                                                                                                                         2020年12月25日 
 

     

  神戸大学競技ダンス部「Green Backs」は、12月12日(土)、13日(日)の2日間にかけて東京ポートシティ竹芝にて開催された「第65回全日本学生競技ダンス選手権大会」において、団体成績で見事全国3位に輝いた。 

  競技ダンスとは「男女がペアとなり演技における技術や芸術要素を競うものであり、社交ダンスを競技化させたもの」(神戸大学競技ダンス部HP)である。競技ダンスは大きく「モダン」と「ラテン」の2つの部に分けられ、学生競技ダンス連盟では主にスタンダード(モダン)の4種(ワルツ、タンゴ、スローフォックストロット、クイックステップ)とラテンの4種(チャチャチャ、サンバ、ルンバ、パソドブレ)を扱っている。 

  全日本学生競技ダンス選手権大会は、全国の国公私立大学の競技ダンス部が結集して学生の頂点を目指す非常にレベルの高い大会である。今年の大会は、例年会場となっていた獨協大学35周年記念アリーナが新型コロナウイルス感染拡大の影響で借りることが困難となったため、民間の施設を使っての、無観客での開催となった。会場で試合を観戦できない観客に向けては、YouTubeを利用して大会の様子を配信するという方式がとられた。大会は、12日に〈スタンダードの部〉の4種が、13日に〈ラテンの部〉の4種がおこなわれ、それぞれの種ごとに各大学を代表してペアが出場し、練習で培ったダンスの技術や芸術要素を競いあった。 

  大会で披露されたダンスは、観客を大いに魅了するものだった。優雅で華麗なワルツ、力強さのなかに哀愁を感じさせるタンゴ、情熱が激しくほとばしるチャチャチャなど、ペアの息のあったステップ、キレのあるダンス、真剣かつ楽しそうな表情に目が釘付けになった。ダンサーたちが身にまとう華やかな衣装もダンスの魅力を引き立てていて、とても印象的だった。画面からも会場の熱気が伝わってくるほど、すばらしいダンスが繰りひろげられた。 

  新型コロナウイルス感染拡大の影響で多くの大会が中止となるなか、学生たちの強い想いと周囲の支えによって実現された今年の冬の大会。神戸大学競技ダンス部の公式ツイッターには「この大会で4回生が最後の試合であり、全国3位という結果が残せて感動的でした」と部員たちの万感の想いが記されている。困難な状況下でも日々練習を積み重ねてきた成果が、4回生最後の試合で全国3位という好成績として結実したのは、本当に感動的である。今後の競技ダンス部のさらなる活躍に期待したい。 

   なお、大会の様子は現在もYouTubeで視聴することが可能なので、華麗かつ情熱的な競技ダンスの戦いをぜひご覧になってはいかがだろうか。 


混声合唱団エルデ 第57回定期演奏会ひらかれる 

                                                                                                                                         2020年12月25日 
 

    神戸大学混声合唱団エルデは、12月12日に、神戸文化ホールの大ホールで第57回定期演奏会を開催した。大ホールは2000人以上収容でき、新型コロナウイルス感染対策で観客同士が距離を取るために十分な広さが確保されていた。大ホールの大きなステージに私たち観客が期待を膨らませる中、定期演奏会が始まった。

「1st ステージ」では相澤直人先生作曲の混声合唱アルバム「風にのれ、僕らよ」が披露された。1曲目の「訪れ」は、春の訪れを感じながら、未来に夢を抱くという歌だ。夢に胸を躍らせる曲を歌うエルデの団員たちの姿と歌声に、歌うことができる喜びが伝わってきたように思えた。最後の4曲目の「果てしない助走」では、歌詞にあるような「全力」を感じさせる歌声のハーモニーが心を震わせた。苦しい中でも前を向かせてくれる、音楽の力を感じさせるようなステージだった。

「2nd ステージ」では、演劇と合唱を融合させたオリジナルのステージ「笑うロボット」が披露された。「オリジナル」とあるように、脚本も、劇中歌も、エルデの団員が作ったものだ。大ホールの大きなステージを目一杯使った演劇はユーモアにあふれ、私たち観客を楽しませてくれた。このステージのために作られた音楽は、登場人物たちの思いや気持ちについて、聞く者の想像力をわかせてくれるものであり、ステージのテーマである「感情」がハーモニーに乗って伝わってきた。

  「3rd ステージ」では、イギリスの「キングズ・シンガーズ」の全盛期のメンバーの一人であるボブ・チルコットの音楽の中から、エルデが選んだ3曲が披露された。特に印象に残ったのは、12月にぴったりのクリスマスソング「The Twelve Days of Christmas」だ。クリスマス期間の12日間、「愛する人」から「私」へ毎日届けられる不思議な贈り物を歌った曲。日がたつごとに贈り物が積み重なり、曲調が変わっていくところが面白い曲だった。

  プログラムでは以上の3つのステージが予定されていたが、最後にサプライズで、相澤直人先生作曲の「会いたくて」が披露された。今年でエルデを卒業する、胸にコサージュをつけた4回生の団員が前方の列に出てきて、後輩たちとともに定期演奏会の最後を締めくくった。卒業する団員の表情はとても生き生きとしていて、この定期演奏会が実現できたことの喜びが伝わってきた。新型コロナウイルスの影響で活動が制限される中で、団員の方々が様々な苦労をされたことは想像に難くない。そのような中でエルデが実現した定期演奏会は私たち観客を感動させる最高のものだった。 



混声合唱団アポロンが第58回定期演奏会を開催 

                                                                                                                                         2020年12月19日 
 

    神戸大学混声合唱団アポロンは、12月12日(土)、あましんアルカイックホール(尼崎市)にて第58回定期演奏会を開催した。今年の定期演奏会は、新型コロナウイルスの感染防止策として、会場への入場をアポロンのOB・OGならびに現役団員の親族に限定し、一般客向けにはYouTubeでのライブ配信をおこなうというかたちで実現された。ライブ配信では、すばらしい歌声はもちろんのこと、複数のカメラを駆使して会場全体を映したり指揮者や合唱隊の表情をアップで映したりと、巧みなカメラワークで視聴者にも会場の臨場感が伝わるよう工夫していることが伝わってきた。すべての視聴者が、会場の人々とともにアポロンの団員たちの合唱に深い感動を味わうことができたのではないだろうか。

    演奏会は14:30に始まった。飛沫対策として団員全員がマウスガードをつけた状態での合唱だったが、それを感じさせないようなすばらしい歌声が会場を包み込んだ。

    〈第1ステージ〉では、「混声合唱のための楽興の時『枕草子』」が披露された。清少納言が移ろい行く四季にたいする感動を独自の感性でしたためた「枕草子」が、アポロンの合唱によってまるで壮大な叙情詩のように表現豊かに展開されていった。合唱は、静けさのなかに深みを感じさせるような調子からはじまり、途中から一転して軽やかな調子へと変わる。合唱の合間にかけ声や手拍子も挿入され、見るもの・触れるものすべてにたいする喜び・慈しみの心を体全体で表現しているようで、とても躍動感に溢れていた。その後、煌々と月の光に照らされた夜の静寂や、春の陽光に照らされて新しい生命が芽吹く情景を思い起こさせるような調子へと展開していき、最後は冬の凜と張りつめた空気のなかにどこか温もりを感じさせるような合唱で締めくくられた。合唱を聴きながら、雲の形・夕暮れの空・風の音・虫の声などが次々と浮かんでくるほどに、四季の移ろいを見事に歌いあげた合唱だった。

    〈第2ステージ〉の「混声合唱とピアノのための組曲『歌が生まれるとき』」では、今回の演奏会を最後にアポロンを引退する4回生の団員たちが、後輩たちから送られたコサージュを左胸に付けて、後輩たちとともに合唱に臨んだ。ピアノの重低音のメロディーとともに始まった合唱は、まるで世界の崩壊を思わせるような胸のざわつきを聴く者に喚起させた。だがその後一転して、合唱は安らかな調子へと変わり、やがて暗雲に覆われた世界が晴れ渡っていくかのように、ピアノの透き通ったメロディーとともに音楽への喜びを歌いあげるものへと展開していった。コロナ感染拡大の影響で困難な状況がつづくなかでも、今・この瞬間合唱ができる喜びを全力で歌いあげる、そのような団員の強い思いが伝わってきた。そのことは、第2ステージの後に挨拶をおこなったアポロン部長の「先ほどの歌にあった『想像してほしい、音楽に満ちた世界を」という言葉は、いまだからこそ心にしみる言葉だと思う」という発言にも示されていると感じた。

    〈特別ステージ〉の「Gloria」は、練習時間が十分に確保できなかった影響で通常より短縮したバージョンでの実施となったが、躍動感あふれる合唱に会場から「ブラボー!」という歓声があがるなど、観客を魅了するすばらしいステージだった。最後に、本来なら今年5月の演奏会で発表する予定だった「抱きしめる」という曲が特別に披露された。コサージュを付けた4回生たちが最前列に一列に並び、その後ろに後輩たちが並ぶかたちで、やさしさと温もりに溢れた合唱が会場を包み込んだ。

    こうして、今年の定期演奏会は幕を閉じた。課外活動が制限されるという困難な状況のなか、互いに支え合いながら練習を積み重ねてきたアポロンの団員の歌声は、私たちに合唱の魅力をあらためて感じさせるものだった。アポロンの今後のさらなる活躍に期待したい。



競技かるた会、久々の大会で好成績 

                                                                                                                              2020年12月19日  

 

    神戸大学競技かるた会は、11月8日・22日・23日に近江勧学館(滋賀県・大津市)でおこなわれた第70回高松宮杯近江神宮全国競技かるた大会(B級の部)に出場し、神戸大競技かるた会の会員1名がB1級で見事3位の好成績を残した。競技かるたとは、百人一首の札を1対1で取り合う競技。B級は、B1級からB8級まで8クラスあり、参加者は総勢で216名。B1級は29名で競った。今回の大会は2月の静岡大会以降久しぶりの大会であり、例年通りの十分な練習ができない中、会員たちが創意工夫しておこなった練習で培った集中力を発揮してつかみとった快挙だと言える。今後の競技かるた会の躍進に注目したい。


「Ms.Campus KOBE」「神大ボーイズコンテスト」

オンラインで開催

                                                                                                                              2020年12月19日  

 

    六甲祭実行委員会は11月28日、「Ms.Campus KOBE 2020」のファイナルイベントを開催し、その様子をYou Tube LIVEで生配信した。これに先立つ11月8日には、「神大ボーイズコンテスト」の結果発表がツイッター上でおこなわれ、数か月にわたってSNSを舞台にしておこなわれた両イベントは幕を閉じた。 

    今年の六甲祭は、新型コロナの影響で残念ながら中止を余儀なくされた。そのような対面での六甲祭が実現できない中で六甲祭実行委員会は、代わりに例年恒例となっている「Ms.Campus KOBE」と「ボーイズコンテスト」の二大イベントを新たな試みとしてオンラインで開催することを決定した。 
    「Ms.Campus KOBE 2020」は、8月中旬にファイナリスト5人が発表され、11月下旬までの約3か月にわたってツイッターやインスタグラム、TikTokなどを使ってそれぞれがピアノなどの趣味を披露したり、思い思いのファッションでアピールした。主催者のHPによると、「Ms.Campus KOBE」では、「出場者の内面の美しさにもスポットをあてる」ことや、「高いファッション性、異国情緒溢れる街並み、海や山などの自然」など「一つの枠におさまりきらない神戸の魅力を全国に発信」することなどをコンセプトに掲げているという。このコンセプトに応える形で、出場者たちは、地元の美容室の協力を得て神戸の様々なスポットで洗練されたファッションを披露したり、どのような思いで参加しているのかをツイッターなどで発信したりと工夫をこらしていた。11月28日のファイナルイベントでは、ウェディングドレスに身を包んだ5人によるファッションショーがおこなわれ、視聴者を魅了した。見事栄光のグランプリに輝いたのは、医学部医学科4回生の中島梨沙さん。準グランプリは医学部保健学科3回生の酒井萌花さん。 

    「神大ボーイズコンテスト」は9月中旬に出場者6人が選出され、11月の結果発表まで約2か月にわたり出場者たちが「自撮り写真」や「出身地アピール」など毎週決まったテーマに即してツイートをおこない、それぞれの個性をアピール。また、インスタグラムを使ったLIVE配信も適宜おこなわれ、大きな盛り上がりを見せた。見事グランプリを手にしたのは、工学部4回生の正森明生さん。準グランプリは国際人間科学部1回生の島崎裕貴さん。 

    今回、対面の六甲祭は中止となってしまったが、このような逆境のもとでも神戸と神戸大生の魅力を全国に発信し来年の六甲祭につなげるために、六甲祭実行委員会のメンバーたちが今回の二大イベントの開催にこぎつけたことは、非常に価値あることだったのではないだろうか。来年はぜひ対面での六甲祭が実現できることを期待したい。

落語研究会が「第6回尼崎落研選手権」で

見事特別賞を受賞

                                                                                                                              2020年12月14日  

 

    神戸大学落語研究会は、12月5日(土)に近松記念館(尼崎市)で開催された「第6回尼崎落研選手権」に出場し、甲家曳砂くんが見事特別賞を受賞した。

  人間国宝である落語家・桂米朝さんが在住されていた尼崎市は、桂一門による落語勉強会や地域寄席が市内各地で盛んに開催されている。その尼崎市で開催される本選手権には、全国の大学の落語研究会が出場し、各大学の落研の代表者1名ずつが毎年レベルの高い落語をくりひろげている(優秀な成績をおさめた学生はプロの落語家に弟子入りしてもいる)。

  今年の選手権は、阪大・立命館といった関西の大学の他に、国際基督教大・中央大など首都圏の大学からも落研の代表者たちが出場し、ハイレベルな落語をくりひろげた。そのなかでわが神戸大落研の甲家曳砂くんが特別賞を受賞したことは、画期的なことである。課外活動が制限され、例年どおりの稽古ができないなかで、さまざまな工夫をこらしながら落語の腕を磨いてきたことが、見事に結実したのだと思う。落語研究会の今後のさらなる活躍に期待したい。

   なお、第6回尼崎落研選手権の模様は、年明けの1月4日(月)~1月10日(日)の期間に、21時からケーブルテレビ「ベイコム12ch(地上デジタル121ch)」にて放送される。ぜひ視聴してみてはいかがだろうか。 


「King of Stage」オンライン上で初開催

                                                                                                                              2020年12月14日  

 

    11月14、15日に、神戸大学放送委員会(KUBC)が主催する「King of Stage」がYoutubeLiveでライブ配信された。例年は、六甲祭での催しの一つとして大学のキャンパスでのステージイベントをおこなっていた。しかし、今年は、新型コロナの影響によって六甲祭が中止となったため、初めてオンライン上での独自開催となった。

  2日間にわたる「King of Stage」のパフォーマンスは、多岐にわたった。ラジオの生配信や人狼ゲーム、事前に収録した映像を放送する「番組発表会」などである。その一部を紹介する。

  「狂気の楽しい六甲実験室」では、実験を行い、その結果がどうなるのかを3つの選択肢から答えるクイズが出された。3問のクイズに答えてメールを送り、全問正解なら抽選で景品がもらえた。答え合わせでは、実験結果について科学的な原理を説明しながら、わかりやすく解説していた。KUBCアナウンス部による「朗読」では、『5分後に思わず涙。世界が赤らむ、その瞬間に』(桃戸ハル編著)が読み上げられた。読み手の透き通った声と流れるような音読によって、家族愛にあふれた作品に入り込むことができ、感動がより一層こみあげてきた。

  全体として、内容の豊富さはさることながら、KUBCの企画に対する真剣さが伝わってきた。また、一方的に映像を流すのではなく、なるべく視聴者が参加できるような工夫がなされており、双方向型のイベントとなった。例えば、ライブ配信をみている視聴者からチャットで届いた感想にたいして、そのコメントに主催者が応えていた。 

   準備のための活動場所や活動時間が制限されていたり、例年とは何もかもが違うオンライン上での開催になったりと、KUBCの部員たちは、困難に直面しただろうが、それを乗り越えて「King of Stage」を見事に成功させた。今後の活動も目が離せない。


「神戸大学写真部オンライン写真展」おこなわれる

                                                                                                                              2020年12月14日  

 

    神戸大学写真部は、11月13日から17日にかけて「神戸大学写真部オンライン写真展2020」を開催し、新たに入部した1回生の作品から今回の写真展を最後に引退する3回生の写真までいろいろなジャンルの作品が展示された。「海と山」と題した経営学部1回生「J.T」さんの作品は、手前に写る山々とはるか向こうに見える海との遠近感が絶妙で、緑と水色のコントラストが美しい。空に浮かんだ雲も写真にアクセントを添えていた。国際人間科学部3回生「くろこまる」さんの作品「into the sunny place」では、水槽の暗がりの中を泳ぐイルカ(おそらく)が上空から差し込む光に照らされて水色の光線の中に体をくねらせた姿を浮かびあがらせる、まさにこの瞬間しかないというタイミングで撮られた写真だ。イルカの躍動感と光に照らされて楽しんでいる様子が伝わってくる幻想的な一枚だった。その他にも、ジャンボジェット機が真上を飛ぶ姿を撮影した「空に憧れて」(経済学部1回生「sugi」さんの作品)や、本がびっしりと並べられた半円形の本棚が見渡す限り広がる「Memory&Oblivion」(経済学部3回生「Ryle」さんの作品)など、部員それぞれの個性が伝わってくる写真が数多く展示された。課外活動の制約により十全な活動ができない中でもこのような質の高い写真展を実現したことは、写真部の努力の賜物ではないだろうか。展示会そのものは現在は閲覧できないが、写真部のツイッター上で適宜作品を紹介している(ツイッターのアカウントは@kobe_photo)。ぜひ一度ご覧になってはいかがだろうか。 


「漫研六甲祭」開催

                                                                                                                              2020年12月14日  

 

    今年の六甲祭が中止になる中、漫画研究会は11月13日から15日にかけて、独自のオンライン展示会「漫画研究会六甲祭」を開催した。Web上でおこなわれたこの展示会では、テーマパネル展示、フリーパネル展示、漫研部誌の公開などがおこなわれた。テーマパネル展示では、今年のテーマ「星」にちなんで各部員が日頃磨き上げてきた作画技術を駆使して様々な展示を掲載。「CLIP STUDIO PAINT」というイラスト制作ソフトを使った1回生「のか」さんの作品「コレクション」では、流れ星が星空を流れる中、気球に乗った冒険家風の女性が夜空を眺め、気に入った星を「コレクション」しているような幻想的な様子を描いた(記者の個人的な感想です)。臨場感があふれ、暗闇の中にも気球と女性の姿を浮き立たせる手法が見事だと思った。フリーパネル展示では、特定のテーマにこだわらず、それぞれの部員が気に入っているテーマや構図でイラストを製作し展示。その他にも漫研部誌の公開では、「悪魔」をテーマにしたモノクロのイラストや漫画が楽しめ、漫研の魅力を存分に堪能できる展示会になっていた。このWeb展示会は、現在も閲覧可能(kucc-rokko-festival.herokuapp.com/#/より)。まだ見ていない方はぜひ一度足を運んでみては。 


8ヶ月ぶりの文化総部総会をオンラインで開催

財政的支援と課外活動規制の緩和を大学に求める
新たな要望書を満場一致で可決

                                                                                                                              2020年10月3日  

 

    9月29日の12時30分から45分にかけて、文化総部に加盟する27団体の代表者の参加のもと、文総総会が開催された。コロナ下での今回の総会は、テレビ会議方式でおこなわれた。
    今回の総会でとりあげられた議題は、新聞会のメンバーからの文総常任委員会入りについてと、文総として新たに大学側に提出する「課外活動の再開に関する要望書」についての2つであった。
    短時間の開催であったが、議論された内容は今後の文総加盟各団体にとって、とても重要な意味をもつものであり、後期授業が始まる直前にこの総会が開催された意義は決して小さくない。

文総加盟団体の厳しい現状の改善のために━━新書記局長を承認

    オンラインで参加している各団体代表者にたいして、委員長から、「まだまだ苦しい文化総部加盟団体の現状を改善するために、新聞会の代表にも常任委員会を担ってもらい、書記局長としてがんばってもらおうと思います」という提起があった。
    この新たな人事案の提起を受けて採決され、満場の一致で新聞会代表の常任委員会入りが承認された。文化総部規約第11条にもとづいて、常任委員会の新たな体制がつくられた。

文総として学外施設の利用料の補償、教室・部室の利用などを求める

    つづいて、大学への要望書案について、提案と採決がおこなわれた。
    要望書案では、学外施設の利用料の補償、育友会の補助金を例年通り各団体へ支給すること、そして教室、部室の利用を認めることの3項目を大学側に求めている。(要望書は記事の末尾に掲載)
    総会ではこの要望書案を、賛成27、反対0、保留0の全会一致で可決した。そして文総として要望書を大学に提出することが確認された。
    このように、各サークルのうちつづく厳しい状況をのりこえるために文総加盟団体が総会を実現し、課外活動の再開にむけて、常任委員会の体制を強化するとともに、大学側への新たな要望書を提出することを確認してきた。そして、この文総総会の実現をつうじて、文総としての結束をよりいっそう強めたといえる。私たち神大の課外活動団体にとって実り多い秋となるように、新たな要望書への大学側の対応に注目したい。


↓↓文総として大学に提出する要望書

神戸大学学務部学生支援課 御中

2020年9月29日

課外活動の再開に関する要望書

 

文化総部

 

 私たち文化総部は、以下のことを要望いたします。

 

○学外施設の利用料の補償を求めます。

○育友会の補助金を例年通り各団体へ支給することを求めます。

○教室、部室の利用を認めることを求めます。

 

    9月10日付の「学内施設における課外活動の一部実施について」では、10月以降の学生会館を利用しての活動などが認められたものの、学外施設の利用料の補償や、教室、部室の利用についてはいまだ回答がありません。

    私たち加盟団体の中には、この間のたび重なる学外施設の使用にともなう利用料が大きな負担となり、部の財政がひっ迫している団体もあります。また、私たち文化系団体の主要な活動場所である教室、部室の利用が禁止されたままであるために、活動が十分にできず苦しい状況にある団体が少なくありません。このままの状態が続けば、後輩への活動の引き継ぎさえままならなくなる団体すら生み出されかねません。私たちはこのような現状に強い危機感を抱いています。

    私たちはこのような苦しい状況をできるかぎり早急に打開したいと念願しています。「神大文化の向上と他大学、地域との文化交流をはかる」(文化総部規約・第2条)という理念にもとづいて、先輩から継承してきた神大における多種多様な文化・芸術活動を推し進めてきた私たちは、コロナパンデミックの下においても、感染対策を徹底することと両立させるかたちで、神大の課外活動の伝統を絶やすことなくさらに発展させていきたいと考えています。つきましては、私たちのサークル活動、文化活動の前進のために、上記の項目の一刻も早い実現を大学に求めます。

 

    以上です。ご検討よろしくお願いします。



文総加盟団体の要望書提出が大学を動かす
文化系団体も学内での課外活動再開へ

                                                                                                                         2020年9月11日


 
    文化総部常任委員会と文総加盟の14団体による課外活動の再開を求める要望書提出(9月1日付の記事参照)が、画期的な成果をもたらした。要望書の提出をうけた大学当局は、学生会館と鶴甲第1キャンパスの施設(M101、D300)を利用しての課外活動を認めると発表(9月10日付)。なお一部であるとはいえ、音楽系をはじめ、多くの文化系団体が切実に求めていた学内での活動再開の道が、ついにひらかれた。
 

文総の団結した力示す

    大学当局は8月7日付の通知以降、学内運動施設の利用は認める他方、文化系団体が活動拠点にしている学館や教室などの施設の利用は不許可のままにしてきた。ダブルスタンダードとしかいいようのない当局の措置にたいして、文総加盟団体をはじめとして、「不公平だ」という不満の声、さらには「このままだと一年間何も活動できずに終わってしまう」という悲痛な声があがっていた。にもかかわらず、当局は「使用を許可されなかった学内施設について、使用許可をあらためて依頼する連絡が散見されますが、どうすることも出来かねます」(学生支援課からのメール、8/11)というように、学生たちの切実な訴えをことごとく一蹴してきた。文総加盟の各サークルは、当局の決定に不満を抱きつつも、泣き寝入りを強いられようとしていた。
    このような現状をなんとか打開するためにもちあがったのが、文総加盟団体の連名で要望書を大学当局に提出しようという話であった。“同じ苦境にある文総加盟団体が横につながり、団結した力で当局に要求していくことで、なんとか現状を改善したい”このような思いのもと、要望書に賛同する14団体と文総常任委員会が連名で「課外活動の再開に関する要望書」を大学当局に提出(8/31)。これが当局に大きなインパクトを与えたのは間違いない。今回、当局が学館と一部の施設を利用しての課外活動を認めたことは、学生の団結したとりくみが大学当局をも動かす大きな力をもっていることを示したといえるだろう。
 

残りの要望実現にむけて

    とはいえ、今回の大学当局の決定ですべてが解決したわけではない。要望書では、「感染対策にふまえた対面での新歓」と「学外施設の利用料の補償」も大学に求めている。対面での新歓ができないことによって、新入部員が獲得できず、存続の危機にたつサークルは少なくない。やむをえず学外施設を利用しているサークルは、たび重なる利用料が重い負担となっている。それだけではない。教室を主な活動場所にしている団体は、なお活動が厳しい状況にある。これらの状況を改善していくためにも、文総の団結した力でひきつづき大学当局に回答を求めていく必要があるだろう。



関西の大学 後期対面授業の流れ
課外活動の再開も次々と

                                                                                                                             2020年9月4日

    神戸大では、10月1日から開始される後期授業がオンライン授業中心となることが決定し、一部の講義や実習、実験などが対面で実施される可能性がある。課外活動については、学外での活動と学内運動施設の一部の利用が認められている。その他の関西の大学では、どのような状況なのかみていきたい。
 

「原則」対面授業の大学も

    後期の授業について、関西大や奈良女子大、兵庫県立大は、感染対策を実施したうえで原則として対面授業をおこなうことを発表した。対面授業を中心にしてオンライン授業を併用する大学もある。大阪府立大、同志社大などがそうだ。大阪大では、コロナ下における「大学の平常化を目指す」として、対面授業とオンライン授業を併用して授業を実施する予定となっている。前期の授業を原則オンラインで実施していた大学が、後期は対面での授業を増加させる傾向があるようだ。オンライン授業では授業の質を維持することが難しいことや、パソコンやスマホの画面を長時間見続けることによって頭痛や視力の低下などの不調を訴える学生が続出するなど、心身ともに負担になっている。そもそも、様々な大学の施設を利用する前提で、高い学費を払っている学生からは、不満や怒りの声があがっている。感染を完全に予防できないにしても、できる限りの感染対策を講じて対面授業を増加させていくのは必然の流れにあるといえる。
 

課外活動の“始動”へ

    対面授業の再開はすすんでいるようだが、課外活動についてはどうだろうか。
    大阪大では、すべての団体が「屋外及び屋内における身体的接触を伴わない練習等」が実施可能となっている。滋賀大では、課外活動について「感染防止対策の上、実施」することが可能となっている。参加人数の上限を50人以内としていた制限を、9月1日から上限を100人以内とするなど制限を緩和している。他にも制限を緩和している大学はある。和歌山大では、「学外における対外試合(日帰り遠征を含む)」や「学外における収容定員を考慮した演奏会」が、他の大学に先駆けて許可されている。また、関西大では、コロナ下における「通常どおりの再開」にむけて「情勢を踏まえて段階的に緩和を試みる」としている。現在は、参加人数30人以下で3時間以内の活動が認められている(大阪の千里山キャンパスの場合)。神戸大学とは違って、屋内の施設も参加人数に制限は設けられているが利用可能となっている。
    関西学院大では、9月21日からの秋学期の授業を原則オンラインで実施することが決定しているが、大学側の審査で許可がでた団体は学内施設を利用した課外活動が可能となっている。遠征の実施も認められている。
    関西の多くの大学では、活動の再開や制限の緩和がすすんでいる。屋内の活動に関しても、最低でも1時間おきに換気するなどのコロナ対策を実施したうえで許可されている大学も多数見うけられた。部活・サークルを真剣に取り組んできた学生にとって、課外活動が再開されることはうれしいことだ。神戸大学の今後の動向を注視してきたい。


文化総部加盟団体 当局に要望書を提出

常任委員会と14サークルの連名で活動再開を求める

                                                                                                                 2020年9月1日

    8月31日、文総常任委員会と文総加盟の14団体は、連名で「課外活動の再開に関する要望書」を大学当局に提出した。キャンパス封鎖によって活動ができず苦境にたたされるサークルが課外活動の再開を求める声をあげた。

学生会館などの学内施設の利用求める

    要望書では、学生会館・部室・教室等の利用を容認するよう当局に求めている。こうした要望がでるのは、文総加盟の多くのサークルが「必要な楽器・機材が学生会館や部室等の学内施設に保管」されていて、今春以降活動がまったくできていないからだ。他にも、学外施設の利用料の補償、対面での新歓の実現といったことも要望している。「たび重なる(学外施設の)利用料が重い負担」となっているサークルや、オンラインでの新入生の勧誘がうまくいかず新入生の入部が「ゼロ」になっているサークルもあるようだ。サークルの苦境をなんとかしたいという思いが要望書には込められている。

学内運動施設の利用のみ認める決定 「明らかに不公平」

    ほぼ全てのサークルが苦境にたたされている中、8月7日に「学内運動施設における課外活動の一部実施について」が大学から発表された。9月1日からグラウンドや体育館などの運動施設の利用を認めることになった。それ以外の施設(学生会館など)の利用は禁止されたままとなった。
    「体育系団体の学内での活動を認める他方で、文化系団体の学内での活動を認めないままにする合理的な理由はなく、明らかに不公平だ」
    要望書は、こう断じている。このまま学内活動の禁止が続けば、今秋にひかえている演奏会や公演などを中止せざるをえなくなり、「悔しい気持ちを抱えながら引退しなければならない学生が続出しかねない」との危機感からだ。しかも、入部してくれた新入生どうしが交流できていないために、「活動意欲を喪失しかねない」との不安もかかえている。
    「独自の感染対策のガイドラインを作成している(文総加盟の)団体もある」にもかかわらず、「運動施設とその他の学内施設の利用との間に差が設けられるのは、納得がいかない」と、感染対策の面でも“差”を設ける理由がないことを強調している。

文化・芸術活動の創造 「神戸大学の魅力の一つ」

    要望書では、文化総部が「多種多様な文化・芸術活動を創造してきた」としている。「「神大文化の向上と他大学、地域との交流をはかる」(文化総部規約第2条)という理念にもとづく私たちの活動が、神戸大学の魅力の一つにもなっている」と、サークル活動の意義を訴えている。
    神大の各サークルが自主性・創意性を発揮して文化・芸術活動をおこなってきたことは、新入生さらには神大を目指す受験生にとって魅力的なものに映っているのは間違いない。文総加盟団体の訴えに大学側はどうこたえるのだろうか。


↓↓文総加盟団体が当局に提出した要望書の内容(サークル名は非公開)

神戸大学学務部学生支援課 御中

2020年8月31日

課外活動の再開に関する要望書


                                                                                                          文化総部常任委員会
                        (以下、14の賛同団体は略)


私たち文化総部加盟団体は、以下のことを要望いたします。
 
○学生会館、部室、教室等の学内施設の利用を認めるよう求めます。
○学外施設の利用料の補償を求めます。
○感染対策にふまえた対面での新歓の場を設けることを求めます。

 
    長期にわたり課外活動が制限されるなか、私たち文化総部加盟団体は苦しい状況に追いこまれています。活動に必要な楽器・機材が学生会館や部室等の学内施設に保管されている多くの団体が、今春以降まったく活動できていません。未だ活動再開の目処すらたてられない団体もあります。やむなく学外施設を利用している団体も、たび重なる利用料が重い負担となり、すでに部の運営に甚大な影響が出ています。対面での新歓ができないことにより、新入生の入部が激減もしくはゼ­ロとなり、部として存続できるのか危惧する声すらあがっています。
    このような現状にもかかわらず、8月7日付で大学から発表された「学内運動施設における課外活動の一部実施について」では、体育館や武道場などの屋内も含めた学内運動施設の利用を認める他方、それ以外の学内施設の利用は認められませんでした。大学側によるこの決定は、私たちとしては到底納得できるものではありません。体育会系団体の学内での活動を認める他方で、文化系団体の学内での活動を認めないままにする合理的な理由はなく、明らかに不公平ではないかと感じざるをえません。
    私たち文化総部加盟団体も、体育会の団体と同様に、多くの団体が秋以降に演奏会や公演など大事な大会を予定しています。上回生にとってはこれまで自分たちが頑張ってきた活動の集大成の場として、とても大切な機会です。しかし、文化系団体の学内での活動が規制されている今の状態が続くならば、活動が再開できず、演奏会などを中止せざるをえなくなってしまいます。このままでは、これまで努力してきた成果を発表する機会もないまま、悔しい気持ちを抱えながら引退しなければならない学生が続出しかねません。それだけではありません。対面での六甲祭が中止となり、貴重な発表の場を失った私たちは、せめて普段の活動を充実させられないかと切実な想いを抱いています。このようなことさえもが、学内での活動が規制されている今のままでは、できなくなっているのが現状です。このまま今年中に活動が再開できなければ、後輩への活動の引き継ぎさえままならなくなる部もあるほどです。
    せっかく新入生が入部してくれたにもかかわらず、未だに一度も新入生と一緒に活動できていない団体もあります。この状況が続くならば、活動に惹かれて入部した新入生が、結局何も活動できないことによって活動意欲を喪失してしまいかねません。新入生同士が仲良くなるためにも、サークル活動は貴重な場だと思いますが、現状ではそのような場も失われてしまっています。私たちは大変強い危機感を抱いています。
    私たちが加盟する文化総部は、神戸大学において多種多様な文化・芸術活動を創造してきました。こうした「神大文化の向上と他大学、地域との文化交流をはかる」(文化総部規約第2条)という理念にもとづく私たちの活動が、神戸大学の魅力の一つにもなっていると、私たちは自負しています。これらが衰退してしまうことは、大学にとってもマイナスなのではないかと私たちは考えます。
    私たちとしましても、感染対策を徹底したうえで活動を再開するのは大前提です。外部の資料を参考にして、独自の感染対策のガイドラインを作成している団体もあります。にもかかわらず、運動施設とその他の学内施設の利用との間に差が設けられているのは、納得がいきません。ぜひ再考していただけるよう要望いたします。
    また、対面での新歓についても、感染対策にふまえたうえで実施することは可能だと考えます(大阪大学では、新入生を対象とした対面でのサークル説明会を7月11、12日の両日に開催しています)。私たちの団体の中には、活動の性格上、新入生に一度体験してもらわなければ活動の魅力が伝わらず、新入部員を獲得することに苦労している団体が多くあります。私たちにとって、対面での新歓ができるかどうかは、部の存続にかかわる死活問題です。学部によっては対面での授業をほぼ全面的に実施するなど、対面授業の再開の流れにあるなか、対面での新歓を禁止する合理的な理由はないと考えます。
 
   以上です。ご検討よろしくお願いいたします。­­


キャンパス封鎖から4か月あまり

文化総部加盟サークル   苦境続く

                                                                               2020年8月22日

    同志社大学や立命館大学などでは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で禁止していたキャンパスでの対面授業を一部再開させる動きもみられる。神戸大学では、実験などを除き原則オンラインの授業となっており、学内での課外活動については、全面禁止の状態が長らく続いている。課外活動がほとんどできないことによってどのサークルも支障をきたしている。苦悩する文化総部(略称「文総」)加盟のサークルの現状をお伝えしたい。

学生会館の利用禁止

    「うちは人数も多いので、学生会館が使えないと困る」
    こう語ったのは、音楽系団体の責任者を務める男子学生。これまでは学生会館を利用して練習をしていたが、学生会館が使えない今、「家で楽器を演奏するわけにもいかず、全体練習ができない」状態だという。また、現在認められている学外施設の利用も、施設利用料の負担が重くのしかかる。男子学生は、「(施設利用料が)一部屋何千円もかかるので大変」と苦労を語った。
    学生会館が使えないと困るというサークルは多い。学生会館の利用が認められない状況によって文総加盟サークルが窮地に追いやられていることは間違いない。

新入生どうしの交流なく

    新入生どうしの交流ができないことも“悩みの種”になっているようだ。ある文化系の団体は、「新入生は入ってくれたが、直接会うことができないので、意欲が継続してくれるか心配」と不安を打ち明けた。今年はオンラインでしか活動できないがゆえに、新入生どうしが新歓企画やサークル活動を通じて親睦を深めることができない。大学での交流を求めてサークルに入った一回生は、それにもかかわらず、同じサークルの友達ができず孤立が深まっている。これでは、モチベーションを保つのは難しいだろう。「新入生が対面で交流とかをできるようにしてほしい」(文化系団体)という声があがるのは当然といえる。
    また、オンライン新歓で苦労するサークルも見受けられ、新入生の入部が「去年は20人で、今年は0人」(音楽系団体)というサークルもあった。

運動施設の一部再開

    神戸大学当局は、当局が許可をだした団体が学内運動施設の一部を利用する(9月1日~30日)ことを認める通知(8月7日付)を発表した。運動施設の利用が認められる他方で、文化団体の活動場所である学生会館や教室の利用については、禁止されたままである。この通知にたいして文総加盟団体からは、「不公平感がある」「運動部だけというのはショック」という声があがっている。文総加盟の団体にとっては厳しい決定となった。

    どのサークルも課外活動がほとんどできないことによって苦境にたたされている。この長く暗いトンネルを一刻も早く通り抜けたいと皆が思っているだろう。再びキャンパスに文化創造の活気が戻ってくることを願っている。